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中日同形語と漢字語の読み方

时间:2023-04-02 理论教育 版权反馈
【摘要】:第二章 「中日同形語」の定義1. はじめに中日両国で日本語学習者と中国語学習者が急増するにつれて、中日同形語の研究が以前にもましてもっと広い角度から盛んに行われるようになり、おびただしい研究成果が集積されてきた。日本語と中国語で漢字の構造が同一である単語のことを「日中同形語」と呼ぶ。中国語では「中日同形词」と呼ばれている。

第二章 「中日同形語」の定義

1. はじめに

中日両国で日本語学習者と中国語学習者が急増するにつれて、中日同形語(1)の研究が以前にもましてもっと広い角度から盛んに行われるようになり、おびただしい研究成果が集積されてきた。最初の語義の異同の比較から、用法の違い、品詞性の違い、文体の違い、褒貶色彩の違い、語感の強弱の違い、同形語の形成原因、そして語構成へと研究がどんどん深められている。また、関係の辞書(2)が何冊も出版され、収録の語彙数も増えている。しかし、数多くの研究者(3)が「中日同形語」を簡単に定義したり、定義しなかったりしている。そして、論文は「同形異義語」「同形類義語」に対する研究がほとんどである。潘钧(1995)(4)が早くも指摘したように、“至今未有一个为诸家所公认的、明确的关于同形词的定义”(笔者译:今までにみんなに認められている、同形語に関する明確な定義が一つもない)。ここの同形語はもちろん中日両言語の間に存在している同形語を指している。潘钧(1995)の指摘からすでに16年間も過ぎ、同形語に関する研究の量がどんどん増え、範囲も広がっているが、定義の問題はまだ解決されていない。「中日同形語」に対する研究がどんどん深められるにつれて、その定義はもはや避けて通れない問題になった。そこで、本稿はいくつかの同形語に関する表現を考察した上で、「中日同形語」の定義を下してみたい。

2. 先行研究

本稿では主に大河内康憲、宮島達夫、吴侃、竹田治美の同形語に関する表現を取り上げたい。

大河内康憲(1992)5)の「同形語」に関する論述は次の五点にまとめられる。

①日·中で字面が同じ単語である。

②借用関係を問わず、双方同じ漢字(簡体字は問わない)で表記されるもの。

③一字で音訓いずれにも使われるものは含まない。

④二字(ときには三字以上)の字音語で、表記のみならず語構成が問題になるものである。

⑤語構成における共通性が同形語といわれる所以であり、したがって借用関係が問題になるところである。

この論述は非常に分かりにくい。次の疑問点がある。

(1)借用関係の有無について、②と⑤が矛盾している。

(2)音読以外の漢字語が同形語ではないか。

(3)同形語の語構成が同じでなければならないのか。

大河内康憲の説に対して、潘钧(1995)(6)が基本的に肯定しながら、「取(り)締(ま)り」や「手続(き)」のような和語も同形語であること、借用、同源の関係がなく、偶然に形成した「手紙」や「洋行」などの同形語もあることを指摘した。しかし、その指摘は潘钧(1995)の唱えた「同形語を認定する三つの必須条件」とは相矛盾しているし、日本語では「送り仮名」が無視できない和語を構成する要素である。

潘钧(1995)の唱えた「三つの必須条件」は次のとおりである。

①表記が同じである漢字(7)(簡体字と繁体字の差異、送り仮名、形容動詞の語尾などの非漢字要素を無視する)。

②共同の出自や歴史的なつながりを持っている言葉。

③現在中日両国の言語の中で共に使われている言葉。その中で、二字語が一番多い、ほかに三字語、四字語などがある。

大河内康憲(1992)の定義はしばしば部分的に引用されたり、表現を変えられたりして多くの研究者(8)に影響を与えてきた。

宮島達夫(1994)(9)は次のように、漢語だけでなく、訓読みの和語も「日中同形語」であると唱えている。

「日中同形語」というとき,ひろい意味では,日本で訓よみされる和語もふくまれるが,ここでは対象を漢語にかぎる。

吴侃(1995)(10)は「同形語」について次のように述べている。

同形词既有汉语词,也有“立场、手续、手纸”等和语词。除汉语词外,因双方都使用汉字,某些和语词也可以看作同形词。如“住む”,只要它用汉字书写,就可以看作与中文“住”相同。  (p191)日本語訳:同形語は漢語もあれば、「立場、手続、手紙」のような和語もある。漢語のほかに、双方がともに漢字を使っているので、一部の和語も同形語とみなすことができる。例えば、「住む」、漢字表記さえ使えば、中国語の「住」と同じであるとみなすことができる。(笔者译)

この定義は非常に曖昧で、日本語の送り仮名が同形語の一部として扱うのは合理的ではない。それに、日本語では漢字の意味が送り仮名によって大きく変わるので、学習者に混乱をもたらすおそれがある。また送り仮名がついている言葉を同形語として扱ったら、同形語の数量がもっと膨大な数に上ってしまう。

竹田治美(11)(2005)は「漢字の構造」を使って、定義している。日本語と中国語で漢字の構造が同一である単語のことを「日中同形語」と呼ぶ。中国語では「中日同形词」と呼ばれている。

竹田治美(2005)はまた「漢字の構造」を使って、曽根博隆(1988)の研究を次のように要約した。

①漢字の構造と意味が同様であるもの。いわゆる「同形同義語」

②漢字の構造は同様であるが、全く意味がまったく異なるもの。いわゆる「同形異義語」

③漢字の構造が同様であり、一部が共通するもの。いわゆる「同形類義語」

曽根博隆(1988)は「日本語と中国語において同じ漢字によって表記される単語」という表現を使っていたが、「漢字の構造」を使っていないので、おそらく「漢字の構造」は竹田治美の造語であろう。しかし、「漢字の構造」という言葉が一つの漢字に使えるが、二つ以上の漢字で構成される漢字語にふさわしくない。また漢字の構成要素としては、形だけでなく、音と義も考えられるので、曽根博隆(1988)の原文を読まなければ、とても「漢字の表記」とは理解できないだろう。

