第三章 中日同形語の語義相違の要因
1. はじめに
中日同形語の語義の違いが言葉によって、差異の程度が違う。その違いの把握は日本語学習者だけでなく、同形語の研究者にとってもなかなか難しいものがある。そこで、どうしてそのような違いが生まれたのか、その要因を明確にすることによって、意味理解の一助になり、日本語学習者の効率的な習得にもつながると思われる。
2. 先行研究
2.1 同形語の形成の要因
荒屋勸(1983)は「同形語の成り立ち」で、「過去における交流の歴史をみ」たうえで、日本語の中の漢語と中国語との借用関係、とくに「五四前後に大量の日訳語が中国へ流れ込んだ」ことが「日本と中国に同形語が多い一つの理由である」と指摘した。
陳力衛(2001)は日中同形語の形成の原因を「日本が中国から借用した漢語」と「中国が日本から借用した漢語」の二つにまとめた。
なぜ、こんなにも共通の字形をもつ語彙が存在するだろう。最大の原因は、日本が中国語から漢字、漢語を大量に借用し、今日に至っているからである。「登山」「読書」「学問」などの漢語は、もともと中国から借用した外来語であるが、すっかり日本語の中に溶け込み、もはや外来語という印象がなくなっている。(p353)
2.2 同形語の語義相違の要因
大河内康憲(1992)は日本語で形容動詞になる同形語の意味用法の違いについて、次のように指摘している。
同じ漢字で表記されるといっても、それぞれに全く異なる言語の語彙のなかにあるわけで、違いがあって当然だが、多くの場合借用関係にある、出自を同じくする漢字語であり、本質的には同じ語が異なる文化、言語の中で異なる運用をされてきた結果の差異といえる。(p179)
潘钧(1995)(1)は同形語の語義相違の要因を、語義自身の変化によるものと語義以外の要因によるものとに分けて考察した。そして、語義自身の変化による違いをさらに「転用」、「借用時の特化」、「語義の派生と借用時期のずれ」、「社会生活の影響」の4種類に下位分類し、語義変化以外の要素による違いを、「語構成」、「中国古代語義の残存」、「日本語での読み方による違い」、「同音漢字の書き換え」、「語素の意味の違い」、「社会文化による違い」、「字訓による違い」の7種類に下位分類して、通時的要因と共時的要因を分析した。
潘钧(1995)の研究は大いに参考になったが、その分類は合理性に欠けている面もあり、説明の語例(2)も少ない。例えば、「語素の意味の違い」も語構成に属するので、語構成の類にまとめるべきである。語構成の例として「人選」を挙げているが、中国語にはこのような“偏正结构”(3)の例はほかに見ないので、特別な修飾構造とみなすべきである。ちなみに、“人选”は日本語から輸入した言葉で、中国語で「選ばれた人」を意味し、日本語の「適当な人をえらぶこと」(4)とは違っている。
また、一部の例は適切であるとは思われない。例えば、「悪女」という言葉は「あくじょ」以外の読み方が確認されていない。中国語では“恶女”は古い言葉で、現在は使われていない。
「市場」に関する説明も適切ではないところがある。《汉语大词典》に南唐時代の用例(5)が挙げられているので、日本人によって使われ始めたのではなく、日本人が「市場」に新しい意味を与えたのである。
3. 中日同形語の形成の要因
中日同形語が形成された最大の要因はお互いの借用関係にある。そのほかに、お互いに借用関係が確認できず、偶然の一致でそれぞれ独自の道を歩んだ言葉も少なくない。例えば、次の例が挙げられる。
赤身 石頭 得体 開学 怪人 街道 火気 架空 学芸
較差 隔壁 起毛 球技 球場 狂言 激怒 激動 公認
後年 公約 行楽 婚期 字画 失職 社長 出頭 出力
順路 唱歌 正気 商談 進水 前年 増幅 走路 帯出
耐性 手心 鉄腕 手袋 天狗 展翅 天井 導管 土方
独女 難聴 入手 熱湯 念書 念頭 納入抜糸 発案
発毛 平手 毛頭 孫子 麻薬 満床 満車 満室 薬種
床上 床下 要員 養家 立案 老公 運動員 感染力
研究生 老廃物 高校教師 女性問題(5)
偶然の一致で形成した同形語は語構成が違ったり日本語で訓読みだったりする言葉が少なくない。
また、日本語では発音の変化と当て字の使用によって、同形語を形成した例もある。例えば、「堪能」はもともと「深くその道に達して上手なこと」を表したが、「足リヌの音便足ンヌの転訛」による当て字として、「十分にみちること。あきたりること。また、気のすむようにすること。」という意味も表すようになった。「新米」はもともと「今年収穫した米。」だけを意味したが、「しんまえ(新前)」の発音に近いので、「新たにそのことに従って、まだ慣れない者。」の意味を表すのに転用された。しかし、「新しく収穫した米」の味と香りから、どうしてもその意味とは結びつかない。
4. 語義の相違をもたらす要因
筆者が中日同形語を比較研究した結果において、潘钧(1995)の挙げた要因の他に、環境の影響、略語、中国語での意味の変化が激しいこと、日本語で漢字に新しい意味が生まれたことなどがあるので、以下、詳しく考察していく。
4.1 環境の影響
環境の違いとその変化が言葉の意味用法に大きな影響を与える。環境は、自然環境と社会環境に分類できる。
自然環境は人々が生存するための基礎であるから、言葉の基本義の誕生に大きな影響を及ぼしてきた。言葉は必要によって生まれるが、自然環境が違うと、人々に意識されたイメージも違い、誕生した言葉の意味用法、言葉の数も違ってくる。また、その基本義から派生された抽象義、比喩的な意味も異なってくる。「落花流水」(6)はその代表的な例と言えよう。
日本の自然環境の特徴として挙げられるのは海に囲まれること、山が多いこと、平野が狭いことなどである。日本列島の四方が海なので、海や魚に関する言葉が非常に多い。例えば、「高潮」は日本で誕生し、中国に輸入された言葉である。日本語での意味が中国語より多いので、双方の違いがある。また「赤身(あかみ)」は日本語では普通「魚の赤い肉」を指しているが、中国語では「服を着ていない裸の状態になる」意味を表す。
王朝の交替、革命、外来文化の影響などは、全部社会環境の変化に属する。歴史上、王朝が変わるにつれて、言葉も微妙に変化する。20世紀のプロレタリア革命の影響は最も大きいと言える。伝統文化が否定され、大量の言葉が死語となり、多くの言葉の意味も大きく変えられた。さらに、今のインターネットは、言葉の革命を巻き起こしたと言えるほど言葉を変えている。言葉は、社会環境の変化とともに変わっているのである。中国語での“写”と、“写”を含む言葉の意味変化(7)は、その代表的な例と言えるだろう。
最近の中国での新語も注目されるべきである。中国の経済が発展するにつれて、従来の言葉が足りなくなったので、また日本語から輸入したり、新しく造語したり、従来の言葉に新しい意味を与えたりした言葉が中国語で増える一方である。《新华新词语词典》に収録された新語に中日同形語が132語(8)もある。
その中で、「安楽死」「不可抗力」「長考」「対決」「個展」「過労死」「空港」「量販店」「売場」「人気」「商戦」「痩身」「特売」「物流」「物語」「写真」「新鋭」「研修」「蒸発」「直撃」「著作権」などが、明らかに日本語から来た言葉である。しかし、「痩身」」と「直撃」は日本語と意味が変わった。「痩身」は日本語では「痩せた身体」の「V+N」の修飾構造の名詞で、中国語では「V+N」の動賓構造の動詞で、「体を痩せさせる」意味を表す。「直撃」は、もともと日本語では「爆弾などが直接にあたること。」「直接に攻撃すること。直接おそうこと。」を表しているが、中国語では“直接触及。特指电视等媒体以现场采访、拍摄的方式直接报道。(筆者訳:直接触れる。特にテレビなどのメディアが生中継で報道することを指す。)”という意味に変わった。
もともとあった言葉に新しい意味が生まれた例として、「第三者」「放電」「放水」「訪問」「火」「品位」「熱線」「透析」「消化」「演繹」(9)などが挙げられる。これらの新
しい意味は日本語の同形語の意味と大きく異なっている。
上述の語例の中で、“热线”について見てみよう。日本語の「赤外線」の意味もあったが、ほとんど使われない。今は次の3つの意味がある。①首脳間のホットライン。②大勢の人が利用する電話回線。③人気のある観光ルート。
国際的な地位が上がると、首脳間の交流が増え、緊密な連絡を取るために、「ホットライン」が必要になる。経済が発展すると、人々の住生活も改善される。家を買うために、不動産屋へ電話が殺到する。「電話回線が熱くなる」のは当然である。ある程度の経済力がつくと、みんな旅行を楽しもうとしているので、観光の“热线”が現れたのである。
“第三者”はもともと日本語と同じく「当事者以外の者。その事柄に直接関係していない人。」を指していたが、今は「夫婦の間に割り込む第三者」「愛人」という意味が現れた。
4.2 翻訳や借用時の限定特化
翻訳は、ある言葉の全ての意味を訳するのではなく、その言葉がある文章の特定の文脈で使われている意味を翻訳するのである。そのプロセスで、ある意味用法が優先されて、特化されがちである。その結果、他の意味用法が無視されてしまう可能性がある。潘钧(1995)も外来語の語義の限定特化について「一般的に言えば、ある言葉が外来語として他の言語に入る時、その言葉の意味が様々な要素によって限定され、ひいては特化されてしまう。」(10)と指摘している。
英語と中国語、英語と日本語の間の翻訳は違う文字で行われている概念の借用であるのに対して、中国語と日本語の間の漢字語はそのまま借用されている。中国語あるいは日本語での意味が多い言葉は、その意味について全て借用するわけにはいかないので、双方の語義などの違いをもたらしたわけである。
例えば、“修”は古くから“兴建;建造”(11)の意味もあったが、日本語に伝わってこなかった。“修筑”の“修”は“筑”と同じ意味を表す可能性がある。もともとあったものを“修筑(修築する)”場合は「修繕する」を意味するが、もともとないものを“修筑(修築する)”場合は明らかに「修理する」「修繕する」意味が入っていない。現在の“修筑”は、「今までなかったもの」として例えば「道路」「鉄道」「ダム」「空港」「橋梁」などを対象にする「築造する」「建造する」の意味を表している。この意味が日本語に伝わっていないので、日本語の「修築」は「建物·橋·堤防などをつくろい直すこと。」にとどまっているのである。
また、最初の意味が伝わった後に、新しい意味が生まれた場合、その新しい意味が伝わりにくい。
“汤”は唐代にすでに「スープ」(12)の意味があったが、日本語に伝わっていない。
中国語の今の“严重”の意味が日本語と大きく違っているので、中国語母語話者が日本語の「厳重」の意味用法をよく間違える。しかし、どうして両者に違いが出たのか、中国語と日本語の関係だけを見ては答えが見つからないだろう。
20世紀はじめごろのロシアとそのソビエトが中国に与えた影響は非常に大きかった。それは言葉にも反映されているはずである。王力(13)は、中国語の“严重”の意味がロシア語の影響を受けていると指摘している。訳者がロシア語を翻訳する時、“严重”と“重大”の二つの意味を持っているロシア語の言葉を全部“严重”に訳してしまったということである。《汉语大词典》は“严重”に関して7つの意味を挙げている。
(1)指地位高、威势重的人。(2)敬重。(3)严肃稳重。(4)犹严酷;严厉。(5)重大。(6)形容情势紧急危险。(7)过于笨重。
(1)~(4)と(7)は古い意味で、古典の用例が挙げられているが、(5)と(6)は新しい意味で、古典の意味との関連性が見いだせない。李大钊(14)の“在我们中国今日的劳动界,尤其应该令这个日子含有严重的意义。”という用例を挙げている点からも、ロシア語の影響がうかがえる。今中国語では“严重”の古い意味がほとんど消え、ロシア語からの意味しか残っていない。一方、日本語の「厳重」は中国語の古い意味とも違っているので、中日双方の意味が大きく異なっているのである。
ロシア語の影響を受けた言葉は“严重”だけではないだろう。20世紀に中国語の語義の変化が激しすぎた一面もある。中国語における日本語からの借用語の研究が盛んに行われているが、ロシア語とその翻訳が現代中国語に与えた影響について研究を深める必要がある。
「厳重」のほかに、翻訳の影響によって、意味が違う中日同形語は「王道」「婚期」「破門」「美声」などが挙げられる。
日本語の「王道」はもともと中国語と同じく「儒家の理想とした政治思想で、古代の王者が履行した仁徳を本とする政道」と「最も正統な道·方法」の意味を表していたが、英語の「royal road」の訳語としての意味が加わったので、中国語と違うのである。
日本語の「婚期」(15)は英語の「Puberty」の訳語で、「結婚に適当な年頃」という意味を表しているが、中国語では「婚礼の期日」を指す。
「破門」はキリスト教から来た可能性が大きい(16)。日本語では「師弟の縁を絶って門人から除くこと」「信徒としての資格を奪って宗門から除き去ること」の意味を表すが、中国語では「ドアを打ち破る」「破れた門かドア」を意味していたが、最近はサッカー用語としての「ゴールに入る」という新しい意味が誕生した。
中国語の“美声”はイタリア語からの訳語で、声楽用語の一つで、「ベルカント」という意味である。日本語の「美声」は一般的な言葉で、「美しい声」を意味する。
4.3 中日での意味用法の変化
4.3.1 中国語での意味の変化
中国語での変化は次の4類に下位分類できる。
①日本に伝わった意味が消え、他の意味が残っていたり、別の意味に変わったりした言葉②品詞性に関係する意味の変化③語義の抽象化④意味の特化
以下、詳しく見ていく。
もともと中国語で使われた意味が日本に伝わって、日本語でずっと受け継がれているが、中国語でその意味用法が逆に消滅して、他の意味が残っていたり、別の意味に変わったりしているので、現在の双方の違いが生じたのである。表面上双方の意味用法に関係がないように見えるが、言葉の源流をたどってみれば、双方の間に密接な関係があることがわかる。次の同形語が挙げられる。
暗算 恩賜 競走 合算 懸念 光臨 辞去 事情 師弟
新聞 整列 絶境 葬送 地歩 調剤 追尾 独眼竜
風流韻事 平淡 勉励 来臨 凌駕
