日本人の平均寿命は男性79.59歳、女性86.44歳まで延び、「人生90年」の時代へと向かいつつある。だが、この「長命社会」を、喜ばしい「長寿社会」と呼べるだろうか。
一人暮らしで誰とも付き合いのない高齢者が増えている。亡くなっても気づいてもらえない「孤独死」はどこでも起こりうる。
昨夏、東京都内の男性最高齢111歳とされていた人が、実は30年以上も前に死亡していたことが発覚した。家族はそれを隠し、男性の年金を受け取り続けていた。
これをきっかけに全国で続々と「所在不明高齢者」がいることが判明した。お年寄りの姿を見かけなくなっても、近所は関わりを避け、行政も立ち入ろうとしなかった結果である。
お金があるのに万引きする高齢者も増加中だ。警視庁で取り調べた高齢万引き犯の53%が「生きがいがない」と話し、40%が「相談できる人がいない」と答えた。
家族のような食卓風景
「高齢者犯罪の背景に孤独感がある」と警視庁は分析する。社会との接点を、万引きで捕まることに求めているとすれば悲しい。
薄れつつある地縁血縁の結びつきを何とか回復しないと、現在の超高齢社会が直面する問題は、さらに深刻化していくだろう。
北海道釧路市の住宅街に、かつて病院だった建物を活用した「地域食堂」がある。
運営しているのは、「安心して老いられる地域づくり」に取り組むNPO(非営利組織)法人「わたぼうしの家」。活動の一環として、週に1回、300円ほどで昼食とコーヒーを出す店を開く。
きっかけは10年前、一人暮らしのお年寄りへの聞き取り調査で、「家で食事を作っても、寂しくて食べないことがある」という答えが6割を占めたことだった。
そうした独居高齢者のために、と店を始めたが、意外にも幅広い世代が集う場所となった。
お年寄りだけでなく、地域とのつながりを求める転勤族の親子など数十人がテーブルを囲み、ボランティアが腕をふるう料理に舌鼓を打つ。
先週はお客だった人が、今週はボランティアとして調理場に立っている。若い母親に連れられてきた乳幼児が、お年寄りをおじいちゃん、おばあちゃんと慕う。家族で食卓を囲む光景そのものだ。
団塊世代に期待する
「わたぼうしの家」は昨年の読売福祉文化賞を受賞した。「新しい縁」の可能性をうかがわせる動きだろう。これに似た活動は全国各地で芽吹きつつある。
新たな縁づくりの旗振り役として、大きく期待されるのが、現在60代前半の団塊世代(1947~49年生まれ)だ。「わたぼうしの家」の会長も、62歳の元高校教諭である。
統計の上で「高齢者」に分類される65歳の一歩手前にいる大集団だ。体験や人脈を豊富に持ち、まだまだ健康で気力もある。
常に新たなライフスタイルを切り拓いてきた世代に、社会を動かすため、もうひと働きしてもらいたい。
孤立しているのは高齢者だけではない。相談相手のいない若い親たちが子育てに悩んでいる。就職難にあえぐ若者もいる。
こうした人たちに対して、家族に代わって“お節介”を焼くことができるような、新しい地域関係を模索し、創り上げていかなければならない。
そこにも、お年寄りと呼ばれるにはまだ早い団塊世代の経験と力が役立つのではないか。退職後の充実した生き方を見つけ出すことにもつながるだろう。
行政基盤の強化を
政治や行政は、団塊世代が元気で活躍している間に社会保障の仕組みや制度を整え、強化しなくてはならない。
消費税率を引き上げ、社会保障税とすることで、年金や介護、高齢者医療制度の財源を充実させておく必要がある。
地域社会が、高齢者など孤立しがちな人の個人情報をある程度は共有することも重要だ。社会保障番号を整備して、医療や介護など福祉制度を相互連携させることが不可欠だろう。
政治は超高齢社会の財源不安を解消し、行政がしっかりと住民の状況を把握する。
そうした基盤があってこそ、新たな地域縁づくりも進んでいくに違いない。
2011年1月9日『読売新聞』社説
単 語
注 釈
①孤独死(こどくし)
主要指独居老人无人照顾,在自己的住处因突发疾病而死亡,尤其指发病后难以求救而死亡的场合。
②読売福祉文化賞(よみうりふくしぶんかしょう)
为了奖励致力于福利事业的个人和团体,读卖新闻社于2003年设立的奖。
思考問題
1.「超高齢社会が直面する問題」をまとめてみなさい。
2.「超高齢社会が直面する問題」の生ずる原因は何か。
3.「超高齢社会が直面する問題」をどう解決すべきなのか。
免责声明:以上内容源自网络,版权归原作者所有,如有侵犯您的原创版权请告知,我们将尽快删除相关内容。