3. 同形語の分類

日本語学界で「同形語」が使われる場合、普通日本語と中国語の間に存在している同じ形の言葉を指しているが、中国の中国語学界でも「同形語」(12)の研究が盛んになされている。つまり中国語の中に「同形語」が存在しているのである。ここで、ある言語の中に存在している同じ形の言葉を「言語内同形語」と、二つの言語の間に存在している同じ形の言葉を「言語間同形語(13)」と名づける。

4. 言語内同形語

言語内同形語とはある言語の内部に存在している同じ形の言葉である。ここでは、中日同形語とかかわりのある中国語と日本語の言語内同形語にしぼって、考察していきたい。

4.1 中国語同形語

卢英顺(2007)(14)は中国語の同形語について次のように述べている。

所谓“同形词”是指在书写形式上完全相同的一组词,如“打”(量词,一打信封)和“打”(动词)。就单音节词而言,当然指书写形式相同;就双音节词而言,不仅是每个音节书写形式相同,而且还要每个音节的书写顺序也相同,如“地道”(地道战)和“地道”(他的上海话说得很地道)。而“人情—情人”,“网球—球网”,“文盲—盲文”等等就不能算做同形词。同形词根据其读音形式是否相同,可以分为同音同形词和异音同形词。

日本語訳:いわゆる「同形語」は書き方が全く同じ一組の言葉を指す。例えば、「打」(助数詞、封筒などを数えるときに使う)と「打つ」(動詞)。単音節の言葉は(一文字の漢語)書き方が同じであればいいが、双音節の言葉は(二字漢語)は各音節の書き方だけでなく、音節の順(字順)も同じでなければならない。例えば「地道(地下道)」と「地道(本場らしい)」(彼の上海語は本場らしい)。「人情—情人(愛人)」、「网球(テニス)—ネット(球网)」、「文盲—盲文(点字)」のように字順が違う言葉は同形語とは言えない。同形語は発音によって、同音同形語と異音同形語に分けられる。

同音同形語として次の例が挙げられる。

花 出品 吃水 安心 人家 心灵 生气 送气 多事 土方

满月 转机 说法

上述の言葉は中国語で発音が同じであるが、品詞性や語構成によって、意味が違っているのである。中国の辞書では違う言葉として扱われている。中国語の“花”が、具体的な「花」を指す場合は名詞で、「(時間が)かかる·(時間を)かける」を指す場合は動詞で、両者は語源的にも違う。“打”はもともと動詞だったが、助数詞としての意味は英語からの訳語である。“出品”“吃水”“人家”“心灵”“生气”“送气”“多事”“土方”“满月”“转机”“说法”は二種類の語構成を持っているので、意味が違うのである。

異音同形語として次の例が挙げられる。

长 折 同行 大人 精神 正当 大意 东西 地方 转向

中国語の漢字に多音字が多い。発音が全く違ったり、四声の違いだったり、軽声の違いだったりしているので、非常に複雑である。発音の違う異音同形語でも語構成が違う可能性がある。

4.2 日本語同形語

日本語の中の同形語はまだあまり研究されていない。日本語は表記文字の複雑性によって、同形語の種類が同じ言語内では一番多いのではないかと思われる。筆者は漢字·平仮名·カタカナ·アルファベット·連語によって6種類の同形語に分類してみた。

ただし、「多音語」と「多義語」は同形語から除外しなければならない。二つ以上の読み方があり、例えば、「大地震(だいじしん·おおじしん)」「幾人(いくたり·いくにん)」、「幾年(いくとせ·いくねん)」、「幾度(いくど·いくたび)」などのように、どちらで読んでも、意味用法に影響がない言葉は多音語と呼ぶことにする。注意しなければならないのは中国語の多音語の意味がみんな異なることである。いくつかの意味を持ち、しかも意味と意味の間に何かのつながりを持っている言葉を多義語と呼ぶことにする。

日本語の辞書では語構成が違っても同じ言葉として扱われている。例えば、「被害」という言葉は「損害や危害を受けること。また、受けた損害や危害。」(『大辞泉』)と解釈されている。二つの意味は明らかに語構成による違いなので、別々の言葉として扱ったほうが合理的であろう。しかし、もしそのように別々に言葉の項目を立てたら、もとより分厚い日本語の辞書はさらに膨らむことになるだろう。

①漢字の同形語

同じ漢字でも日本語で2種類以上の読み方を持ち、意味も違っている言葉が多くある。次の例が挙げられる。

間(あいだ·ま)

床(とこ·ゆか)

大家(たいか·おおや)

大手(おおて·おおで)

過言(かげん·かごん)

寒気(かんき·さむけ)

悪心(あくしん·おしん)

大勢(おおぜい·たいせい)

成敗(せいはい·せいばい)

来日(らいじつ·らいにち)

頭数(あたまかず·とうすう)

町中(まちなか·まちじゅう)

心中(しんじゅう·しんちゅう)

下手(しもて·したて·へた)

人気(じんき·にんき·ひとけ)

上手(かみて·うわて·じょうず)

一時(いちじ·いっとき·ひととき)

男女(おとこおんな·だんじょ·なんにょ)

日中(にっちゅう·にっちゅう·ひなか)

上下(うえした·かみしも·じょうか·じょうげ)

②「漢字+平仮名」の同形語

空く(あく·すく)