“暗算”はもともと「道具を借りずに頭(心)の中で数える」意味だったが、明の時代(17)にすっかり「ひそかにわなをしかけて、人を殺害したり陥れたりしようとする」意味に変わり、ずっと受け継がれてきた。他動詞で、受身の形で多用される。「ひそかにたくらむ」「陰謀をたくらむ」という日本語訳は適切ではない。一方、日本語では「筆算や珠算の方法によらないで、頭の中で計算すること。」という意味がずっと保たれている。
“恩赐”は、もともと“朝廷的赏赐”つまり「皇帝が臣下に官職や物品などを賜る」意味だったが、中国は君主制の国家ではないので、中国語で“上苍的恩赐”“上天的恩赐”“上帝的恩赐”“神的恩赐”“大自然的恩赐”“政府恩赐”“美国恩赐”“别人恩赐”などのように使われ、「施す」「施しを与える」意味を表している。日本は天皇制なので、日本語に「天皇·君主から物を賜ること。」の意味用法がまだ残っているのである。
中国語の“新闻”と日本語の「新聞」の意味の違いはよく知られているが、日本語の「新聞」の意味が中国から伝わったことは中国人にはほとんど知られていない。《汉语大词典》(18)によれば、中国語で“新闻”という言葉は唐の時代から既に使われ始め、宋の時代に日本語の「新聞」の意味が現れた。
“独眼龙”は、もともと「片目を瞑って矢を射る」名人を褒め称えた言葉だったが、今は「片目を失明した人」を皮肉って、言っている。日本語では「独眼竜」は「片目の英雄。」を指し、特に「伊達政宗」を指している。
中国語では、“光临”の意味は変わっていないが、“降临”“来临”の意味用法が変わったので、日本語と異なっている。“来临”は「新年、夏休み、春等の時」や「暴風雨や嵐などの気象現象」の到来を表す。“降临”は昔の「神仏などのあまくだる」と「貴人が来訪する」意味が消え、「夜の帳や災難などが訪れる」というマイナス的な意味になってしまった。
“合算”は、もともと日本語と同じく「合計する」意味を表したが、現在は「合計する」意味がほとんど使われなくなり、形容詞として「少ない代価で大きな収益を上げる」「採算が合う」という意味を表す。字面からどうしてその意味が生まれたかまだ答えが見つかっていない。おそらく「何かをする前に支出と収入を合わせて計算して、利益があるかどうか見積もる」ところから生まれたのであろう。
“悬念”は、もともと「心配する」意味だったが、現在その意味がほとんど消え、その替わりに“挂念”等が使われる。“悬念”は現在“欣赏小说、电影、戏剧或其他文艺作品时的一种心理活动。即关切故事发展和人物命运的期待心理和紧张心情。(笔者译:小説、映画、戯曲あるいは他の文芸作品を鑑賞する時の心理活動。読者がストーリーの展開と登場人物の運命に関心を寄せ、ある期待を持っている心理と緊張感)”を意味する。
“辞去”は、中国語では「別れを告げて去る」から「辞めて去る」「辞める」意味に変わった。日本語ではまだ「わかれを告げて立ち去ること」の意味が保たれている。
“事情”は、もともと日本語と同じく「物事の真相、実情」「物事がある状態になった、細かな様子·次第。」を表していたが、だんだん“情”の意味が脱落して、“事”の意味だけが残ってしまい、「事。事柄」「仕事」「用事」の意味を表すようになった。一方、日本語は中国語から入った意味がずっと保たれているので、双方の語義が異なっているのである。
“地步”は「区域」「位置」「地位」「余地」「境地」「程度」などの意味があったが、「(主として悪い)境地」「程度」がまだ使われ、他の意味用法が消えてしまった。日本語では「地歩」は「自己のいる地位。活動する上での立場。立脚地。位置。」を意味しているので、中国語から伝わった意味がまだ保たれているのである。
“追尾”は、もともと「後を付けて追う」意味を表し、“尾追”とも言われた。“尾”は“追”と同じ意味を表す動詞であったが、「後の車が前の車の後尾に接触する」「追突する」という新しい意味が生まれた。日本語では中国語から来た「あとをつけて行く」「追跡する」の意味が保たれているが、中日とも「尾」に対する理解が「うしろ」「あと」の名詞に変わった。
“勉励”は、他動詞としての「励ます」と自動詞としての「励む。力を尽くす」二つの意味用法があったが、中国語では他動詞の用法しか残っていない。日本語では「職務に勉励する」のように「つとめはげむこと」の意味を表すサ変自動詞である。『日本国語大辞典』に収録された《漢書》の用例(19)は明らかに“劝勉鼓励”の他動詞の意味であるが、自動詞として理解されたせいか、「勉励する」は日本語でサ変他動詞として使われていないのである。
《汉语大词典》によれば、“凌驾”は(1)“超越;高出”と(2)“驾驶,驾驭。”の二つの意味があった。(1)の意味が日本に伝わり、「他社を凌駕する」「総合力で他チームを凌駕する」「前作を凌駕する売れ行き」「性能で従来品を凌駕する新型カメラ」「品質において他を凌駕する」などの用例のように、いい意味で使われている。中国語でも“其史党附本朝,思欲凌驾前作。”のような使い方があったが、今はほとんど“凌驾于法律之上的特权”“凌驾于群众之上”のように「法律の制約を受けない」「他者に優先する」という悪い意味が使われている。“凌驾”を日本語で「支配する」「君臨する」「圧倒する」などと訳するのは適切ではない。
“调剂”の“剂”は、「調節する」「調合した薬」などの意味があるので、“调剂”全体は「調節して治療する」「仲裁する」「調整する」「薬を調合する」などを意味したが、日本語に「薬を調合する」意味しか伝わっていないらしい。中国語では、「バランスがとれるように調整する」「調節する」意味を表すようになった。
“风流韵事”は、もともと「風雅なこと」「趣のある雅やかな遊び」を意味したが、現在その意味が消え、「男女のロマンス」という意味に変わってしまった。「風流」も「男女の情事にかかわる」意味が増え、多用されている。
“整列”は、もともと日本語と同じく「列を作ってならぶこと。また、ならばせること。行列をととのえること。」の意味だったが、現在は「一列全体」の意味に変わった。“整”に「全体の」という形容詞的な意味用法が現れた。“整体”も同じような用法である。日本語では「整」は他動詞の「整える」の意味として使われているので、「整体」「整列」の意味が違うのである。
中国語の“师弟”は、「同じ師に学んでいる後輩の男性」「師匠の息子の中で自分より年下の男性」「父親の弟子の中で自分より年下の男性」「師と弟子」の四つの意味があったが、現在「同じ師に学んでいる後輩の男性」しか使われない。日本語では「師と弟子。先生と生徒」を意味している。
“平淡”は中国語でもともと「人の品格や詩文などがあっさりして気取っていないさま」をほめた言葉だったが、のちに「平板で、味わいがない」意味に変わってしまった。褒め言葉からマイナス評価の意味に変わる稀な例である。
中国語で意味が変化した漢字と言えば、「走」が挙げられる。もともと「走る」を意味していたが、今はほとんど「歩く」意味に変わった。まだ「走る」「逃げる」意味を保っている言葉もある。例えば、“奔走”“东奔西走”“逃走”“败走”などが日本語と同じ意味を表しているが、“疾走”は文脈によって「走る」意味の可能性も「歩く」意味の可能性もある。“走路”“竞走”“快走”(20)などの“走”が「歩く」意味なので、日本語の「走路」「競走」「快走」と意味が違うのである。ただ、日本語「走」を含む言葉で「蟻走感」(21)の一語だけが例外である。4.3.1.2 品詞性に関係する意味の変化
中国語の言葉の品詞性の変化が激しい。品詞性が変わった言葉の多くは全体的に意味も変わるので、日本語へ翻訳される際、問題が起こりやすい。自動詞から他動詞へ、動詞や名詞から形容詞へ、実に多種多様である。日本語から輸入した言葉の品詞性の変化も看過できない。
ここで“瓦解”“绅士”“下落”“性感”“大意”“鱼肉”などの言葉を見てみたい。
“瓦解”(22)は、もともと「瓦が崩れ落ちるように分裂する」意味を表す自動詞だったが、現代になって、「瓦解させる」「崩す」の意味を表す他動詞としての用法が現れた。
“绅士”“性感”“大意”は、名詞から形容詞化したが、“性感”だけもとの名詞の用法を失い、日本語の「セクシー」に当たる。“绅士”と“大意”は名詞と形容詞を併せ持っているので、日本語より複雑である。“绅士”は、中国語では、もともと「地方にいる官吏」または「退官した人」の意味であった。日本語では、「紳士」が明治時代に英語gentlemanの訳語(23)として使用され、上流社会の男性へと意味が転じた。「品格があって礼儀正しい男子」を指すようになった。しかし、英語の訳語としての“绅士”は中国語に定着しなかった。中国語に“绅士”に当たる“先生”があったからである。また中国の男性と“绅士”のイメージがなかなか合わないのも一因であろう。それで、中国語では“绅士”は「紳士」ではなく、「紳士に近い」「紳士のようだ」という形容詞の意味が誕生したのである。
“大意”は「大意」の意味のほかに、「いい加減である」「不注意である」「迂闊である」の形容詞の意味が増えた。おそらく基本義の「大体の意味」から「大体でいい」「細かいところにこだわらなくてもいい」へ、さらに「まじめにやらなくてもいい」「いい加減だ」へと変わった。語源の由来に関する資料がまだ確認されていない。
“下落”は、「高いところから落下する」という意味を表す動詞であったが、「物が落ちたところ」に着目して、「物のありか」さらに「人の行方」を表す名詞に変えられたのである。日本語では「下落」の意味が抽象化し、「物価、相場、価値、等級などが下がること。」を表す。具体的な意味は「落下」で表す。
“鱼肉”のもともとの意味は日本語と違っていた。中国語では「魚と肉」を指し、日本語では「魚の肉」を意味する。中国語で名詞から他動詞化し、“鱼肉百姓”のように「百姓を魚と豚肉とみなす」「庶民から利益を搾取する」意味を表す。この意味用法もだんだん消えていくと思われる。また、最近日本語と同じく「魚の肉」を指す用法も現れた。
“固执”の動詞の用法として“固执己见”しか残っていないが、他の場合はすべて形容詞で、人の「頑固である。強情っ張りである。」性格を表す。日本語では「自説に固執する」のように、「固執」は名詞とサ変動詞として使われているので、“固执”の形容詞の意味用法に対応していないのである。
動詞の名詞化も中国語の一つの特徴である。特に、人の動作を表す動詞が人や物を表す名詞に変わった語例として、“出纳”“看守”“会计”“经理”“同道”“同调”(24)“最爱”などが挙げられる。日本語の「看守」も中国語と同じく「刑務所·拘置所などにおいて巡視·警備、その他刑事施設事務に従事する法務事務官。」を意味し、人を指している。
“同調”は、中国語で「志向や主張が同じ人」を指す名詞で、日本語の「同調者」に当たる。日本語の「同調」は、名詞とサ変自動詞で、「調子が同じであること。」「他と調子を合わせること。他人の主張に自分の意見を一致させること。」「機械的振動体または電気的振動回路などが、外部から与えられる振動に共振するように、その固有振動数を調節すること。」の意味を表す。
中国語で言葉の意味が基本義から離れて、抽象的な意味だけを表したり、基本義と抽象義が併存したりしているが、日本語では基本義にとどまっている。“输送”“埋葬”“口径”“放电”などの言葉について見てみたい。
“输送”は中国語では具体的な「(貨物などを)運ぶ」意味から抽象的な「(人材などを)送り出す。輩出する」意味に拡大された。日本語では「車や船?航空機などで人や貨物を運ぶこと。」意味を表し、人も対象になれるが、具体的な動作にとどまっている。
“埋葬”も具体的な意味から抽象化された。“埋葬遗体(遺体を埋葬する)”のように具体的な動作を表すと同時に、“埋葬了美国的奴隶制。”“埋葬纳粹主义的决心。”“埋葬殖民主义统治”などのように抽象的な名詞も“埋葬”の対象になれる。この“埋葬”は日本語の「葬り去る」「廃除する」「粉砕する」などに当たる。
“口径”は、もともと円い器物の口の直径を指していたが、円筒形の望遠鏡などの直径、銃砲などの円筒形の内径をも指すし、さらに「話し方。意見」と「規格。仕様」の意味をも表すようになった。例えば、“统一口径”は「口裏を合わせる」意味で、“俩人口径不一致”は「二人の話には食い違いがある。」意味を表す。
中国語の“放电”は、日本語の「放電」の意味の他に“用眼睛传情”「(男女間で)色目を使う。秋波を送る。」という新しい意味が増えた。
空間の意味から時間的な意味、抽象的な意味に変わった言葉も少なくない。詳しくは第八章を参照されたい。ここで「前景」について見てみたい。
“前景”は、中国語の典拠が確認されていない。日本語から来た可能性がある。日本語では「観る人の前にある景色。」と「絵画·写真·舞台装置などで、手前の方に配置された光景。」の二つの意味を表すが、どちらも具体的な景色である。中国語では“前景”の意味が抽象化され、空間的な意味から時間的な意味に変わり、将来の「見通し。見込み。将来性。未来図」の意味を表している。
意味の特化とは意味や使用範囲が広かった言葉が特定の対象に限定されたり特定の意味だけを表したりするようになる現象である。中国語では次の同形語が挙げられる。
爱情 短见 芳名 芳心 红颜 绝食 入团 入党 同居
吸引 先生
日本語では「愛情」は「相手に対して向ける愛の気持。深く愛するあたたかな心。」「異性を恋い慕う感情。」の意味で、「愛する」対象は異性に限らず、普通の人や物事にも使える。中国語では今“爱情”は「異性に対する愛の気持ち」だけを指し、意味が特殊化された。したがって、中国語では“母亲对儿子的爱情(母親が息子への愛情)”“对工作有爱情(仕事に愛情を持つ)”とは表現しにくい。
“短见”は「浅はかな見識」から「自殺」の意味が派生された。基本義と派生義が両方使われている。
“芳心”“芳名”“红颜”(25)などの言葉はもともと男女の性別を問わず幅広く使われたが、今は女性だけに使われるようになった。
「吸引」は中日とも具体的な動作と抽象的な意味に使われている。中国語では人の具体的な動作には使われない。その場合、日本語の「酸素を吸引する」「痰を吸引する」「麻薬を吸引する」のように「吸引(する)」を使うのではなく、“吸”だけを使う。「吸引力」は日本語では具体的な動作に使われるが、中国語ではほとんど抽象的な意味に使われる。したがって、日本語の「吸引力」は中国語の“吸力”“引力”に相当し、中国語の“吸引力”は普通日本語の「ひきつける力」「魅力」に当たる。「この掃除器は吸引力が強い」は中国語で“这台吸尘器吸力强。”と訳さなければならない。