開ける(あける·ひらける)

歪む(いがむ·ひずむ·ゆがむ)

怒る(いかる·おこる)

抱く(いだく·だく)

埋める(うめる·うずめる)

埋まる(うまる·うずまる)

脅かす(おどかす·おびやかす)

被る(かぶる·こうむる)

潜る(くぐる·もぐる)

汚れる(けがれる·よごれる)

堪える(こたえる·こらえる·たえる)

細やか(こまやか·ささやか·ほそやか)

盛る(さかる·もる)

注ぐ(そそぐ·つぐ)

弛む(たゆむ·ゆるむ)

突く(つく·つつく)

解く(とく·ほどく)

止める(とめる·やめる·とどめる)

上のような言葉は同じ表記でありながら、違う読み方をしている。それぞれの意味用法は全く違ったり、部分的に違ったりしているので、日本語学習者にとっては非常に習得しにくい。ただし、同じ漢字でありながら、送り仮名によって、読み方が違う言葉の数も少なくない。次の言葉は非常に紛らわしいが、同形語として扱えない。

上(あ)がる—上(のぼ)る

歩(ある)く—歩(あゆ)む

映(うつ)る—映(は)える

老(お)いる—老(ふ)ける

訪(おとず)れる—訪(たず)ねる

囲(かこ)む—囲(かこ)う

着(き)る—着(つ)く

触(さわ)る—触(ふ)れる

頼(たの)む—頼(たよ)る

捕(つか)まえる—捕(と)らえる

浸(つ)かる—浸(ひた)る

鳴(な)く—鳴(な)る

放(はな)す—放(はな)つ

惚(ぼ)ける—惚(ほ)れる

見下(みお)ろす—見下(みくだ)す

破(やぶ)く—破(やぶ)る

弱(よわ)まる—弱(よわ)る

割(わ)る—割(さ)く

凍(こお)る—凍(こご)える—凍(い)てる

③平仮名の同形語

漢字の表記が使われない平仮名だけの同形語が見つからなかった。

④カタカナの同形語

例:コート バット ベース ホーム バス パス

⑤アルファベットの同形語

例:DV

⑥連語

例:その後(そのご·そのあと·そののち)

5. 言語間同形語

世界には、漢字を使う国が多く存在している。それらの国を総称して、漢字文化圏と呼ぶ。同じ漢字を使いながら、国や地域によって、言語体系が違う。このように違う言語の間に存在している同じ形の漢字語は「言語間同形語」に所属すると思われる。中日同形語のほかに日韓同形語、中韓同形語なども言語間同形語の範疇に属する。

中日同形語の定義を下す前に、中日同形語の定義と密接な関係のある漢字の書き方、読み方、借用関係、固有名詞、熟語と連語、文字数、範囲などについて詳しく考察していきたい。

5.1 中日同形語と漢字の書き方

言語内同形語は全く形が同じでなければならないが、言語間同形語の「同形」は言語内同形語ほど絶対的なものではなく、柔軟に「同形」という概念を処理しなければならない。なぜならば、同じ漢字でありながあら、各国の言語改革などによって、漢字の書き方に変化が現れたのである。そのため今使われている漢字は全く同じ形のものもあれば、多かれ少なかれ形が変わったり、筆順が違ったりしている漢字も少なくない。また字体の違いもある。現在中国語では一般的に宋体が使われているのに対して、日本語では明朝体が使われている。しかし、それらの言葉が同形語であることは同形語の研究者たちに認められている。つまり、漢字の形や筆順(15)や字体に多少の違いがあっても、漢字のもと(16)が同じである言葉は中日同形語であるとみなされているわけである。

歴史的な原因などによって、漢字の形は中国では非常に複雑になった。中国大陸で使われている簡体字(もちろん、一部分の中国古典文献を研究する人の間では繁体字も使われている)と台湾·香港·マカオなどで使われている繁体字が併存している。中国大陸、台湾、香港、マカオがそれぞれ日本とのかかわり方が違ってきたので、中日同形語の形と意味用法も異なっているのである。本研究は大陸で使われている漢字(簡体字が多く含まれている)を中心に展開されている。

5.2 中日同形語と漢字語(17)の読み方

従来の中日同形語の定義は「漢語」(18)を使っているが、「漢語」は日本語では音読みの言葉だけを指しているので、中日同形語の範囲が大幅に狭められてしまった。現存の同形語の辞書(19)には音読み以外の言葉も大量に収録されているので、中日同形語は音読の漢語に限らず、訓読み、湯桶読み、重箱読み、熟字訓、当て字などの言葉も中日同形語に属するので、それらを総称して、「漢字語」と呼ぶ。また、日本語教育の現場では、音読み以外の漢字語も、教える側にとっても学ぶ側にとっても問題になっている。

もちろん、日本語の中の漢字語は音読みであっても中国の言葉の発音と違う。日本語の漢字語の読み方は音と訓の組み合わせがやや複雑で、覚えにくいが、発音自体が中国語ほど難しくない。

次のような訓読み、湯桶読み、重箱読み、熟字訓、当て字などの言葉が中日同形語であると認めてられている。

①訓読みの言葉

間(あいだ·ま) 床(とこ·ゆか)  嫁(よめ)

湯(ゆ)  水(みず)  鬼(おに)

命(いのち)  牙(きば)  鎖(くさり)

嘴(くちばし)  角(つの·かど)  車(くるま)

腕(うで)  城(しろ)  娘(むすめ)

餅(もち)  門(かど)  床板(ゆかいた)

革靴(かわぐつ) 手紙(てがみ)  出口(でぐち)

新手(あらて)  上手(かみて·うわて)赤身(あかみ)

秋風(あきかぜ) 頭数(あたまかず)  石頭(いしあたま)