「絶食」は「食物を絶つこと。食物を体内に入れないこと。」を表し、「胃の検査のため絶食する」「絶食療法」のように積極的ないい意味であるが、中国語では、“绝食”はもともと「食糧がなくなる」「食事を拒む」という意味を表したが、今「抗議や自殺のためのハンスト」の意味を指している。
“入团”と“入党”はそれぞれ普通「共産主義青年団に加入する」、「共産党に加入する」意味を表す。
“同居”は「同じ家に住む」「同じ街に住む」という意味を表していたが、今は「異性同士が同棲する」という意味が多用されている。
“先生”の意味は日本語とずいぶん違う。20世紀前半、一部の学識のある地位の高い女性に使われたが、歴史上ほとんど男性を指す。今は一般的な男性に使われるようになった。日本語の「主人」「ご主人」に当たる意味もある。
4.3.2 日本語での意味の変化
意味範囲の変化は「意味範囲の拡大」と「意味の特化」に分類できる。
意味範囲が拡大された例として「現役」が挙げられる。中国語では“现役”は「現在兵役に服していること。またその状態」を意味するが、日本語では「常備兵役の一つ。常時軍務に服し、戦時部隊の骨幹とされる役種。」だけでなく、「現にある職務に従事して活躍している人。」「浪人に対して、在校中の受験生。」をも指すようになった。日本語では専門用語の一般化がよくある現象である。
『広辞苑』などの辞書(26)は「人」や「受験生」などの名詞を使って説明しているが、「現役投手」や「現役で合格した」などの用例から見ると、日本語の「現役」も「現在活躍している状態(にある)」「在校中の状態(にある)」と解釈すべきだと思われる。
中国語では一般的に使われ、日本語では意味用法が特化された言葉が少なくない。次の同形語が挙げられる。
愛人 境内 献花 勾引 湿布 建立 出馬 説話 喘息
調理 投身 料理
“爱人”は中国語でもともと「人を愛する」意味であった。名詞としての使い方は日本語から来た可能性が大きい。今は「夫か妻」つまり配偶者を意味する。
『大辞林』の〔補説〕によれば、「愛人」は「sweet heart,loverなどの訳語として幕末から使われた」らしい。『岩波国語辞典』によれば、最初は「愛する人。恋人」を意味していたが、「第二次大戦後、新聞等で『情婦』『情夫』を避けてこの語を使い、『恋人でなく愛人だ』のような表現も生じた。」のである。「愛人」の意味の変化には日本人の婉曲的に表現する「ぼかし」文化と戦後のアメリカ文化の影響がうかがわれる。
“境内”は、「国境の内」を意味しているが、日本語では今ほとんど「神社·寺院の敷地の内。」を指している。
“建立”は、古代の中国語では「設立する」「制定する」「建造する」「樹立する」「位に就かせる」「功績を立てる」「成立する」などたくさんの意味があったが、日本語に入って、「こんりゅう」と読まれ、「寺院·堂塔などを建設すること。」の意味に限定されてしまった。今の中国語では“建立邦交(国交を樹立する)”“建立政权(政権を樹立する)”“建立了深厚的感情(厚い友情を結んだ)”“建立新的规章制度(新しい規約と制度を確立する)”のように抽象的な動作を指している。
“湿布”は、普通の「湿った布」を指すが、日本語では「フランネル·ガーゼなどを水や湯または薬液などに浸して患部に当て固定すること。また、その布。多く炎症の治療に用いる。」を意味し、名詞だけでなく、サ変動詞としても使われる。日本語の「湿布」は中国語で古くから“膏药”“狗皮膏药”などと呼ばれてきた。
“出马”は、もともと「馬を出す」意味であった。昔、馬に乗る武将が多かった。対戦の双方が陣地を構えてから、武将が先に一対一で戦うのは一般的であった。戦場に赴く武将がまず自分の陣地から馬を出さなければならない。それを「出馬する」と言う。後に「地位のある人が自らその場に出向いて交渉などに当たる」意味に転じた。日本語では更に「選挙に立候補すること」という特別な意味が増えた。
「献花」は、「霊前などに花を供えること。また、その花。」を意味しているが、中国語の“献花”は人にも使われ、「花束を贈る」意味を表す。
“说话”は動詞で、「話す」「よもやま話をする」「議論する」「文句を言う」などの意味を表している。宋元時代に「(物語を)講談する」意味があったが、日本語に入って、名詞化され、「講談する内容」つまり「はなし。ものがたり。特に、神話·伝説·童話などの総称。」の意味に特化された。
“喘息”は中国語では「あえぐ」「一息入れる」などの意味を表すが、病気だとは思われていない。日本語では「発作的に呼吸困難を起こす病気」を指している。
“调理”は、もともと「よい状態になるように整える」意味を表したが、漢方医学の「治療する」「養生する」、「しつける」、「管理する」「やりくりする」などの意味が派生された。日本語では「料理を作る」意味に限定されてしまった。
“投身”は、もともと「大義のために命を軽んじて身を捨てる」「献身する」意味だったが、今は「積極的に参加する」意味を表す。日本語では「大義」とは関係なく、個人的な原因で「入水する」意味に特化された。
“投身”の形式は必ずしも「入水する」とはかぎらなかった。春秋時代の呉の有名な刺客要離と戦国末期の楚の愛国詩人屈原は江に身を投げたが、「戦国末期の魏の侯嬴は信義を重んじ、剣で命を絶った」「釈迦牟尼が成仏する前に自分の身体を飢えた虎に食べさせた」などの“投身”もあった。
“料理”は古代で「処理する」「整理する」「しつける」「修理する」など多くの意味を表したが、日本語では「食物をこしらえること。また、そのこしらえたもの。調理。」の意味に特化された。中国には古くから「民以食為天(民は食をもって天となす。)」と言われているが、日本語での「調理」「料理」の意味の特化は同じく食生活の重要性を反映している。
“勾引”は、中国語で「不正を働くよう誘惑する」「邪道に誘い込む」などの意味を表すが、日本語では「かどわかす」「ひきよせる」の意味が消え、法律用語として、「被告人·証人その他の関係人を一定の場所に引致する強制処分。召喚に応じない場合などに限り、勾引状によって行う。」の意味になった。
「球」は、もともと「ボール」全体を指していたが、日本語では「野球」だけを指す言葉が少なくない。「球場」「好球」「打球」「投球」「球速」などの同形語が挙げられる。野球が国民的なスポーツで、日本人の生活に多大な影響を与えていることを物語っている。
“情事”は中国語で“事情”の意味の他に、“情意”の意味もあった。現在は「事情。事実。事例」の意味を表しているが、“事情”ほど多用されていない。日本語で「情」の意味は「ありさま」から「異性にひかれる心。男女間の愛。」に変わってしまったので、双方の語義が異なっている。
日本語で語義が転じ、特に意味が抽象化したことによって、中国語との違いをもたらした同形語が少なくない。次の言葉が挙げられる。
魂胆 脱帽 閉口 無心 放置 翻弄 薬缶 名門 野心
有数 風化
“魂胆”は、もともと「きもったま」を意味して、“失魂胆”のように使われたが、後に分解されて、“魂飞胆破”“失魂丧胆”と表現されるようになった。日本語に入って、今「たくらみ。策略。」の意味を表しているが、「魂胆」の字面からどうしてもその意味とは結び付かない。
“闭口”は、中国語で「口を閉じる」の具体義にとどまっているが、日本語では「相手の出方やその時の状況などのために、手の打ちようもなく困らされること。どうにも参ること。」という意味に転じた。
「名門」は、もともと中国語と同じく「由緒ある家柄。有名な家門。名家。」を指していたが、最近「有名な学校」をも指すようになった。
「薬缶」は、もともと「薬罐」と表記され、「薬を煎じるのに使われた土鍋」であったが、今は「銅·アルマイトなどで鉄瓶の形に造った容器。湯沸し。」を指すようになった。
「無心」は、中国語の「する気がない」の意味が日本語に伝わらず、「邪念のないこと。」が日本語に伝来して、次第に意味が変わり、「心ないこと。何の考えもないこと。思慮·分別のないこと。」から「遠慮なく物をねだること。」の意味が生まれたのであろう。
“有数”は、中国語で「数が少ない」意味を表しているが、日本語で「とりたてて数えられるものの中に入るほどおもだっていること。ゆびおり。屈指。」という意味に狭まってしまった。中国語で他に動詞として「よくわかっている」「よく把握している」意味もある。
「脱帽」「風化」「放置」「翻弄」は日本語で基本義から抽象化された。「脱帽」は、日本語で①「敬意を表するために、帽子をぬぐこと。」から②「比喩的に、その相手にはとてもかなわないとして敬意を表すること。」の意味が派生されたが、中国語では①にとどまっている。“风化”はもともと「良俗」を指していたが、日本語で「地表およびその近くの岩石が、空気·水などの物理的·化学的作用で次第にくずされること。岩石が土に変わる変化の過程。」の意味が誕生して、中国に輸入された。日本語ではまた「心にきざまれたものが弱くなって行くこと。」という比喩的な意味が派生された。
「放置」は、「かまわずに、そのままにしておくこと。」を意味し、中国語の「置く」とは意味が違う。中国語の“放置”は、“放”も“置”も「置く」意味で、「V+V」の連合構造であるが、日本語の「放置」は、「放っておく」と訓読みされ、「置」が補助動詞的な意味と理解されるので、「V+V」の補足構造である。
中国語の“放置”は、動作にとどまり、対象は物に限るが、日本語の「放置」は「放置」した後の状態に注目している。「放置された」ことにより、人が迷惑したり、損を蒙ったりしてしまう。また、「放置する」は、具体的な物(例えば、自転車、車など)だけではなく、「病人」「けが人」「負傷者」のような人、更に「状況」「現状」「事態」「問題」「外来種の侵入」「病気の進行」など抽象的な言葉と連語も目的語に取ることができる。
ちなみに中国語の“放置不用”“长期放置”などに日本語の「放置する」の意味が入っている。
“翻弄”は、「書籍や雑誌などのページをめくる」の具体的な動作を表しているが、日本語では「荒波に舟が翻弄される」「運命に翻弄される」のように、「思うままにもてあそぶこと。てだまにとり、なぶりものにすること。」という比喩的な意味を表している。
日本語で動作の対象が中国語と変わった同形語は「駆使」と「拝見」が挙げられる。
中国語では“驱使”の対象は人で、よく受身文で使われる。日本語では人から「技術」「パソコン」「外国語」などの物に変わった。
“拜见”は、中国語ではもともと「人に謁見する」意味だったが、日本語では「お手紙を拝見する」「中身を拝見する」などのように、対象が人から物に変わった。
同形語の褒貶義の変化は、日本語習得の難点の一つであると言えよう。日本語で中性的な意味からプラス的な意味とマイナス的な意味に変わったり、マイナス的な意味からプラス的な意味に変わったり、プラス的な意味が中性的に変わったりした言葉が少なくない。「感化」「忌憚」「結果」「女流」「野心」「腕力」などの同形語が挙げられる。
「結果」は、もともと「よい結果」と「悪い結果」の二つの可能性があったが、「結果を出したい」「努力しているのだが、なかなか結果が出ない」のように「よい結果」だけを表す場合が少なくない。ちなみに「結果」は中日とも接続詞的に使われるが、日本語では前件の文末に置かれるが、中国語では後件の文頭に置かれる。
「腕力」は、もともと「うでのちから」を意味したが。今は「腕力をふるう」「腕力に訴える」のように「暴力」という意味に変わってしまった。
「感化」は、もともと「人によい影響を与えて、心を変えさせる」意味だったが、「人に影響を与えて心を変えさせること。」という中性的な意味に変わった。「悪友に感化されて非行に走る」の例では、マイナス的な意味はすぐわかるが、「兄の感化を受ける」「先輩に感化される」だけでは褒貶義の判断は難しいので、前後の文脈を見なければ、中国語に翻訳しにくい。
“忌惮”は、中国語でも日本語でも打ち消しとともに使われるが、中国語では“肆无忌惮(やりたい放題をする。ほしいままにふるまう)”のように、人の無礼さを表すが、日本語では「どうぞ忌憚のないご意見を」のように相手に積極的な意見を求める場合にも使われる。
「女流」(27)は、もともと中国語では男性が女性を差別したり女性が自分の弱い立場を強調したりするときに使われる言葉であったが、日本語では「女流作家」「女流棋士」などのように、芸術家·技術家などを表す語につき、「優れた女性」の意味に変わった。
“野心”は、もともと「豺狼の子は、人に飼われても山野を忘れず、馴れ親しまないで、飼主をも害しようとする荒々しい心」を意味したが、比喩的に「権勢利益に対する身分不相応な貪欲」を表すようになった。日本語では「大きな飛躍を望んで、新しいことに大胆に取り組もうとする気持」という意味が派生され、プラス的にも使われている。
日本語で品詞性が変わった同形語も数多くある。ここで「査証」「始末」「前後」「餞別」「奮発」「有志」について見てみたい。
「査証」は、日本語で「調査して証明を与えること」から「審査した結果発行する旅券の裏書証明。ビザ。」の意味に変わったが、“查证”は、中国語ではまだ動詞として「調査して証明する」意味を保っている。
“奋发”は、中国語では自動詞で、「気力をふるいおこすこと。」を意味するが、日本語ではサ変他動詞化して、「祝儀を奮発する」「プレゼントを奮発する」のように、「思い切りよく金品を出すこと。」の意味を表すようになった。
反対の意味を表す漢字が構成した複合語で、「左右」「前後」「東西」「南北」「上下」「首尾」「始終」「縦横」などが挙げられる。「東西」「南北」「首尾」は中日とも名詞で、「始終」は中日とも名詞と副詞である。「左右」は、中国語では名詞と他動詞で、日本語では名詞とサ変他動詞である。「上下」は、中国語では名詞と自動詞で、日本語では「うえした」「かみしも」と読む場合は名詞で、「じょうげ」と読む場合は名詞とサ変自他動詞である。「前後」は、日本語では名詞とサ変自動詞であるが、中国語では名詞だけである。「縦横」は日本語では名詞だけで、中国語では自動詞でもある。
“饯别”は、もともと「酒席を設けて送別する」意味を表したが、日本語で「餞別」は「遠くへ旅立つ人や転任·移転する人などに、別れのしるしとしてそれを贈ること。」の意味になり、さらに動作の意味から、「贈る金品。」という物を指す意味に変わった。
「有志」は、もともと「ある事柄についての関心やそれに関係する意志を持っていること。」を意味していたが、最近「志を持っている人」「有志者」の意味に変わった。“有志”は中国語で今まだ合成語ではない。
「気味」「以前」は日本語で名詞から接尾語的に変わった。
“气味”は、もともと「物の香と味」を表したが、「意趣や情調」「物腰」の意味が敷衍され、さらにマイナス的な「性格」「趣味」「気配」に変わってしまった。日本語では「心持。気持」の意味に変わり、さらに「いくらかその傾向をおびていること。そのような様子であること。」の意味が派生され、「飽き気味」「風邪気味」「困惑気味」「遅れ気味」などのように、接尾語的に使われている。
“以前”は、中国語で名詞だけであるが、日本語では名詞の他に、「入社試験は面接以前の段階でふるい落とされた」のように、「それより前の段階」を表し、また「文学以前の稚拙な作品」のように、「通常の段階に達していないことを非難していう語。」としても使われている。その他に「常識以前の事柄」「能力以前」などの意味は日本語学習者にとって理解しにくいが、全部接尾語的に使われていると思われる。
4.3.3 中日とも変化した
基本義が同じであるが、それぞれ違う転義が生まれたり、別の意味に変わったりした同形語が少なくない。次の言葉が挙げられる。
岐路 好材料 公道 根底 充電 醸成 脱皮 背景 火種
鞭撻 保守
「岐路」は、日本語で意味が「本道から分かれ出た道。えだみち。」から「進路が分かれるところ」に変わった。例えば、「人生の岐路に立つ」という表現がある。「これからどの道を歩むか選択を迫られているときにある」意味を表すので、まだ「岐路に入っていない」はずである。
中国語では“岐路”より“歧路”が多用されている。意味は「分かれ道」「小道」から「邪道」「まちがった方向·道」に変わった。例えば、“人们对物质利益的追求是无止境的,容易走上歧路(笔者译:人々の物質的利益への追求はきりがないので、邪道に踏み迷いやすい”のように、“歧路”が比喩的な意味を表すのは一般的である。
“好材料”は、もともと中日とも「ある事をするのにちょうど適した材料」を意味していたが、中国語で「よい素材」の転義の他に、「可能性のある人材」を喩えて言う用法もある。日本語では取引用語として「相場を騰貴させる原因となる条件」の転義が多用されている。
「公道」は、もともと中日とも「公正な道理」を意味したが、中国語ではその基本義の名詞から形容詞化し、「公正である。公平である」「(値段が)適正である」の意味を表すようになった。日本語では「公の道路」「私道に対して、公物としての道路。国道·都道府県道·市町村道など。」という意味が多用されているが、通極語では「公共の道路」の意味が使われなくなった。
“根底”は、中国語で「基礎」「くわしい事情。内情。人の素性」などを指しているが、日本語では「物事の土台となっているところ·事柄。ねもと。こんぽん。」の意味を表し、打消し表現が多用される。
“充电”は、比較的新しい言葉である。最近中日とも比喩的な意味が生まれたが、双方に微妙な違いがある。中国語での“电”は、「知識や技能の知的なパワー」を指し、日本語の「電」は「休養して回復する体力的なパワー」を意味する。全体では、“充电”は「知識や技能を蓄積するために各種の教室に通ったり進学したりする」意味を表し、「充電」は「一定期間休養し、将来に備えて活力を蓄えること。」を指す。
“酿成”は、もともと「発酵作用を応用して酒·醤油などを造りあげる」を意味したが、中国語では「(好ましくない事態や結果を)引き起こす。招く。もたらす。」というマイナス的な意味に変わった。日本語では「和やかな空気が醸成される」「社会不安を醸成する」のように、「機運·雰囲気などを次第に作り出すこと。かもし出すこと。」という中性的な意味を表している。
中国語の“脱皮”は、日本語の「脱皮する」と違っている。“脱皮”は「皮がむける」意味を表し、「脱皮」は基本義の「爬虫類·昆虫類などが成長するにつれて、古い皮(表皮またはクチクラ層)をぬぎ捨てること。」と比喩的な意味の「古い考えや習慣を脱して進歩すること。」を表す。日本語の「脱皮」の基本義は中国語では“蜕皮”と言うが、比喩的な意味は中国語にない。
どうして“脱皮”と「脱皮する」の意味が違っているのか。もともと中国語では“脱皮”と“蜕皮”の二つの言葉があった。“蜕皮”は蝉や蛇などの虫だけに使われた。“脱皮”は人間にも用いられたが、抽象的な「俗人の骨·胎を取り換えて仙人になる」意味を表したのである。ところが、現代の中国語で“脱皮”は人間に使われた場合、具体的な「皮がむける」意味を表すようになった。虫の「脱皮する」は“脱皮”より“蜕皮”が多用されている。
一方、日本語に「脱皮」も「蛻皮」も入ったが、両方とも変化した。「脱皮」に比喩的な意味が増やされ、「蛻皮」は「もぬけがわ」と読まれ、名詞として「脱皮した皮。ぬけがら。」を意味するようになった。
“背景”と「背景」は、ともに「絵画·写真などで、その主要題材の背後の光景。後景。」「舞台正面に描かれた景色。書割かきわり。」「人や事件などの背後にあるもの。」の三つの意味を表せるが、「背後から支えるもの。」の意味では違い、中国語では“靠山及支持者”つまり人である「後ろ盾」を指すが、日本語では「強大な経済力」「軍事力」「武力」などを指す。また使われるときの構文が違う。日本語では「背景に~がある」というが、中国語では“有背景”(後ろ盾がある)と表現する。
“火种”の基本義は「火をおこすもとにする少しの火。たねび。」である。“火种”は原始時代から今までずっと大事なものとして扱われてきたので、“奥运会圣火火种”“革命的火种”“节日的礼花点燃起我心中的火种。”(28)などのようなプラス的な意味しか使われない。日本語で「ひだね」と読まれ、「紛争の火種」「内紛の火種」「問題の火種」「混乱の火種」「怨念の火種」「対立の火種」などのように「事をおこすもとになるきっかけ。」というマイナス的な意味を表している。
“鞭挞”の基本義は「むちでうつこと。処罰して戒めること。」であったが、中国語で「(他人の行動や言論を)攻撃する。非難する。」意味が派生され、いい意味には使われないが、日本語では「いましめはげますこと。督励。」の意味を表し、いい意味に使われている。
“保守”は、もともと「敵の攻撃から守る」意味だったが、次第に「失わないように守る」「失わないように保存する」などの意味が敷衍された。日本語で「革新」の対義語として使われ、「旧来の習慣、制度、組織などを維持しようとする」という新しい意味が生まれ、中国語に逆輸入されて、形容詞化し、「保守的だ」「控え目だ。内輪だ」の意味を表すようになった。動詞としての用法が狭まり、“保守机密”のように「漏れないようにする」という意味に変わった。一方、日本語では「正常な状態などを保ち、それが損じないようにすること」(29)の意味を表し、「機械を保守する」「エレベーターの保守」など具体的な動作に使われている場合が多い。
中日とも意味が減少した同形語は非常に少ない。「痛恨」以外の例はまだ確認されていない。“痛恨”は中国語で「ひどく恨む」と「非常に後悔する」の二つの意味があったが、二つの意味とも日本に伝わったが、現在中国語では「ひどく恨む」意味しか残っていないのに対して、日本語では「ひどく残念に思うこと。非常にくやしがること。」の意味だけが残っている。
同じストーリーの「朝三暮四」の話から敷衍された意味が違うのである。中国語では猿に餌を与える狙公の行為に重きを置いて、「(人が)移り気であることのたとえ。また,考えや方針が定まらず,当てにならないこと。」という意味を表すようになった。日本語での意味を『広辞苑』が三つ挙げている。
①目前の違いにばかりこだわって、同じ結果となるのに気がつかないこと。朝四暮三。
②口先でうまく人をだますこと。
③生計。くらし。「―の資たすけ」
①は明らかに猿の立場から敷衍された意味である。
“天衣无缝”は《太平廣記》卷第六十八(30)の「天女の衣には縫い目がない」という伝説から来た成語である。後に「物事特に詩文が完璧に出来上がった様子」を形容するのに使われた。ひいては「悪いことがだれにもばれていない様子」「協力する人同士の阿吽の呼吸がぴったり合う様子」「チームワークが非常にいい」意味を表すようになった。日本語では中国語から借用した「詩歌などに、技巧をこらしたあとがなく、いかにも自然で完美であるさま。」を形容する意味は変わっていないが、「物事が完全無欠である」意味から「人柄が天真爛漫でかざりけのないさま。」の意味が派生されたので、中国語の現在の意味用法と異なっているのである。
4.4 略語による違い
略語といっても、「北大」「東大」(31)のような固有名詞の略語も少なくない。本稿では人名や地名など固有名詞を考察の対象から外し、『広辞苑』『岩波国語辞典』『明鏡国語辞典』に収録されている普通名詞の略語に絞って考察していく。
略語と関係のある中日同形語を「中日とも略語である言葉」と「日本語だけで略語である言葉」の二種類に分けられる。
4.4.1 中日とも略語である言葉
中日同形語の中で、略語としての意味が同じである言葉が少なくない。以下の語例が挙げられる。
外債 化繊 魚雷 空調 血沈 校医 高専 索道 人文脊椎 点滴 普選 電話 特訓 南極 物証 物流 北極
流感 淋巴 有機物
意味が違う略語の典型的な例として「高校」「高検」「中学」「無期」等が挙げられる。
「高校」は日本語では「高等学校」の略語で、中国の“高级中学”“高中”に相当する。中国語の“高校”は“高等学校”“高等院校”を指し、日本の大学に相当する。それによって、「高校教師」の意味も違うのである。「高検」は日本語では「高等検察庁」を指すが、中国語では“最高人民检察院”を意味する。「中学」は日本語では「中学校」の略称であり、中国の“初中”に当たるが、“中学”は中国語では“初级中学”と“高级中学”両方を指すので、特に注意が必要な言葉である。「無期」は「無期懲役」「無期禁固」の略であるが、中国に“无期禁锢”がないので、“无期”は“无期徒刑”だけを意味する。
4.4.2 日本語だけの略語(32)
日本語だけに略語としての意味用法があるので、中国語との語義の違いをもたらしている。次のような言葉が挙げられる。
一浪 衛星 英文 往復 快速 回転 外来 管制 喫茶
金口 警察 刑事 携帯 現物 蝙蝠 国体 小包 重文
三脚 三種 浄土 常務 水彩 清朝 先勝 争議 総体
宋朝 総評 大戦 中華 中部 跳躍 定期 抵抗 丁字
電工 投擲 特急 熨斗 破竹 一重 富強 文庫 平安
保険 無線 明朝 明細 夜行 予備 連合 短距離
中距離 長距離 扁桃腺(33)
「球技」も特殊な略語であると言えよう。日本語では「ボールを用いて行う競技。」の意味であるが、「技」を「競技」の意味で使われる例はほかに見ない。中国語では「ボールを処理したり支配したりする技術やテクニック。」の意味を表し、「技」は一般的に「技術」として使われている。
4.5 日本語での同音漢字の書き換え
日本語では常用漢字ではない漢字が同音の漢字によって書き換えられている。それは一般的に同音漢字の書き換えと呼ばれているが、一部の言葉について、書き換えというより、二つの言葉が統合されたといったほうがもっと適切ではないかと思われる。以下、「意味用法に影響が出ない書き換え」「意味用法に影響が出ない統合」「意味用法に影響が出る統合と書き換え」の三種類に分けて考察していく。
4.5.1 意味用法に影響が出ない書き換え
中国語でも同じように漢字を書き換えたので、意味用法に影響が出ていないと考えられる。次の言葉が挙げられる。
意向 回廊 管弦楽 飢餓 凶悪 凶器 凶暴 元凶 色欲
刺激 食欲 性欲 日食 発酵 物欲
4.5.2 意味用法に影響が出ない統合
この種類の統合は「中日で同じ言葉に統合された」「中日で別々に統合された」「日本語だけで統合された」の三種類に分けられる。
(1)中日で同じ言葉に統合された
安逸 安佚 安逸 險阻 嶮岨 険阻
根底 根柢 根底 雇用 雇傭 雇用
駿才 俊才 俊才 消夏 銷夏 消夏
消沈 銷沈 消沈 暖炉 煖炉 暖炉
注解 註解 注解 注釈 註釈 注釈
繁殖 蕃殖 繁殖 抵触 牴触 觝触 抵触
熔解 鎔解 溶解 溶解
中国語では“雇用”“僱佣(僱傭)”“僱用”“雇佣(雇傭)”のような四つの言葉があったが、意味が同じなので、今日本語と同じく“雇用”に統合された。
中国語には“俊才”と同じ意味を表す言葉が多くあった。例えば、“俊材”“儁才”“儁材”“隽才”“隽材”“骏才”“骏材”などはみな「才知のすぐれた人」を表せる。
中国語では「金属類などが熔ける」意味を表す場合、“溶解”も使えるが、“熔化”のほうが多用されている。
(2)中日で別々の言葉に統合された。
日本語 中
国語
決別 訣別 決別
诀别 决别 诀别
車輛 車両 車両
车辆 车两 车辆
編集 編輯 編集
编集 编辑 编辑
略奪 掠奪 略奪
掠夺 略夺 掠夺
《康煕字典》によれば、もともと“訣”と“決”、“集”と“輯”、“略”と“掠”は一部の意味を表す時、通用していたのである。“車”を数えるとき、最初は“兩”を使っていたが、後に“輛”が使われるようになったのである。つまり、「決別」と「訣別」、「車輛」と「車両」、「編集」と「編輯」、「略奪」と「掠奪」はもともと同じ意味を表していたので、それぞれ別々に統合されても、影響がないと思われる。ただ、中国語の“编辑”は日本語の「編集」の意味のほかに、編集作業をする人をも指す。
「古」と「故」も通用していたので、「古老」は形容詞の使い方の他に、「故老」のような名詞の意味用法もあった。中国語では今「故老」という言葉が使われなくなったが、「古老」は「古い」意味を表す形容詞として使われている。日本語では「故老」と「古老」を「古老」に統合して、「昔からの事に通じている老人。」の意味を表しているので、中国語と違っているのである。
日本語の「斬新」に違和感を覚える中国人が少なくないだろう。中国語では“崭新”が使われている。“斩”にあまりいいイメージを持っていない。しかし、中国古籍全录と《康煕字典》を調べた結果、唐代までに“斬新”と“嶄新”が通用していたのである。日本語に「斬新」しか入らなかった可能性がある。
(3)日本語だけで統合された。
扇動 煽動 扇動
「扇動」と「煽動」は日本語で「扇動」に統合されたが、中国語ではまだ使い分けられている。ただ“扇动”に“煽动”の意味が含まれているので、中国語母語話者にとってはこの統合は問題にならないだろうと予想される。