大男(おおおとこ)大女(おおおんな)  大風(おおかぜ)

大方(おおかた) 大口(おおぐち)  大手(おおて·おおで)

声音(こわね)  顔色(かおいろ)  心得(こころえ)

空手(からて)  死水(しにみず)  手足(てあし)

下手(しもて·したて·へた)  外表(そとおもて)

手心(てごころ) 小銭(こぜに)  白酒(しろざけ)

人手(ひとで)  二手(ふたて)  平手(ひらて)

焼餅(やきもち) 山里(やまざと)  横幅(よこはば)

②湯桶読みの言葉

大勢(おおぜい) 大家(おおや)  片面(かためん)

潮気(しおけ)

③重箱読みの言葉

後手(ごて)  地頭(じあたま)  地板(じいた)

地道(じみち)  順手(じゅんて)  土方(どかた)

④熟字訓

祝詞(のりと)  土産(みやげ)  留守(るす)

⑤当て字

得体(えたい)  得手(えて)  女将(おかみ)

切手(きって)  出来(でき)  真面目(まじめ)

以上の例はみんな中日同形語として認められているので、その定義をするとき、「漢字語」を使うほうが適切であると思われる。

5.3 中日同形語と送り仮名

中日同形語の研究対象は漢字語である。送り仮名のついている言葉はもう漢字語ではなく、「漢字+仮名」の混種語になるので、中日同形語として扱うのは不合理である。ただし、日本語の中の音読み以外の言葉を表記する場合、送り仮名がついてもつかなくてもいい言葉は少なくない。送り仮名がつかない場合、中日同形語と認めてもいいと思われる。例えば、「打ち消し」「打消し」「打消す」と“打消”は中日同形語にはならない。「打消」と書かなければ、同形語とは認められない。

5.4 中日同形語と文字数

これまで二字の同形語に研究が集中されているが、四字の四字熟語の比較研究も部分的になされている。三字の漢字語は中国語に少ない原因か、三字の中日同形語の数があまり多くない。五字以上の中日同形語は収集が難しいので、あまり研究されていないのが現状である。

残っているのは一字の漢字語である。大河内康憲は「同形語といっても「山、人、大、少」など一字で音訓いずれにも使われるものは含まない。」と主張していたせいか、一字の漢字語を同形語として研究した人がほとんどいなかった。

しかし、一字の中日同形語(20)が存在しないわけではない。日本語での読み方が音読みか訓読みかにかかわりなく、中国語と日本語で両方とも独立して使われる一文字の漢字語も中日同形語であると認めるべきである。日本の新しい常用漢字表に照らして、中日とも独立して使える一字の中日同形語を統計し、意味用法などを比較する必要がある。

したがって、中日同形語に字数の制限を設けるべきではない。独立できる単語や連語であれば、文字数の多寡にかかわらず、中日同形語であることは認めるべきである。

5.5 中日同形語と語構成

同形語の語構成が同じでなければならないと大河内康憲が主張しているが、おそらく借用語との関係の角度から言っているのだろう。しかし、いわゆる借用語でも、違う言語環境に入ったら、語構成などが変わってしまうのも当然である。

筆者は、中日同形語の語構成が必ずしも同じであるとは限らないと考える。中日同形語の語構成を分析した結果、むしろ語構成の違いが語義の違いをもたらす大きな要因であることがわかった。中日同形語の語構成が中日両国の異なる言語環境でそれぞれ発展してきたので、語構成が違うのは当たり前である。中日同形語の語構成について第四章で詳述する。

5.6 中日同形語と借用語

借用語と中日同形語の関係について、筆者は「借用語は中日同形語の一部に過ぎない」と考えている。いわゆる借用語は、いったん異なる言語環境に入ったら、その意味用法が新しい言語環境に応じて変わってしまう。借用関係を研究するのはもちろん大切であるが、ここでは借用関係を問わず同じ形をしている漢字語をすべて中日同形語と呼ぶ。

また、借用関係があっても、日本語では音読みとは限らない。

中国語から日本語に入った音読みでない言葉として次の例が挙げられる。

紫陽花(あじさい) 雨具(あまぐ)  銀杏(いちょう)

田舎(いなか)  胞衣(えな)  白粉(おしろい)

大人(おとな)  啄木鳥(きつつき)

蟋蟀(きりぎりす·こおろぎ)  香醋(こうず)

禅寺(ぜんでら)  雑木(ぞうき)  七夕(たなばた)

梅雨(つゆ)  天窓(てんまど)  二十歳(はたち)

羽衣(はごろも)  雲雀(ひばり)  土産(みやげ)

日本語から中国語に入った音読みでない言葉として次の例が挙げられる。

後手(ごて) 立場(たちば)

出口(でぐち)  場合(ばあい)

そして、借用関係がなく、偶然に一致した漢字語も少なくない。次の例が挙げられる。

5.7 中日同形語と合成語·連語

中国語の漢字が日本語より相対的に独立性が強いし、漢字と漢字の接続関係が複雑なので、日本語では合成語であっても中国語では合成語の範囲を超えてしまい、連語であるものが少なくない。

たとえば、日本語の「切手」は『日中同形異義語辞典』に収録されているが、中国語に“切手”という合成語が存在していない。連語としても認められにくい。というのは、中国語では“切”と“手”の間に“了”か“到”が入らなければ、意味が通じないからである。

また「怪我」はほとんどの同形語の辞書に同形語として収録されているが、中国では一般の辞書にも収録されていない。なぜなら、“怪我”は合成語ではないからである。

5.8 中日同形語の範囲

その言葉は辞書に載っているか否かにかかわりなく、インターネットを含めて、現代の中日両国の日常生活やさまざまな分野で使われている同形漢字語はすべて中日同形語である。

ただし、次の漢字語は同形語として扱うのは適切ではない。

①演歌や俳句や和歌などで特別な読み方をする漢字語。

それらの漢字語は特別な訓読みを宛てられているので、一般的に通用しないから、中日同形語の範囲から除外すべきである。

例えば、「娘」は普通「むすめ」と読まれるが、演歌では「こ」と訓読みされる場合がある。「こ」と読む「娘」、「とき」と読む「青春」のような漢字語は同形語として扱ったら、日本語学習者に大きな混乱をもたらしかねない。

②固有名詞。

人の名前、地名、店や会社の名前などの固有名詞はそのまま翻訳することができる。そしてその数が多すぎる。中日同形語として研究してもほとんど意味がないので、中日同形語とみなすべきではない。

例えば、「朽木」は一般名詞として「きゅうぼく」と「くちき」の二通りの読み方があるが、そのほかに日本人の名字に「朽木」が使われている。中国人が「朽木」という名字を見たら、誰でも思わず笑いたくなるだろう。名字は一種の記号にすぎないので、別に特別な意味が込められていない可能性がある。

③字順が違う漢字語

中日同形語は字順が同じでなければならない。中日両言語の言語内と言語間に字順が違う言葉が多数存在している。字順が違うと、語構成が変わってしまい、その意味合いにも多少の変化をもたらす場合が多い。もちろん、類義か同義の漢字で構成された言葉は字順が逆でも意味に影響がない可能性もある。例えば、「紹介」と“介绍”、「運搬」と“搬运”、中国の古代では両方とも使われたが、今中日にそれぞれ一つしか残っていない。意味が同じでも、字順が違うので、中日同形語と認めるべきではない。

④違う漢字の言葉

日本語で常用漢字以外の漢字を書き換えたり、代用字を使ったりしている言葉が少なくない。それらの言葉に使われている漢字と元の漢字は中国語で別々に使い分けられているので、中日同形語と認めるべきではない。

次の例が挙げられる。以下「日本語—中国語」の順番で並べていく。

気分—气氛 模索—摸索 探検—探险(探險)

媒酌—媒妁 欠点—缺点 活発—活泼(活潑)

⑤元の漢字が違う漢字語

中国語では同じ漢字に簡略化され、日本語ではまだ使い分けられている漢字がある。例えば、「發」と「髮」が今全部「发」に簡略化されている。それによって、現代中国語に「散发(sàn fā)」と「散发(sàn fà)」という同形語が生まれたのである。しかし、日本語ではそれぞれ「散発」と「散髪」になっているので、日本語に対応して中国語の発音と意味を使い分けなければならない。したがって、「散发(sàn fā)」と「散髪」、「散发(sàn fà)」と「散発」を中日同形語として扱ってはいけない。正しい対応関係は次の通りである。

5.9 中日同形語の量

同形語の量に関する統計は荒屋勸(1983)、曽根博隆(1988)、橘純信(1994)などがあるが、それらはみなある辞書に絞って、統計されたデータであるので、あくまでも相対的な量である。辞書に収録されていない言葉も数えきれないほどある。例えば、「性」や「化」などの接尾辞が他の言葉と結合してできた派生語は膨大な数にのぼる。数量詞は複合語の一種で、数量自身に限りがないので、数量詞の量は当然数えきれない。したがって、中日同形語の絶対量は無数である。

6. おわりに

同形語は「言語内同形語」と「言語間同形語」に分けられる。中日同形語は中国語と日本語という二つの違う言語体系の間にある「言語間同形語」である。

中日同形語は音読みの「漢語」とは限らず、訓読み、湯桶読み、重箱読み、熟字訓、当て字などの言葉も中日同形語に属する可能性がある。また中日同形語は借用語とも限らず、偶然の一致で形成したものも少なくない。語構成から見ると、中日同形語の語構成は必ずしも同じであるとは限らない。そして、日本語で熟語であるが、中国語で連語である中日同形語も少なくない。

よって、筆者は、中日同形語を次のように定義する。

中日同形語とは、音訓の読み方·文字数·借用関係を問わず、中日両国の文字改革によりもたらされた字体の相違があっても、漢字のもとが同じである、中国人の立場から見る、中国語と日本語の間に存在している同形の漢字語である。

(1)「中日同形語」はほかに「日中同形語」、「日漢同形語」などの呼び方もある。

(2)同形語の語義の比較に関する辞書と書籍が数多く出ているが、次のものが挙げられる。

①汪大捷,张静容等.中日两用日汉双解同形异义日语汉字词典.1986.

②上野恵司,魯暁琨.日中同形異義語300.1993.

③黄力游,林翠芳.日汉同形异义词词典.2004.

④王永全,小玉新次郎.日中同形異義語辞典.2007.

(3)守屋宏則(1979)が次のように簡単に述べただけである。

御承知のように日本語と中国語は表記においてともに漢字を使用しているため,漢字表記による同形語が数多く見られる。

曽根博隆(1983)が「日本語と中国語において同じ漢字によって表記される単語」を「日中同形語」と呼んだ。

荒屋勸(1983)「日中同形語」で「旧字体」という言葉を使って、「同形語」を説明した。

日中の同形語に焦点を当てる場合、現行の形の上での細かい違いを 問題にしては研究の範囲が狭まり、的を得ないことになる。それで旧字体(いわゆる康煕字典体)で同じものは同形とみなし香坂純一氏編《中国語常用語辞典》(収録語彙約3800)中における同形語を、久松潜一·佐藤謙三編《角川国語辞典》に収録される範囲で選定したところ、約50%(約1900語)が同形語であった。