4.5.3 意味用法に影響が出る書き換えと統合
(1)違う意味の言葉が一つに統合された。
もともと意味用法が違った言葉をその中の一つに統合すると、表記上確かに楽になったが、中国語母語話者はその統合を知らなければ、意味理解に支障をきたすのは言うまでもないであろう。また、中国語でずっと使い分けられてきた二つ以上の言葉がその中の一つに意味を集約されるのに抵抗を覚えるだろう。統合される前の中日同形語に微妙な違いのある言葉だったら、問題はもっと複雑化してしまう。
衣装 衣裳 衣装 陰影 陰翳 陰影
回復 恢復 回復 収集 蒐集 収集
奇形 畸形 畸型 奇形 昂奮 亢奮 興奮 興奮
昂揚 高揚 高揚 媾和 講和 講和
十分 充分 十分 悖理 背理 背理
辺境 辺疆 辺境 哺育 保育 保育
放棄 抛棄 放棄 諒解 了解 了解
日本語では「陰翳」を「陰影」に統合したのは中国人にとってはなかなか納得しにくいであろう。「荫翳(蔭翳)」は「樹木が生い茂っている様子」あるいは「生い茂っている樹木に覆われている様子」を表すので、「陰翳礼讃」のように、「陰翳」に美を感じたのだろう。「陰影」は「暗い影」で、マイナス的なイメージが多いので、全く美を感じないのである。中国語では二つの正反対のイメージの言葉なので、中国語母語話者にとって、「陰影」に「陰翳」の意味があることを習得するのはなかなか難しいだろう。
日本語では「回復」と「恢復」を「回復」に統合し、中国語の“回复”と同形語になっている。中国語の“回复(回復)”は日本語の「もとのとおりになる。」の意味の他に、「返答する」等の意味も持っている。つまり、中国語の“回复(回復)”の意味は一部しか日本に伝わらなかった。一方、「恢復」は中国語の“恢复”と同じくサ変他動詞として「一度失ったものをとりもどす(こと)。」を表していた。日本語では意味が違う「回復」と「恢復」を「回復」に統合したが、中国語ではまだ使い分けているので、お互いの意味用法の複雑な対応関係を形成してしまったのである。
日本語では「奇形」のもともとの「普通と異なった珍しい姿·形。」の意味がほとんど使われなくなり、「畸形」だけの意味が残っているし、具体的な意味にしか使われない。一方、中国語では“奇形”と“畸形”が並存しているし、“畸形”は抽象的な比喩の意味にも使われる。
日本語では「鞏固」と「強固」を「強固」に統合したが、中国語ではまだ使い分けられている。そして、日本語では「鞏固」と「強固」はともに形容動詞で、統合されても、言葉に影響がないが、中国語では“强固”は形容詞で、“巩固”は形容詞と他動詞で、意味用法に違いがある。
中国語では“高扬”に“昂扬”の意味を含んでいるので、日本語で「高揚」に統合されても差し支えないと思われる。ただし、中国語ではまだ別々に使われ、“高扬”は動詞で、“昂扬”は形容詞である(34)。また、「高揚する」は日本語でも自他動詞であるが、「士気を高揚する」のように「士気」を目的語にすることができるが、一方、“高扬”は中国語でも自他動詞であるが、“士气”の場合は「士気が高揚する」しか使えない。
中国語では「媾和」と「講和」は両方使われている。「媾和」は書き言葉で、「交戦国あるいは交戦した双方が互いに協定を結んで戦争をやめ、平和を回復する」を意味するが、「講和」は話し言葉的で、「個人どうしの和解·中直り」にも使われる。
日本語では「昂奮」「亢奮」を「興奮」に統合したが、中国語では三者は微妙な違いがある。“昂奋”は「意気が上がり、奮い立つ」状態を表すが、プラス評価である。“亢奋”は「極めて興奮している状態」である。“亢奋”と“兴奋”は中性的な言葉である。
中国語では“蒐集”は“搜集”に簡略化されて、“收集”と微妙な違いがある。“搜集”は「広範囲に探しながら集める」意味で、いろいろな場所から苦心して探し出すことに重点がある。その対象は物品でも,具体的あるいは抽象的事物でもよい。“收集”は「一ヵ所に集める」意味で、単に集めることに重点がある。比較的集めやすい物品や具体的事物·人物などを対象とする。日本語では「収集」に統合されたので、中国語母語話者にとってかえって習得しやすくなったと言えるだろう。
“哺育”と“保育”は中国語ではまだ使い分けられている。“哺育”は「動物の親が乳等を与えたりして、愛情をこめて育てる」意味であるが、“保育”は「親以外の人が保護し育てる」の意味を表し、「保育園」などで使われるのは一般的である。“哺育”と“保育”は中国語では感情の差異がある言葉なので、「保育」だけでは表わせるとは思われない。
日本語では「悖理」と「背理」が「背理」に統合されたが、中国語ではまだ両方存在している。普通通用できるが、両者は微妙な違いがある。《汉语大词典》の説明は次のとおりである。
悖理:违反逻辑规则或公式的推理。
ロジック規則や公式の推理に違反する。(笔者译)
背理:违背天理或伦理;不合理。
天理や倫理に違反する。道理に合わない。(笔者译)
「悖理」は論理学の用語で、学術論文で多用されるのに対し、「背理」は日常生活で使われる。
日本語の「了解」は非常に複雑な言葉であるので、簡単に「諒解+了解」では説明できないであろう。『岩波国語辞典』と『明鏡国語辞典』に「了解」と「諒解」のほかに、「領解」「領会」の表記も示されている。しかし、中国語の“了解”“谅解”“领会”のどれとも対応していない。
(2)別の違う意味の言葉に書き換えられた
饗応供応 交叉交差 撒水散水
撒布散布 抒情叙情 象嵌象眼
伸暢伸長 搏動拍動 篇編
輔補 理窟理屈
《康煕字典》によると、古代の中国語では“饗”と“響”が通用していた。“饗應”と表記されても、“響應”を意味していただろう。しかし、日本語に「響應」という言葉が伝来せず、「饗應」しか伝わってこなかった可能性が大きい。今「供応」に書き換えられて、「酒食を供して、もてなすこと。」という意味を表している。一方、中国語では、“響應”とは別に“供應”という言葉があったのである。それぞれ“响应”“供应”に簡略化されている。“供應”の意味は最初から日本語に入った「饗應」と違っているので、今の「供応」と“供应”の語義の違いをもたらしたのであろう。
中国語では“交叉”と“交差”は全く違う意味を表わす言葉だった。“交差”は「仕事を終えて、復命する」意味であるが、日本語では「交叉」を「交差」に書き換えてしまったので、中国語母語話者に語義の混乱を引き起こしている。
中国語にもともと“散水”という言葉があったが、“散水”は、建物の基礎を保護するために、建物の周囲に石·れんが·瓦·コンクリートなどを敷いた排水用のものを指している。「水を撒く」意味を表すのは“洒水”であるが、“撒水”という言葉はない。“撒布”と“散布”は別々の言葉である。日本語にもともと「散布」という言葉がなかったので、今の「散布」は中国語の“撒布”と同じ意味で、中国語の“散布”は「撒き散らす」と「散在する」という二つの意味を持っている。
日本語では「抒情」が「叙情」に書き換えられたが、中国語では「抒情」が常用されている。「叙情」は昔よく使われたが、文章で感情を述べ表すより、面と会って久しぶりに会った今までの経緯を話し合って、友情を深めたり、お互いに思い合う愛情を述べたりすることを表すのに多く使われた。今“叙情”は単独ではあまり使わなくなって、“共叙情意(お互いに情意を述べあう)”“叙情诗”のように他の言葉と一緒に使う場合が多い。
「象嵌」と「象眼」について、『明鏡国語辞典』は次のように説明している。
「象眼」「象嵌」は本来別語だが、混同されて同じ意に使われた。今は「象眼」を使う。
中国語では“镶嵌(鑲嵌)”が使われてきているが、“象嵌”という言葉は確認されていない。また“象眼”は「象の目」の意味の他に、中国将棋の用語である。中国将棋では「象」が「田」の形の対角の交差点に飛べるが、まん中の交差点に駒があったら、象が動けなくなる。それで、まん中の交差点は“象眼”と呼ばれているのである。
「伸暢」は《汉语大词典》に収録されていないし、古い用例もあまり確認できなかった。「伸長」は具体的に伸びる或いは伸ばす場合に使われるが、日本語の「学力」や「日本語」のような抽象的なものには使わない。また自動詞の場合は、物が主語になるが、他動詞の場合は対象が「手」「腕」「首」などに限る。
“搏动”は中国語でまだ日本語の「拍動する」と同じ意味で使われているが、“拍动”は“小鸟拍动双翼”“拍动坐下马”のように「鳥などが羽を上下に動かす」「馬を叩いて動かす」意味を表している。
日本語では「篇」が「編」に書き換えられた。中国語ではまだ使い分けられている。“篇”は名詞か助数詞で、“編”は動詞である。
日本語では「輔」と「補」は同じく「ほ」と発音するし、「甫」の旁を持っているので、同音代替が行われた。しかし、中国語では“辅”と“補”は、発音も違うし、意味も全然違う。中国語に“辅佐”と“辅导”があるが、「補佐」「補導」がないので、まだ問題にならないが、もともと“补助”も“辅助”もあったので、日本語を習得するとき、混乱を起こしやすいのは想像に難くない。“补助”は他動詞と名詞で、「補助する」と「補助金。補助物資。」を意味するが、“辅助”は他動詞と形容詞で「補佐する。助ける。」と「補助的な」の意味を表す。“补助”の中心目的語は物であるのに対し、“辅助”の目的語は人である。
“理窟”と“理屈”は、正反対の意味を表していると言える。《汉语大词典》によれば、“理窟”は“义理的渊薮(義理の集まっている所)”と“义理的奥秘(義理の奥義)”の意味を表していたが、使われなくなった。“理屈”は「理に欠ける」と「道理で相手を屈服させる」意味であったが、現在は「理がない」「理に欠ける」「道理に合わない」の意味だけが残っている。「窟」と「屈」は全く違う漢字なので、中国人として日本語の「理屈」の意味を誤解するのも無理がない。
4.6 漢字の意味による違い
4.6.1 中国語の漢字の意味が日本語より多い
中国語では、漢字の意味用法がどんどん変わって来た。特に、接辞としての用法が日本語との違いをもたらした原因の一つである。たとえば、“头”“面”“上”“下”“子”を含む次の中日同形語の意味用法が違うのである。
石頭 骨頭 舌頭 前頭 枕頭 念頭 外面 地上 頭上
口上 車上 地下 妻子
その中で“外面”“地下”“妻子”(35)は二通りの読み方があるので、日本語の意味との対応関係が複雑である。ちなみに、日本語でも「妻子」(36)が妻だけを指した用法があった。
「骨頭」は日本語では医学用語で、普通の辞書にほとんど収録されていないが、「骨の頭」を意味し、骨の方向性を重んじている。中国語では“骨头”は日常的な言葉で、「骨」の意味を表す。
中国語では“老婆”の「老」は接頭辞で、親しさや親近感を示す。「婆」は中国語で「年を取った女性」のほかに、「既婚の女性」「妻」の意味をも表せる。今では“老婆婆”の意味は日本語の「老婆」と同じである。
「記帳」の「帳」は中国語で、「帳簿」のほかに「出納の記載」や「貸借勘定」の意味があるので、「記帳」の意味が日本語より多い。
4.6.2 日本語で漢字の意味に対する理解が変わった
中国語の熟語の漢字が別の意味に理解された言葉の例として「失火」「幅員」「用事」「平身低頭」が挙げられる。
“失火”“失敗”の“失”の意味は中国人でも分かりにくい。“失火”の“失”は“没有把握住或控制住”つまり「制御できない」という意味で、“失足”“失笑”などと同じ用法である。この意味解釈は日本語の辞書では確認されていない。日本語の辞書では「失」を「過失」「過ち」と解釈しているのが一般的である。「失火」全体は「過って火災を起こすこと。また、その火災。」という意味になる。一方、中国語では、“失火”は、「火をコントロールできなくなって、火事になった」という意味で、火事の原因は「過失」とは限らない。
《汉语大字典》によれば、“用”は“古代特指杀人以祭或杀牲以祭。”の意味があった。《汉语大词典》は“用事”の意味について、次のように説明している。
(1)谓有所事。指行祭祀之事。
(2)谓有所事。指执法行刑。
(3)谓有所事。指起兵;使用武力。
(4)执政;当权。
(5)指执政者。
(6)当令。
(7)指文学作品中引用典故。
(8)办事。
為政者は何をするのにも、まず天意を問う必要があったのである。おそらく“用事”の最初の意味は「人や動物を犠牲として天を祭る」で、だんだん他の意味を派生したのであろう。今は(8)の「事を行う」しか使われない。
中国語の“用事”の難しい意味が日本語に伝わらず、「用」を「事」と同じように理解してしまって、そこからどんどん新しい言葉が生まれて、中国語と違ってきたわけである。例えば、日本語で「用」が「する必要のある仕事」の意味で使われている中日同形語は次の言葉が挙げられる。
用 急用 公用 私用 商用 所用 俗用 多用 他用 無用
用事 要用(37)
中国語の“用”に「仕事」の意味がないので、上の同形語の意味が異なっているのである。
“平身”は中国語で“行跪拜礼后起立站正”つまり「臣下が皇帝など会うときの礼儀。跪いてから立ち上がり、平常のように直立する」意味を表していたが、日本語で「体を平らげて、お礼をする」と理解されてしまった。『日本国語大辞典』は次のように説明している。
①(─する)体をかがめること。平伏すること。
②普通のからだ。あたりまえのからだ。
そして、①の用例として中国の清の洪昇の《长生殿》を挙げている。
長生殿—定情「旦進拝介、臣妾貴妃楊玉環見駕、内侍、平身」
これは明らかに意味を誤解している。「臣妾貴妃楊玉環見駕」は楊貴妃が皇帝に会うとき、跪いてお礼をしながら、言った言葉である。「内侍」は皇帝に仕えた宦官で、「平身」は「内侍」が楊貴妃に言った言葉である。つまり、「内侍」が跪いてお礼をしている楊貴妃に「立ちなさい」と言っているのである。すでに跪いている楊貴妃にまた「平伏しなさい」と言うわけにはいかない。中国語の“平身”に対する誤解から日本語の「平身低頭」のような意味が生まれたのかもしれない。
《汉语大词典》は“幅员(幅員)”について、“指疆域。广狭称幅,周围称员。”と説明している。《康煕字典》の“員”に関する説明に“【正韻】周也,幅員,亦作幅隕。”と書いてある。つまり、古代では“員”は“圓”と通用し、「まわり」を意味していた。日本語に伝わって、「員」は「数」に理解されてしまった。『日本国語大辞典』は「「幅」ははば、「員」はかずの意」と説明しているが、次の二つの用例に当てはまるとは思われない。