大塚秀明(1990)が「日中同形語について」で次のように述べているが、まとまった定義とは言えない。

こうして古代においては日本語が漢字を含めた中国文化を大量に受け入れたことにより、また近代においては中国語が日本で翻訳された漢字語を分野の偏りはあるにせよ、受け入れたことにより、今日の両国語には、意味や発音、更に当用漢字と簡体字という字形の違いはあるが、表記された文字は「同じ」という現象がみられる。本稿のいう同形語とはこれをいう。

そして、大塚秀明(1990)は注2)で英語と中国語には発音によって意味が違う同形語が存在していること、同形語の「定義が容易ではない」ことを指摘した。

王蜀豫(1997)は「日中両国語における同形語についての対照的研究―時間語彙における意味のずれを中心に―」で次のように述べている。

日中同形語の“同形”というのは,本稿の場合、広義的な同形であり、つまり、字形が相似していることを指す。

西川和男(1991)は「日中同形語」を「同形同義語」「異形同義語」「同形異義語」の三種類に分類したが、「日中同形語」の定義についての叙述がなかった。

上野恵司·魯暁琨(1993)の「同形語」の意味は明確ではない。

日中同形同義語とは、日本語と中国語の意味と用法が完全に同じである同形語を指す。

日中同形異義語とは、日本語と中国語とで、意味や用法が異なる同形語を指す。

橘純信(1994)も同形語の定義について触れなかった。

曹櫻(2003)は「日中同形語について」という論文でこれまでの同形語の研究をまとめたが、定義について一切触れなかい。

そのほか、劉凡夫(1988)、顧明耀(1991)、許羅莎(1997)、吉田雅子(2005)、加藤稔人(2005)なども同形語の定義に触れていない。

林翠芳·黄力游(2004)が「日中同形異義語における誤用に関する一考察」で「同形語」と「同形異義語」を間違えてしまった。

「日中同形語」とは言うまでもなく、日本語と中国語において、外形が同じで意味が違う漢語のことをいう。しかし、同形と言っても一部の漢字には表記上の違いが見られ、その差異は小さいものから大きいものがある。

(4)日语学习与研究,1995年03期,p19.

(5)同形語(中国語で“同形词”)とは何か。一言で言えば「政治、文化」のように日·中で字面が同じ単語であるが、この呼び方が中国で使われだしたのは比較的最近のことのように思う。勿論日本での呼び名は中国語をうけている。概念の定義は違うが、従来“日语借词”と呼ばれてきたものが主としてこれに相当する。これを拡大して、この“日语借词”と古来中国語にある語(同じようにいえば日本における漢語借詞)とを合わせ、いずれがいずれを借用したかを問わず、双方同じ漢字(簡体字は問わない)で表記されるものを同形語と呼ぶようになったと思われる。1970年代になって、中国の日本語研究者の間で一般化したもののように思う。したがって、同形語といっても「山、人、大、少」など一字で音訓いずれにも使われるものは含まない。「文化、経済、克服、普通」のような二字(ときには三字以上)の字音語で、表記のみならず語構成が問題になるものである。語構成における共通性が同形語といわれる所以であり、したがって借用関係が問題になるところである。

『日本語と中国語の対照研究論文集』pp.179—180.

(6)原文は次のとおりである。

以为应该将那些本属“和语”、但如果将送假名等因素抛开不计的话、其字

形(汉字)与汉语中的某个词构成同形对应关系的词也纳入同形词考察范

围。例如:取(り)締(ま)り、手続(き)等。并且,此类词在词源上往往具有

借用、同源的关系。

综上所述,笔者以为在判定同形词时应该依据以下三个必要条件:

①表记为相同的汉字(繁简字体差别及送假名、形容动词词尾等非汉字因

素均忽略不计);②具有共同的出处和历史上的关联;③现在中日两国语

言中都使用的词。其中以双音节词(二字音语)为最多,另有三音节四音节

词等。

“此外,需要补充的是,另有一类词,……即不具有借用、同源关系,但由于

偶然的因素导致中日双方二者词形相同,即所谓的“殊途同归”型的词。尽

管数量极有限,也应该列入同形词考察范围里。例如:手纸、洋行等”。

《日语学习与研究》1995年03期pp.19—20.

(7)中日漢字の字形の違いについて、第一章を参照されたい。

(8)次の研究者の定義が大河内康憲の影響を受けたと思われる。

①西谷まり(2004)は直接大河内康憲(1992)の表現を引用した。大河内康憲(1997)は「いずれがいずれを借用したかを問わず、双方同じ漢字で表記されるものを同形語とよぶ」と定義している。(p412)

②李薇(2003)は「現代日中同形異義語」について次のように述べたが、大河内康憲(1992)の影響を受けている。

現代日中同形異義語とは現代日中言語における同じ漢字表記でありながら、それぞれの持つ意味が異なる漢語のことを言う。(p79)

③朱京偉(2005)は「中日同形語」を使っているが、大河内康憲(1992)の影響を受けている。

中日同形語とは、日本語と中国語の両方で同じ字面を持つ漢語(漢字音読語)のことをいう。(p276)

④荘厳(2001)

「同形語」といえば、形が同じであることは一番の前提となっているはずであるが、実際、漢字の字形について、日本と中国ではそれぞれ幾たびの文字改革が行われてきた結果、両者が必ずしも一致しているとはかぎらないものが多い。ただ、それぞれ昔の字体に戻して考えれば、同じ語となるから、字体が同じであるというより、語構成が同じであることは同形語のいわれである。(p67)

(9)宮島達夫.語彙論研究.東京:むぎ書房,1994,p283.

(10)魯宝元(2005)の次の見方は吴侃(1995)とほとんど同じである。

日汉同形词指的是日语和汉语中使用汉字相同的词。有的是所用汉字完全相同的的词,有的是日语或汉语因汉字简化造成不同,但还原成原来的汉字字形相同,也视为同形词。有的是因为日语为了表示词性加了平假名的词尾,与汉语词汇造成不同,但单看汉字部分相同,从方便对日本学习者教授汉语的角度看,也可以视为同形词。(p70)

(11)竹田治美.「日中同形類義語」について.人間文化研究科学年報,20,2005,p335)

(12)“同形词”という言葉は中国で使われ始めたのである。许威汉(2000)は“同形词的探讨”について次のように指摘している。

早在新中国成立之前,王力就提出关于同形词的见解。1955年11月《汉语讲话》写了这样的话:“同形词,是指字音形皆同,惟字义各异而言。”

(13)「言語内同形語」と「言語間同形語」という言葉は筆者が2008年始めごろにすでに考え付いた。そして、2008年8月に関東学院大学での集中講義で紹介した。偶然に、「言語間同形語」という言葉は大井京·齋藤洋典(2009)にも使われた。

(14)卢英顺.现代汉语词汇学.2007,p179.

(15)《现代汉语通用字笔顺规范》と『新しい国語表記ハンドブック』によれば、次の漢字は形が全く同じように見えるが、筆順が微妙に違うのである。

九 万 方 右 出 田 由 有 机 后 など

(16)漢字の字形·字体などについて、《康煕字典》がよく「もとの漢字」の根拠とみなされているが、中国語で現在使われている宋体は《康煕字典》以前になるので、筆者は「漢字のもと」を使ったのである。

(17)「漢字語」という言葉は文化庁(1978)の『中国語と対応する日本語』にすでに使われている。

日本語の漢語と同じ漢字語が中国語に存在しないもの。(p113)

(18)『大辞林』では「漢語」が次のように説明してある。

日本語として使われる語のうち、漢字音でよまれる語。また、漢字の熟語。「火事(かじ)」「大根(だいこん)」のように、和語に当てた漢字を音読した和製の漢語もある。」

ちなみに、『大辞林』の挙げた「火事」と「大根」は昔中国語にあった言葉である。《汉语大词典》に“火事”が収録されている。

失火事故。

郭宪从南郊含酒,东北三噀,云:‘齐失火,以厌之。’后齐果上火事。

《太平御览》卷八六八引晋周斐《汝南先贤传》

君看刘郎最多智,昨者火事几焚巢。

宋 黄庭坚《戏简朱公武刘邦直田子平》诗之二

“大根”は中国語で木や蓮根などの「大きな根」を指しているが、日本語では意味が特化された。『荘子』にすでに用例が出ている。

俯而視其大根,則軸解而不可為棺槨

『荘子·内篇』

(19)汪大捷·张静容(1986)等が編纂した《中日两用日汉双解同形异义日语汉字词典》に1792組の中日同形語が収録されている。その中に次の言葉が入っている。

①訓読みの言葉

一口(ひとくち) 一山(ひとやま)

一切(ひときり)  一切(ひときれ)

一本(ひともと)  一打(ひとうち)

一色(ひといろ)  一角(ひとかど)

一息(ひといき)  一番(ひとつがい)

人中(ひとなか)  人心(ひとごころ)

人手(ひとで)  人形(ひとがた)

人事(ひとごと)  人数(ひとかず)

人様(ひとさま)  入会(いりあい)

大方(おおかた)  大手(おおて)

大手(おおで)  大字(おおあざ)

小字(こあざ)  大年(おおとし)

大家(おおや)  下書(したがき)

三毛(みけ)  土方(どかた)

下手(しもて·したて)  上火(うわび)

下火(したび)  口重(くちおも)

口軽(くちがる)  口裏(くちうら)

上辺(うわべ)  上手(かみて·うわて)

上前(うわまえ)  小米(こごめ)

上書(うわがき)  上薬(うわぐすり)

切口(きりくち)  切身(きりみ)

切紙(きりがみ)  天晴(あっぱれ)

日々(ひび)  心算(つもり)

中腰(ちゅうごし)  戸口(とぐち)

手下(てした)  手心(てごころ)

手形(てがた)  手足(てあし)

手紙(てがみ)  手短(てみじか)

手摺(てすり)  手籠(てかご)

月白(つきしろ)  玉石(たまいし)

古物(ふるもの)  出口(でぐち)

出水(でみず)  出来(でき)

出花(でばな)  目下(めした)

白水(しろみず)  外方(そっぽ)

白白(しらしら·しらじら) 白面(しらふ)

赤金(あかがね)  生物(なりもの·なまもの·いきもの)早早(はやばや)  早出(はやで)

年下(としした)  年頭(としがしら)

名子(なご)  気短(きみじか)

舌長(したなが)  血筋(ちすじ)

手軽(てがる)  床(とこ·ゆか)

床上(ゆかうえ·とこあげ) 里子(さとご)

身形(みなり)  青菜(あおな)

声色(こわいろ)  折紙(おりがみ)

床下(ゆかした)  床板(ゆかいた)

鉢(はち)  舅(しゅうと)

節目(ふしめ)  節節(ふしぶし)

腰板(こしいた)  襖(ふすま)

微温湯(ぬるまゆ)  続飯(そくい)

餅(もち)  鼻薬(はなぐすり)

頬紅(ほおべに)  顔色(かおいろ)

親子(おやこ)  姑(しゅうとめ)

板床(いたどこ)  空手(そらで·からて)前頭(まえがしら)  活魚(いけうお)

紅(べに·くれない)  後山(あとやま)

後手(うしろで)  風声(かざごえ)

骨節(ほねぶし)  高足(たかあし)

悄悄(しおしお)  娘(むすめ)