*剪燈余話-胡媚娘伝「念幅員之既広、慨狐魅之滋多」
*江戸繁昌記〔1832~36〕四·新梅園「園、墨水の東に在り、白髭の祠に隣す。幅員万畝、地形環の如し」
『岩波国語辞典』も「幅員」の「員」を「かず」と解釈しているが、『広辞苑』と『大辞泉』は「まわり」と解釈している。辞書の漢字の意味に対する理解が分かれているが、「幅員」の意味は中国語の「領土の面積」と違い、「船や道·橋などの横の長さ。はば。」を指しているので、注意が必要である。
4.6.3 日本語で漢字に新しい意味を持たせた
漢字が日本語に入ってから、日本の社会環境に溶け込んで、日本的な新しい意味が誕生するのは当然である。上述の「用」も代表的な例であるが、その他に、「引」「着」「快」「業」「句」「歌」「地」「場」「床」などが挙げられる。
「引」は日本語で他動詞だけでなく、自動詞としても使われる。「引火」という言葉はうっかりすれば、中国語と日本語で同じ意味だと思われがちである。中国語ではずっと昔から「火を付ける」「火をおこす」の意味を表してきた。「引」は他動詞的な用法で、人間の意図的な動作である。日本語では「引火」は「可燃性の物が、他の火·熱によって燃え出すこと。」という意味で、「引」は自動詞的な用法で、人間の意図的な動作ではなく、何かの原因で、おのずから火がついたという意味を表す。
「着」は日本語で多くの新しい意味が創られた。
『明鏡国語辞典』の「着」の項目に8つの意味が並べてある。ちゃく【着】(造)
①衣服などを身につける。きる。「—衣·—用」
②衣服の数を数える語。「スーツ二—」
③くっつける。くっつく。「—眼·—色·—床」「執—·接—·定—·密—」
④ある場所にゆきつく。とどく。「—信·—席·—陸」「帰—·終—·先—·発—」「盛岡—十一時の新幹線」
⑤到着した順番を数える語。「マラソンで三—になる」
⑥きまりがつく。おちつく。「—実」「沈—」
⑦物事を始める。「—工」
⑧囲碁で、石を打つこと。「失—·敗—」
②④⑤⑦の意味は中国語の辞書で確認できなかった。日本人が「着」という漢字に多くの新しい意味を付け加えたと言える。しかし、もともとの「着」の意味とまったく無関係なわけではない。むしろ②は①から、④⑤は③から、⑦は「着手」から派生した可能性が大きい。
「着」の新しい意味は「一着」という言葉によく現れている。
『明鏡国語辞典』の「一着」の項目に次の4つの意味が並べてある。
いっちゃく【一着】〔名〕
①競走·競泳などで、一番早く到着すること。第一位。一等。
②衣服の数え方で、一つ。また、そのひとそろい。「―しかない背広」
③囲碁で、石を一つ盤面に打つこと。一手。「勝敗を分けた―」
④〔他サ変〕改まって衣服を着ること。着用。
中国語には③しかない。①②は「着」の新しい意味による違いであるが、④は漢字の意味の多様性と強い結合力による意味の違いと言えるだろう。
“地”について、《汉语大字典》の(15)番目の意味項目に“花纹图案或文字的衬托面;底子”と書いてある。“白地”“红地”“质地”“素地”などは「布の下地の色」を表す言葉で、“质地”はその他に、「人の品質」をも表していたが、今は使われなくなった。しかし、中国語にはこのような意味で使われている複合語が少ないし、“地”の意味も限られている。それに対して、日本語で「加工する前の材料や土台。紙·布などの模様のない部分。」の基本義から「後に加えられたものに対して、基本的·本質的なもの。」「うまれつきの性質。もちまえ。」「文章の、会話の部分に対して、作者の説明した部分。」などたくさんの意味が敷衍された。中日同形語としては「生地」「下地」「地力」が挙げられる。「生地」は二つの読み方があり、「せいち」と読むとき、中国語と同じ意味を表すが、「きじ」の場合は意味が違う。「地力」も「じりき」と「ちりょく」の二通りの読み方があり、「ちりょく」と読む場合、中国語と同じ意味を表すが、「じりき」は日本語独特な用法である。
「上場」の「場」は中日とも「あることが行われるところ」であるが、日本語では一般的に「証券取引所または商品取引所」を指すが、中国語では「運動場」や「舞台」などを意味する。「場」の「証券取引所または商品取引所」の意味は日本語独特な使い方である。
日本語の「文」は「文章」という意味は中国語と共通しているが、「ある完結した思想内容を表す一続きの語のまとまり。センテンス。」という意味は中国語にないので、「例文」「短文」などの言葉全体の意味が異なっているのである。「句」「歌」は日本語で「俳句」「和歌」を指す場合が多いので、中国語と違っている。
「業」は普通「暮らしのためのしごと。」「職業」を意味するが、日本語の「就業」では「業務」の意味をも指す。
“善战”は、中国語では「戦うのが上手だ」」「戦いに長ける」意味で、“善”は「長じる」「長ける」の意味で、その結果は往々にして「勝利を挙げる」ことである。日本語では「善」は「結果がよいように。うまく。たくみに(する)。」という意味を表し、「善戦」は「実力を出し尽くしてよく戦うこと。」という意味を表し、敗れた結果より、戦う過程での「戦いぶり」を強調している。
4.6.4 漢字の意味が違う
ほとんどの漢字は複数の意味を持っている。日本語と中国語ではそれぞれ別の意味が採用されているので、語義の違いをもたらしたのである。代表的な漢字は次の例がある。
圧 案 役 火 検 公 産 商 信 場 職 整 送 本
中国語では“发信”の“信”は「手紙」を指し、“送信”の“信”に「手紙」の他に、「便り。知らせ」の意味がある。しかし、どちらも人が郵便局や届け先に行かなければならない。日本語では「発信」「送信」の「信」は「手紙」の意味がなく、「便り」や「メール」などの信号を指し、本人が足を運ばなくても、パソコン等で済ませることができる。
「火」を含む中日同形語がたくさんある。例えば「火、火気、火急、火災、火勢、火力、火薬、火種、火柱、火花、漁火、引火、上火、鬼火、篝火、失火、出火、消火、情火、戦火、耐火、着火、点火、灯火、導火線、野火、発火、噴火、放火、砲火、防火、蛍火、猛火、欲火、烈火」などが挙げられるが、その中で「火」の意味が違う言葉は「火気」「上火」「消火」「出火」「発火」(38)で、意味用法が違う言葉は、ほかに「火種」「引火」「失火」「着火」(39)などがある。
漢方理論によれば、人体の健康状態は、陰陽のバランスによって維持されている。「陽」が「陰」より強いと、「火」が起こる。「陰」が正常な状態にあり、「陽」が強すぎる場合、「実火」と呼び、「陽」が正常な状態にあり、「陰」が相対的に弱い場合、「虚火」と呼ぶ。それぞれの症状に対応する治療法を取らなければならない。人間が怒ると、血液がどんどん上のほうへ上る。「火」の性質は「炎上する」ことであるので、中国語では、人間が「かっとなってのぼせてしまう」ことをも“火”と表現する。それによって“上火”“発火”“火気”“出火”などの意味が日本語と違うのである。漢方医学が言葉に対する影響の大きさをよく物語っている。
“案”は古くから「訴訟や違法に関する事件」を指している。《康煕字典》は次のように説明している。
【正字通】凡官府興除成例及獄訟論定者皆曰案。
“案”のこの意味は日本語ではほとんど使われていないが、中国語では次の言葉はすべてこの意味で使われているが、日本語では「考え」「考えから」「アイデア」「計画」などを意味する。
案件 一案 勘案 原案 懸案 公案 新案 断案 鉄案
発案 翻案 名案(40)
“悬案”は「未解決の事件」の意味として使われる場合が多いが、「懸案」は「解決を迫られながら解決されずにある問題」を意味する。
中国語では“服役”の“役”は「労役」と「兵役」を意味するが、「懲役」の意味がない。日本語の「服役」は「夫役·兵役·懲役などに服すること。」を指すので、「役」の意味が中国語より広い。
「一役」は「一つの役目」の意味を表すが、中国語では「一回の戦役」を指す。中国語で、“役”に“职责”“职分”の意味もあったが、使われなくなった。
「検」は中日とも「取り調べる」「検査」「制約する」「検査機関の略」などの意味を持っているが、「送検」「検挙」の「検」はともに「検察機関」などを意味しているので、中国語と違っている。
中国語では“送检”は「関係担当機関へ検査に送る」意味を表し、“检举”は「(一般の民衆が)関係の機関や組織に告発する」を意味するが、日本語では「送検」は「犯罪容疑者や捜査書類·証拠物件などを警察から検察庁に送ること。」(41)を意味し、「検挙」は「検察官·司法警察職員などが容疑者を特定し、刑事事件として処分するに足る捜査を完了すること。また、その容疑者を関係官署に連行すること。」(42)を表す。
「公」の意味が中日で大きく違っているので、「公」を含む同形語全体の意味が異なる言葉は少なくない。ここで、「公認」「公用」「公約」「公館」について見てみたい。
“公认”(43)は「公衆が認める」「みんなが認める」意味であるのに対して、日本語の「公認」は「国家·社会·政党などが正式に認めること。」を意味している。「公用」「公館」の「公」は「統治機関」「役所」「国」「公共団体」などを意味する。中国語では“公认”“公用”の“公”は「公衆」「一般の人みんな」を指すが、“公馆”の“公”は「官僚や富豪私人」を指していた。“公馆”は今旧居の名前に使われているだけである。
“公约”と「公約」も大きく違う。“公约”は「多国間で締結した条約」と「みんなでいっしょに作って守らなければならない規約」の二つの意味を持っている名詞であるが、日本語の「公約」は「公衆に対してある事(政策など)を約束すること。また、その約束。」を意味する名詞とサ変他動詞である。両者の語構成も異なっている。
“运动员”と「運動員」の意味が違う。「運動」は「物体が時間の経過につれて、その空間的位置を変えること。」「体育·保健や楽しみのために身体を動かすこと。スポーツ。」「目的を達するために活動すること」などの意味を指し、中国語の“运动”とほぼ変わらないが、「運動員」と“运动员”を構成する時、それぞれ「目的を達するために活動すること」と「スポーツをする」意味を取っているので、両者の違いが生まれたのである。
「商」は中日とも「はかる。相談する。物事を比べて考える。」と「あきなう。売り買いして利益を得る。」の意味があり、それぞれの意味を使う「商業、商店、商人、商品、通商」と「商量·商議·協商」は中日で同じ意味を表すが、「商談」の「商」に対する理解が違っている。日本語は「商売。取引」の意味を採用して、「商談」は「N+N」になり、「商売や取引をまとめるための話合い。」を表すが、中国語では「V+V」の語構成で、「相談する」意味を表す。
中国語の“生息”は、「生活する。生きる」の意味以外に、「利息を生む」の意味がある日本語の「生息」の「息」は「生きる。生存する。」意味だけで、「利子」の意味がない。中国語の“生息”は「V+V」と「V+N」の二種類の語構成を持っている。
中国語の“生气”も二種類の語構成を持っている。「N+N」の場合、日本語と同じくは「生気」「活気」「活力」を表すが、「V+N」の場合、「怒気が生じる」「怒る」の意味を表す。日本語の「生気」の「気」は「生命の原動力。精神力。」を意味するが、しかし、人間が怒る時、漢方で、生命力の根源とされる気が血とともに頭の方に上り、「怒気」に変わってしまうので、中国語の“气”に「怒気」」「怒る」「怒らせる」等の意味が生まれたのである。日本語にも「頭に来る」という連語があるが、「来る」の主語は「怒気」のようなものであろう。
「仮」は「一時的なまにあわせ。」「本物でないもの。」「かりに。臨時に。まにあわせにかり。」などの意味があるが、中国語では「本物でない」意味が多用されているので、「仮装」「仮設」などの同形語は意味用法が異なるのである。
日本語で「装」は「衣服をつけて身ごしらえをする。よそおう。よそおい。」「しかけをとりつける。ととのえる。かざる。」「書物の体裁。」などを意味するが、中国語では「衣服」と「偽り装う」などが多用されているので、「仮装」「男装」「女装」「服装」「武装」「盛装」「正装」「武装」(44)などの同形語は意味用法が異なるのである。
「壇」は中日とも「他より一段高くした設備」と「学芸の専門家の社会」の意味を持っているが、「教壇」は日本語では前者の意味であるのに対して、中国語では後者の意味である。「歌壇」の「壇」は同じく「社会」の意味であるが、「歌」は日本語で「和歌」「歌人」を指しているので、中国語の「歌手」と違うのである。「歌」「句」などは日本語で意味が特化されている。
「本」の意味が非常に多い。中国語では「木の根」の意味から「物事のはじまり。物事の根本·根源」「本来の。もともとの」「もともと。元来」「自分の。我が」「現在の。この」「に基づいて」などの意味がどんどん敷衍されてきた。古代では植物を数える量詞として「株」と同じ意味を表していたが、今は使われなくなった。一方、日本語に伝わって、「おおもとである。主体である。中心。」「草木のように細長いもの(を数える語)。」「この。当の。」の意味が多用され、さらに「正式。まこと。」という新しい意味が誕生した。それによって、「本名」「本校」「本場」「本店」「本案」などの中日同形語の意味が違うのである。
日本語の「本名」は「号·芸名·筆名などに対して、まことの名。実名。」の意味であるが、中国語では現在の名前に対する「もともとの名前」の意味である。
日本語の「本校」は「分校に対して本体である学校。」と「この学校。当校。」の二つの意味を表すことができるが、中国語では「我が学校」の意味だけである。
「本場」は日本語では普通「ある物の本来の産地。」を指しているが、中国語では「この(試合や公演など)」という連体修飾語である。
「本店」は、日本語で「営業の本拠である店。」を意味するが、中国語では「わが店」という意味である。
「本案」は、「この案」と「民事訴訟において、付随的·派生的な事項に対し、本来的な事項を指す語。最も普通には、訴えの形式的な適法性に対して、請求の内容の実体法上の当否を指す。本案審理·本案判決の類。」の二つの意味があるが、中国語では「この訴訟事件」全体を指す。
“本家”は、中国語でもともと「もとの家」「原籍·本籍」を意味していたが、「父方の祖先を同じくする者。同族。一族」の意味に変わり、現在も使われている。日本語では「おおもとになる家筋。いえもと。宗家。」「分家から見てその分かれ出たもとの家。」の意味である。