乾葉(ひば)  乾飯(ほしいい)

黒人(くろうと)  得手(えて)

細細(ほそぼそ·こまごま) 黒子(ほくろ·くろこ)猫背(ねこぜ)  猪頸(いくび)

壺(つぼ)  棚(たな)

朝夕(あさゆう)  歯形(はがた)

湯(ゆ)  遠見(とおみ)

新手(あらて)  焼飯(やきめし)

焼餅(やきもち)

②湯桶読みの言葉

天辺(てっぺん)  空穴(からけつ)

赤地(あかじ)  心地(ここち)

日日(ひにち)  白地(しらじ·しろじ)出銭(でせん)  生地(きじ)

下地(したじ)  手勢(てぜい)

大勢(おおぜい)  手本(てほん)

請人(うけにん)  湯銭(ゆせん)

新盆(あらぼん)  風気(かざけ)

親兄弟(おやきょうだい)  高調子(たかちょうし)

③重箱読みの言葉

両手(りょうて)  本身(ほんみ)

本場(ほんば)  半間(はんま)

半身(はんみ)  半道(はんみち)

地道(じみち)  後手(ごて)

面子(めんこ)  親身(しんみ)

不出来(ふでき)  不為(ふため)

茶壷(ちゃつぼ)  茶棚(ちゃだな)

茶飯(ちゃめし)

④熟字訓

今朝(けさ)  女将(おかみ)

一寸(ちょっと)  下手(へた)

虎子(おまる)  忠実(まめ)

所以(ゆえん)  襤褸(ぼろ)

留守(るす)  挿頭(かざし)

最早(もはや)  糸瓜(へちま)

熨斗(のし)  破落戸(ならずもの)

強請(ゆすり)

⑤送り仮名がついている言葉

切れ切れ(きれぎれ)  切り合い(きりあい)

折り合い(おりあい)  手押し(ておし)

半張り(はんばり)  手重い(ておもい)

手痛い(ていたい)  手軽い(てがるい)

被い(おおい)  船中り(ふなあたり)

不入り(ふいり)  人好き(ひとずき)

利落ち(りおち)  角落ち(かくおち)

花生け(はないけ)  棚上げ(たなあげ)

肩上げ(かたあげ)  取り回し(とりまわし)

相乗り(あいのり)  骨折り(ほねおり)

細作り(ほそづくり)  飽き(あき)

飽き飽き(あきあき)  茶の湯(ちゃのゆ)

虎の子(とらのこ)  身の上(みのうえ)

空き間(あきま)  有り気(ありげ)

当り年(あたりどし)  下し薬(くだしぐすり)

作り物(つくりもの)  当たり前(あたりまえ)

⑥中国語では地名である。

天津(あまつ)  天津(てんしん)

⑦中国語では熟語ではない。

必死(ひっし)  快作(かいさく)

快晴(かいせい)  要用(ようよう)

怪我(けが)  無傷(むきず)

新調(しんちょう)

上野恵司·魯暁琨(1993)が編纂した『日中同形異義語300』に次の訓読み語が収録されている。

戸口(とぐち)  皮靴(かわぐつ)

手紙(てがみ)  立場(たちば)

出口(でぐち)  大家(おおや)

命(いのち)  水(みず)

床(とこ·ゆか)  湯(ゆ)

嫁(よめ)  婆(ばば)

黄力游·林翠芳(2004)が編纂した『日汉同形异义词词典』に次の言葉が含まれている。

①訓読みの言葉

石頭(いしあたま)  上辺(うわべ)

大方(おおかた)  大家(おおや)

顔色(かおいろ)  門口(かどぐち)

金(かね)  靴(くつ)

組合(くみあい)  心得(こころえ)

逆子(さかご)  立場(たちば)

玉(たま)  手紙(てがみ)

出来(でき)  出口(でぐち)

手心(てごころ)  手袋(てぶくろ)

戸口(とぐち)  床(とこ)

中程(なかほど)  広場(ひろば)

節目(ふしめ)  孫子(まごこ)

祭(まつり)  水(みず)

娘(むすめ)  焼餅(やきもち)

湯(ゆ)  嫁(よめ)

②湯桶読みの言葉

大勢(おおぜい)  片面(かためん)

③重箱読みの言葉

地道(じみち)  心地(ここち)

親身(しんみ)

④熟字訓

女将(おかみ)  土産(みやげ)

所以(ゆえん)  留守(るす)

⑤中国語では熟語ではない言葉。

我慢(がまん)  要請(ようせい)

⑥漢字が違う言葉

気分(きぶん)—气氛

王永全·小玉新次郎(2007)が編纂した『日中同形異義語辞典』の収録語に、訓読み、湯桶読み、重箱読み、熟字訓、当て字などの言葉が115語にのぼる。

①訓読み語:

秋風(あきかぜ)  石頭(いしあたま)

立場(たちば)  出口(でぐち)

新手(あらて)

②湯桶読み語:

得体(えたい)  大勢(おおぜい)

片面(かためん)  黒字(くろじ)

③重箱読み語:

新手(しんて)  後手(ごて)

地道(じみち)  親身(しんみ)

④熟字訓語:

今朝(けさ)  女将(おかみ)

下手(へた)  土産(みやげ)

祝詞(のりと)

⑤当て字語:

怪我(けが)

(20)日本語に音読みの一文字漢字語が多く存在している。次の例が挙げら

れる。

愛 案 悪 胃 陰 円 艶 活 渇 急 虚 凶 狂 苦 険 行

巧 香 硬 差 雑 酸 斜 醜 柔 重 小 生 正 専 素 対

大 短 長 軟 難 熱 煩 晩 美 密 妙 満 乱 涼 累 霊

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