“送”は、中国語では「届ける」「贈る」の意味がある。“送信”は「手紙を届ける」意味で、“转送”は、「人からもらったお土産などを他人に贈る」意味である。「奉送」は、日本語で「貴人を見送る」意味で、あまり使われないが、中国語では「進呈する。献呈する」「ただであげる」意味を表し、よく使われている。
日本語の「抜糸」は、「手術などの切口がなおってふさがった時、縫合糸を抜き取ること。」意味で、「糸」は本物の「いと」であるが、「抜糸」という言葉の歴史はそんなに長くはない。中国語の“拔丝”は、明代の小説にすでに使われている。“丝”は本当の「いと」ではなく、「いとのようなもの」の意味である。“拔丝”は二つの意味がある。「(金や銀のような金属材料を引き延ばして)頭に飾る飾り物をつくる」と「油で揚げた果物などの材料を,砂糖を煮つめてあめ状にしたものに入れてからめた料理(食べるとき、箸で挟んで、引っ張ったら、あめが細い糸のように見えるから“拔丝”と呼ばれたのである)」である。
4.7 語構成による違い
語構成の違いが中日同形語の語義の違いをもたらす要因の一つである。詳しくは第三章に述べる。ここで「改正」「画像」「口角」「閃光」「備忘」「養家」「一個人」「各個人」「継続審議」などの同形語を見てみたい。
日本語の「改正」は「V+V」の連合構造で、「改」と「正」が類義を表しているが、中国語の“改正”は「V+A」の補足構造で、全体の意味は“正”のほうに傾いている。
“画像”は「V+N」の動賓構造と修飾構造の二種類の語構成があるので、「肖像画を描く」動詞と「描いた肖像画」名詞の二つの意味を表している。日本語の「画像」は、中国語の名詞と同じ意味を表す場合もあるが、多くの場合「機械的処理により、感光材料·紙·スクリーン·テレビ‐ブラウン管などの上にうつし出された像。」を表している。
“口角”は中国語で“kǒu jiǎo”“kǒujué”の二つの読み方があり、“kǒu jiǎo”と読まれる場合、「N+N」の語構成で、日本語と同じく「口の左右のあたり。」の意味を表すが、“kǒu jué”と読まれるとき、「N+V」の語構成で、「口論する」「口げんかする」意味を表す。“角”は「競う」「争う」意味を持っている。
「備忘」の意味について、『広辞苑』は「忘れた時の用意に備えること。」と説明している。この意味の説明では日本語の「備忘」の語構成が理解できなくなってしまう。中国語では“备忘”の“备”は他動詞で、「防備する」「防ぐ」の意味を表す。“忘”も他動詞で、「忘れる」を意味する。“备忘”は「V+V」の動賓構造で、「忘れるのを防ぐ」意味で、日本語の「忘れるのに備える」と同じである。
“养家”は「V+N」の動賓構造で、「家族を養う」意味を表すが、日本語の「養家」は「養子縁組によって入った家。養子先の家。養方。」を指しているので、「N+N」の修飾構造である。
“闪光”は、「V+N」の動賓構造と「V+N」の修飾構造で、「瞬間的に光を放つ」「きらめく」と「瞬間的に発する光」「きらめく光」を意味するが、日本語では「閃光」は「V+N」の修飾構造だけで、中国語の名詞の意味の他に、「鉱物の結晶中に微細な含有物などが一定方向に配列して生じる、内部からの回折光。」の意味もある。
“一个人”と「一個人」は語構成が違うので、語義に微妙な違いが生じた。“一个人”は“一个+人”つまり「数量詞+名詞」の修飾構造で、人数を数える数量詞になり、「一人」の意味を表す。「一個人」は「一+個人」の「数詞+名詞」の修飾構造で、「地位·職業など公の面を離れて考えた、一人の人。また、全体の中での一人の人間。」という意味を表す。
“各个人”は“各个+人”の修飾構造で、「全ての人」全体を指すが、日本語の「各個人」は「各+個人」の修飾構造で、「一人一人」「それぞれの個人」を指している。
“继续审议”は「V+V」の動賓構造の連語で、「審議することを続ける」意味を表すが、日本語の「継続審議」は「V+N」の修飾構造の名詞で、「議決するに至らなかった案件を次回の会議に持ちこして審議すること。」を意味する。
4.8 偶然の一致によって形成した同形語
偶然の一致で形成した中日同形語は3.で挙げたように数多くあるが、それぞれ意味が違うのはむしろ当然であると思われる。ここで、次の言葉について考察を加えたい。
得体 起毛 仰天 香油 新人 耐性 展翅 独女 発毛
感染力 老廃物
日本語の「得体」の由来は定説がないが、『広辞苑』は「(一説にの音読イタイの転。」「得体」とも書く」と説明している。中国語の“得体”は「言動が規範に合うさま」「適切である」意味を表し、“体”は「言動が社会的な規範や道理に合うこと」を意味する。
“起毛”は「毛が起こる」「けばだつ」の意味で、布地の品質がよくないと思われるが、日本語の「起毛」は「織物や編物などの表面の繊維をかきたててけばを立てること。」の意味を表し、「羅紗ラシャ·フランネル·メリヤスなどの仕上げに応用」される。中国ではだれでも着物に“起毛”の現象が起こってほしくないのであるのに対して、日本では人為的にわざと「起毛」をさせている。
“仰天”と「仰天」は非常におもしろい同形語である。“仰天”は中国語でほとんど「人の意志的な動作」を表し、“仰天大笑”“仰天太息”“仰天顿足”“仰天叫屈”のように「自ら進んで、空を仰いで、胸の内を披歴する」場合が多い。“仰天跌倒”の使い方もあるが、「仰向けに倒れた」の意味はやはり日本語と違う。日本語の「仰天」は「驚いて天を仰ぐ」つまり「びっくりして、腰を抜かして、地面に座った時、受身的に空を仰ぐ。」意味である。単独で使われる場合が少なく、「びっくり仰天」のように使われるのは一般的である。また、最近は名詞の修飾語として形容動詞的に使われている「仰天ニュース」「仰天エピソード」などがよく見られる。
“香油”と「香油」は「においのよい油」の意味で通じているが、用途が違う。“香油”は食用の「ゴマ油」を指し、「香油」は「毛髪などにつける、においのよい油。」を意味する。
“耐性”は「忍耐強い性格」「根気」「忍耐力」を指し、古くから使われてきた。日本語の「耐性」は「一般に、環境条件や化学物質などに対する抵抗性。特に、薬物などに対して生物が示す抵抗性。抗生物質に対する細菌の抵抗力など。」を指し、比較的新しい言葉である。“耐性”は人に使われるのに対して、日本語の「耐性」は人ではなく、生物や菌類に用いられる。
“独女”は中国語で「一人っ子としての娘」を意味し、「箱入り娘」のイメージが強いが、日本語では最近できた言葉で、「独身女性」を意味している。
“发毛”は「身の毛よだつ」「ぞっとする」を意味するが、日本語では「発毛」は「髪の毛が生えること」を意味している。
“感染力”と「感染力」は語構成が同じであるが、“感染”と「感染」の意味が違うので、同形語の意味が異なっている。“感染”は「感染する」「うつる」のほかに「(言葉や行為によって)影響する」「感化する」意味がある。“感染力”は「感化力」「影響力」を指し、特に「人の感情を高ぶらせる力」「人に共鳴させる力」を意味する。日本語の「感染力」は「病気やウイルスが伝染する力」の意味を表す。
“老废物”は“老+废物”の語構成で、「老廃物」は「老廃+物」の語構成である。“废物”は「役立たないもの」だけでなく、比喩的に「役立たない人」にも使われたので、“老废物”は「役立たない老人」をののしる言葉で、《红楼梦》(45)に既に使われている。一方、日本語では「老廃」が「物」を修飾しているので、人の意味がなく、「物質代謝によって生じ、体外に排出される物質。」を意味する。
4.9 発音による違い
多音字と多音語は中国語と日本語にともに大量に存在している。二種類以上の読み方を持っている同形語も少なくない。多くの場合、発音や読み方が変わると、意味も異なってくる。以下日本語と中国語に分けて見ていく。
4.9.1 日本語で二つ以上の読み方がある言葉
日本語で二つ以上の読み方がある同形語は次の言葉が挙げられる。
頭数 熱湯 新手 菖蒲 一時 一度 市場 一味 一方
上下 黄金 大勢 大手 大家 男女 音色 風車 寒気
顔色 気質 気色 国境 好事 工場 降伏 戸口 小人
小屋 声色 声音 作物 下手 十分 祝詞 地力 白馬
人事 人気 心中 人体 生魚 成敗 生物 旋風 宝物
中日 帳面 梅雨 天火 同行 特種 床 床板 熱気
分別 牧場 末期 目下 真面目(46)
読み方そのものが日本語習得時の難点になっているものが少なくない。そのうえ、読み方によって、日本語での意味が微妙に違うので、中日同形語の対応関係の複雑さを増している。例えば、「頭数」は「とうすう」と読む場合、中国語と同じ意味であるが、「あたまかず」と読む場合、人の数を数えることができるのは中国語にない意味である。
「一味」は「いちみ」と読むとき、「仏説は時と所に応じて多様であるが、その本旨は同一であること。」「事または理の平等をいう。」「味方すること。また、その人々。仲間。同志。現代では、特に悪事の集団にいう。」「漢方で薬種の一品。」「独特の味わいがあること。」などの意味を表すが、「ひとあじ」と読む場合、「ちょっとした味。微妙な味加減。」の意味を表す。中国語では読み方が「yīwèi」だけで、「漢方薬の一種類」と副詞としての「一筋に」「ひたすら」の意味を表す。
二つの読み方があるが、意味用法に違いがない言葉の例として、次のものが挙げられる。
下半期 黒土 塩水 海辺 乳房 頭蓋骨 馬糞(47)
4.9.2 中国語で二つ以上の読み方がある同形語
中国語の多音同形語の特徴として四声の違いによるものが多数を占めていることが挙げられる。四声だけが違う言葉は次の例が挙げられる。
大方 大人 大意 地道 地方 地下 東西 多少 幹事
告訴 好事 教授 精神 妻子 傾倒 人家 外面 下水
丈夫(48)
ある字の発音が全く違う同形語の例として次の言葉が挙げられる。
便宜 空调 口角 同行
「便宜」は日本語で「べんぎ」と読まれ、「ある事をするのに都合のよいこと。便利なこと。また、そのおり。」「適宜の処置。」を指すが、中国語での“便宜”は「biàn yí」と読む場合、「適宜である。都合がよい。」を指すが、「pián yi」と読む場合、形容詞としては、「値段が安い」を、名詞としては「(手に入れるべきでない)得」「利益」、他動詞としては「(相手に)得をさせる。」を表す。もともと意味が多い「pián yi」に「biàn yí」が加わると、日本語との関係がもっと複雑化してしまう。
「同行」は日本語でも「どうぎょう」と「どうこう」の二つの読み方があるので、中国語との対応関係が非常に複雑である。日本語で「どうぎょう」と読むときは名詞だけで、「共に行くこと。また、その人。」「相伴って神仏に参詣する人々。巡礼者の道づれ。」「文章また五十音図などの同じ行。」などを意味するが、「どうこう」と読むときは名詞とサ変自他動詞で、「連れだって一緒に行くこと。また、その人。道連れ。」を意味する。“同行”は「tóng háng」と読む場合、動詞としての「同じ職業に就いている」と名詞としての「同業者」を意味し、「tóng xíng」と読む場合、自動詞として「一緒に行く」「同行する」意味を表す。日本語の「どうこう」は「部下を同行する」のようなサ変他動詞の用法があるので、注意が必要である。
“空调”はkōng tiáoと読むとき、日本語の「空調」と同じく「空気調節の略。エア‐コンディショニング。」を意味するが、kōng diàoと読むとき、「空路を通して調達し輸送する」「空輸する」意味を表す。
5. まとめ
中日同形語が形成された最大の要因はお互いの借用関係にあるが、偶然の一致や日本語での当て字の使用も無視できないことがわかった。
中日同形語の語義相違の要因はいろいろあるが、根本的な要因は「環境の違い」と「漢字の意味の多様性」と「漢字の造語力の違い」にあると思われる。環境的な要因として、「自然環境や人文環境の違い」「政治制度の違い」「言語政策」「科学技術(例えば、デジタル技術やインターネットなど)の発展」「外来文化(特に欧米文化)の影響」などが挙げられる。それらによって、基本的な語彙と発音が誕生したり、偶然の一致が生じたり、語義や品詞性などの意味用法が変化したりした。言語間の翻訳や借用のとき、意味用法が固定されやすいが、同形語の意味の特化は日本語の表記の多様性にも関係していると思われる。中国語で一つの言葉で賄うことができるのに、日本語では「和語」「漢語」「外来語」の多種類の語彙で使い分けられている。例えば、“中心”は日本語で「中心」のほかに「センター」があり、“压力”は日本語の「圧力」「プレッシャー」「ストレス」などに対応している。“精神”は日本語との対応関係が非常に複雑である。中国語の“精神”の意味を含意する言葉は多くある。例えば、「精神」の他に「意気」「気」「気分」「気持ち」「気力」「元気」「心」「エートス」「カタルシス」「ストレス」「スピリット」「スランプ」「トラウマ」「プレッシャー」「マインドコントロール」「メンタリティー」「メンタル」などのたくさんの言葉は中国語に翻訳されるとき、“精神”が使える。したがって、中国語の“精神”を日本語に翻訳するのはなかなか難しいであろう。
またもともとののしり言葉の少ない日本語が相手の気持ちに配慮するぼかし表現の多用と婉曲化によって、言葉の含意と重みにずれが生じた。それも中国語母語話者にとって大きな壁になるだろう。
言葉は環境の変化とともに変わっていくだろう。特にテレビやインターネットなどのメディアの影響は計り知れない。有名人の影響(例えば、芸能人や政治家など)、言語学者、日本語教師などの影響力も無視できないだろう。
注
(1)潘钧(1995)は同形語語義の違いの要因を次のように分類している。
Ⅰ、词义本身发生变化导致词义分歧
(1)词义的比喻转用和俗用性转用
(2)借用导致词义的特定化
(3)词义分化及借用时间上的先后差异导致词义发生变化。
(4)社会生活的变迁对词义的影响
Ⅱ、由于词义变化以外的因素导致词义分歧
(1)词构成不同导致歧义
(2)古代汉语词义还保留在一国的词语里
(3)读音不同词义也随之改变
(4)同音汉字的转写导致歧义
(5)词素意义不同导致歧义
(6)国情制度文化,社会诸背景不同导致词义不同
(7)字训(字义)不同导致歧义
(2)潘钧(1995)は次の言葉を挙げている。
市場 暖流 死角 細胞 対象 前線 道具 敷衍 検討 人選 激動
顔色 分配 高潮 作物 大家 悪女 了解 老婆 洋行 正月 警官
(3)“偏正结构”とは「修飾構造」である。語を構成する成分に地位の差があり、前の成分が後の中心成分を修飾するのは一般的な構成である。例えば、「洋酒」「国旗」は「N+N」の、「美人」「暖流」「高学歴」は「A+N」、「握力」「産婦」は「V+N」の修飾構造の複合語である。「人選」は日本語の文法の語順によって構成された言葉である。中国語では「N+V」であとのVが前のNを修飾するのは他に見ない現象である。
(4)「人選」の意味の説明は『広辞苑』を参照した。以下、中日同形語の日本語の説明について、注を含めて、出典を示さなければ、『広辞苑』を参照する。
(5)一部の中日同形語の語義の違いを次に紹介する。
石头 shítou 石。
石頭 いしあたま
①石のようにかたい頭。
②考え方がかたくて融通のきかないこと。また、そういう人。
怪人 guài ren 変わった人。
怪人 かいじん 正体の分からない、怪しい人。 『明鏡国語辞典』
街道 jiēdào 大通り。街路 。
街道 かいどう 各都市間を結ぶ主要道路。
狂言 kuáng yán 誇大妄想の話。大言壮語。
狂言 きょうげん
①道理にかなわない言葉。
②戯れに言う言葉。ざれごと。
③科白と劇的行動を伴う芸能。歌舞中心の能·踊などに対する。例外
に壬生狂言のような無言劇もある。
④能狂言。猿楽の笑いの要素を洗練した科白劇。
⑤歌舞伎狂言。歌舞伎劇の演目。また、劇そのもの。
⑥うそのことを仕組んで人をだます行為。
激怒 jīnù (他動詞で)怒らせる。
激怒 げきど 激しく怒ること。
激动 jīdòng
①[形](感動·感激して)心が揺り動かされている。
②[動]感動させる。心を動かす。 講談社『中日辞典』
激動 げきどう 激しくゆれ動くこと。
行乐 xíng lè 楽しいことを行う。楽しいことをして遊ぶ。楽しむ。
講談社『中日辞典』
行楽 こうらく 野や山に出かけて楽しみ遊ぶこと。
失职 shīzhí 職責を果たさない。 (笔者)
失職 しっしょく ①それまでの職を失うこと。失業。②職務上の失策。
社长 shèzhǎng 旅行社·通信社·出版社などの長。 (笔者)
社長 しゃちょう ①社団などの長。会社の最高責任者。②他人を親し
み、または、からかって呼ぶ称。
出头 chūtóu (1)苦境から脱する。日の目を見る。(2)ぬきんでて優
れる。(3)顔を出す。(4)(数量がある整数を超えて)端数が出る。
(1)(3)(4)は講談社『中日辞典』、(2)は筆者。
出頭 しゅっとう 本人自ら、ある場所、特に役所など公の場に出向く
こと。
进水 jìn shuǐ 水が入る。 (笔者)
進水 しんすい 新しく建造した艦船を造船台から滑らせて水上に浮か
ばせること。
走路 zǒu lù (1)道を歩く。(2)去る。立ち去る。 講談社『中日辞典』
走路 そうろ 競走の路。コース。
带出 dài chu ①人を連れ出す。②育て上げる。③芋づる式に出る。
(笔者)
帯出 たいしゅつ 備品·書籍などを、身につけて外に持ち出すこと。
手心 shǒu xīn ①手のひら。たなごころ。②支配下。手中。
講談社『中日辞典』
手心 てごころ 手もとに残っている感じ。身についたわざ。転じて、事
情に応じて物事を程よくあんばいすること。また、寛大な取扱いをするこ
と。手加減。
铁腕 tiěwàn (1)強力な手腕 (2)強力な統治。 講談社『中日辞典』
鉄腕 てつわん 人並はずれて働く、鉄のように強い腕。
手袋 shǒu dài [名][方](多く女性用の)ハンドバッグ。
講談社『中日辞典』
手袋 てぶくろ 寒さや汚れ?外傷を防ぐため、また盛装のために手には
める袋状のもの。手套。
天井 tiān jǐng (四方を建物で囲まれた)空き地。 (笔者)
天井 てんじょう
①室内の上部の小屋組または床組を隠すために張った板壁。組入天井
·小組格天井·竿縁天井·鏡天井などがある。洋式では漆喰塗が普通。
②物の内部の最も高い所。
③相場の最高値。
难听 nántīng [形]
①(音声が)耳障りである。聞くに耐えない。
②(言葉が粗野で)聞き苦しい。聞くに耐えない。
③外聞が悪い。世間体が悪い。 講談社『中日辞典』
難聴 なんちょう 聴覚が低下し、音や声がよく聞こえないこと。
入手 rùshǒu (~に)手を入れる。着手する。手をつける。始める。
(笔者)
入手 にゅうしゅ 自分の手に入れること。物を受け取ること。落手。
发案 fāàn [動]事件が起きる。 講談社『中日辞典』
発案 はつあん
①(計画などを)新しく考え出すこと。「―者」
②議案を提出すること。ほつあん。
平手 píng shǒu 引き分け。 講談社『中日辞典』
平手 ひらて ①平らに開いた手。②将棋で、駒落ちでない、双方が互角の手合。
毛头 máo tóu 未成年の男子。男の子。子供。 (笔者)
毛頭 もうとう (多く下に打消の語を伴って)毛の先ほども。少しも。いささかも。
满床 mǎn chuáng ベッドいっぱい。ベッドに満ちる。 (笔者)
満床 まんしょう 病院で、入院患者用のベッドがすべてふさがっていること。
满车 mǎn chē バスやトラックなどの車にいっぱい入っている。(笔者)
満車 まんしゃ 駐車場が車両でいっぱいでこれ以上駐車できる余地のないこと。
床上 chuáng shang ベッド。ベッドの上。 (笔者)
床上 ゆかうえ 床の上。
床下 chuáng xià ベッドの下。 (笔者)
床下 ゆかした 床の下。縁の下。
要员 yào yuán 要人。 講談社『中日辞典』
要員 よういん ある物事のために必要な人員。
立案 lìàn (1)登録する。登記する。
(2)〈法〉立件する。
(3)事件や重要な出来事について専門の調査機関を設ける。
講談社『中日辞典』
立案 りつあん 案を立てること。草案を作ること。計画を立てること。
女性问题 nǚxìng wèn tí 女性の悩ましい病気。婦人病。 (笔者)
女性問題 じょせいもんだい
①社会機構によって生じた女性の差別、抑圧、疎外などの問題の総称。
②男性の浮気問題。 (笔者)
(6)「落花流水」について詳しくは拙論の「中日同形語の『落花流水』考」を参照。
(7)詳しくは第十章に述べている。
(8)中国語の発音のアルファベット順で並べておく。
安乐死 包装 冰点 剥离 不可抗力
不作为 财产保全 长考 充电 处方药
低迷 低调 低层住宅 地价 第三者
断层 对决 恶评 二次污染 法律援助
放电 放水 访问 孵化 富营养化
干细胞 干细胞移植 高层住宅 高尚 个人所得税
个展 公示 公选 构想 骨髓移植
观照 光污染 国家公务员 国家赔偿 国税
国有企业 国有资产 过劳死 核扩散 环境难民
环境权 火 加盟 家庭暴力 解读
禁渔 精算 空港 口蹄疫 酷评
理念 量贩店 流动人口 隆鼻 卖场
美容 目标管理 内需 尿检 漂流
品位 旗舰 旗舰店 前卫 全天候
缺席判决 强暴 倾斜 热线 热污染
人气 认知科学 融资 入场券 软着陆
沙漠化 煽情 商机 商圈 商战
生存权 生态科学 生态农业 生物多样性 圣火
失业保险 湿地 食品安全 视点 视界
室内环境 室内空气污染瘦身 特卖 特殊教育
特质 透明度 透析 外需 外援
物流 物语 物权 现代农业 消费税
消化 肖像权 写真 新锐 新生代
研修 眼球 演绎 阳光 硬着陆
有机食品 再生资源 造血 增幅 蒸发
整合 知名度 志愿者 直击 著作权
最爱 作为
(9)「放水」「訪問」「火」「品位」「透析」「消化」「演繹」などの語義を次に紹介する。包装 ほうそう
①品物などをつつむこと。また、そのうわづつみ。「―紙」
②輸送·保管のために、種々の資材を用いて品物を保護すること。荷造り。 『明鏡国語辞典』
包装 bāo zhuāng (1)日本語の①と同じ意味を表す。
(2)比喻对人或事物的形象给予装扮、美化,使更具有吸引力或商业价值。
《新华新词语词典》
[喩]装飾を施す。イメージ作りをする。外見。装い。
氷点 ひょうてん
水が氷結しようとし、あるいは氷が融解しようとする温度。水の凝固
点。1気圧の下ではセ氏0度。
冰点 bīng diǎn
原指水的凝固温度。新义:比喻不引人关注,受到冷落的事物或方面。相对于“热点”。 《新华新词语词典》
もともと日本語の「氷点」と同じ意味である。「注目されずに、冷遇されている物事」を喩える意味が加わった。
剥離 はくり
はぎはなすこと。はがれはなれること。
剥离 bōlí原指组织、皮层、覆盖物等脱离,分开。新义:比喻企事业单位精简机构、调整职能,将富余人员分流出去,将某些职能转移出去。
《新华新词语词典》
もともと日本語と同じく「組織、表皮、覆いなどがはがれはなれる」「歯切れ話す」意味を表したが、「企業と事業体がリストラを実施し、余った人員を他の部門に異動させ、一部分の職能も移管する。」という新しい意味が加わった。
低調 ていちょう
①調子が低いこと。内容が充実していないこと。
②十分に調子の出ていないこと。盛り上がりに欠けること。低调 dīdiào
[名]やわらかい論調。沈んだ口調。
[形]控えめだ。遠慮気味だ。謙虚だ。
原指低的调门儿。新义:比喻处事、为人低姿态,不张扬的作风。「低調」は「低い調子」の名詞から形容詞化した。日本語では「調子が低いこと」と理解されているので、語の重心が「調」ではなく、「低」にあることが分かる。中国語では「低」が「調」を修飾しているので、語の重心が「調」にある。放水 ほうすい
①を流し出すこと。②水を勢いよく出して遠くへ飛ばすこと。放水 fàng shuǐ[動]
在多轮体育比赛中,参赛者违反体育道德而串通作弊,人为地控制或改变比赛结果,使其中的一方或第三方受益。 《新华新词语词典》もともとは灌漑や疎水や敵に対する攻撃など様々な目的で「水を高いところから低いところへ流す」意味を表したが、最近の「(スポーツの試合で)八百長をする」意味が加わった。
訪問 ほうもん
人をたずねること。おとない問うこと。
访问 fǎng wèn
原指有目的地去看望、拜访。新义:对网络上特定的资源对象进行查看、浏览。 《新华新词语词典》
もともと日本語と同じ意味を表したが、「サイトを訪問する」「アクセスする」意味が加わった。日本語でもこの意味用法が増やされた。
孵化 ふか 発生中の胚が卵膜または卵殻を破って外に出ること。卵がかえること。また、卵をかえすこと。
孵化 fūhuà 孵化する。
新义:比喻培育、培养,使发展出新事物。 《新华新词语词典》
育成する。扶植する。新しい事物を誕生させる。高尚 こうしょう
学問·言行などの程度が高く、上品なこと。
高尚 gāo shàng [形]
(1)気高くて立派である。崇高である。(2)高尚である。
講談社『中日辞典』
新义:住宅等高雅时尚。 《新华新词语词典》
住宅などが高級で、モダンである。火 huǒ 中国語での“火”はもともと名詞と動詞で、日本語より意味が多かったが、最近また形容詞化して、“兴旺(盛んである)”“受欢迎(人気がある)”などの意味を表すようになった。例えば、
生意很火/商売が繁盛している。
很火的一个视频/非常に人気のある動画。アクセスが殺到する動画。解読 かいどく
①解釈しながら読むこと。
②普通には読めない文章·暗号などを読み解くこと。「古代文字の―」解读 jiědú
中国語の“解读”はもともと日本語と同じ意味だったが、最近「自分に有利な情報を得るために分析する。」「自分のこれからの行動の参考になるために政府の政策に関する書類などを理解する」意味が増やされた。
解读美国就业数据/アメリカ就職データを分析する (例文と訳は筆者)
解读中央1号文件/中央政府第1号文書を理解する (例文と訳は筆者)
精算 せいさん
金額などを細かに計算すること。また、計算して過不足などを処理すること。
乗り越し料金を精算する/补车费
精算 jīng suàn
运用数学、统计、会计等方面的知识和多种金融工具对经济活动进行计算、分析和预测。 《新华新词语词典》数学、統計学、会計学など多方面の知識と各種の金融道具を用いて経済活動に対する計算、分析、予測などを行う。主に保険業、各種の保障業務に用いる。例えば、保険料率や保険金額を算出する。
(《现代汉语词典》の解釈を訳した。)
漂流 ひょうりゅう
①海上·水上をただよい流れること。「―記」
②あてもなくさすらい歩くこと。
漂流 piāo liú もともと日本語と同じ「漂流する」「さすらい歩く」意味を表していたが、最近「ラフティング」の意味が増やされた。
品位 ひんい
①人に自然にそなわっている人格的価値。ひん。品格。「―を欠く」「―の無い人」
②金銀の地金または金銀貨に含まれる金および銀の割合。
③鉱石中に含まれる有用成分の割合。品位 pǐn wèi
“指人的修养层次、物品质量或文艺作品的水平等。” 《新华新词语词典》
日本語の②③のほかに、「官吏の等級」の意味もあった。最近は日本語の
①と同じ意味が使われ、更に物の品質や文芸作品のレベルをも指すようになった。
傾斜 けいしゃ
①かたむいて斜めになること。また、その度合。かたむくこと。かたむき。
②心などが一定の方向に引きよせられること。
③〔地〕地層面などと水平面との角度。クリノメーターで測定する。勾
配。傾斜角。
倾斜 qīng xié 原指歪斜。新义:比喻对某一方面有所偏重和支持。
《新华新词语词典》
もともと「傾く」を意味して、比喩的に「悪い方向に傾く」使い方もあっ
た。今は政策や制度が積極的にある方面に重点を置き、サポートする。入場券 にゅうじょうけん
会場·式場·競技場などに入るための切符。鉄道駅に入るための入場券もある。
入场券 rùchǎng quàn [名]
日本語の「入場券」の普通の意味と同じであったが、最近「(スポーツの世界大会や決勝戦への)出場権」のも指すようになった。例えば、
获得奥运会入场券/五輪への切符をつかむ。
中国男篮夺得奥运会入场券不成问题/中国男子バスケが五輪への出場は問題がない。
特殊教育 とくしゅきょういく
「特別支援教育」の意味を表す。種々の障害のある児童·生徒に、その種類·程度に応じた支援を行う教育。2006年学校教育法等の改正により特殊教育から改称。障害児教育。
特殊教育 tèshūjiào yù
狭義の“特殊教育”は日本語と同じ意味であるが、広義の“特殊教育”は天才や不良少年に対する教育も含む。
透明度 とうめいど
湖や海の水の透明さを表す値。直径約30ヤソチメトルの白色円板などを水中に沈めて、見えなくなる深さで示す。日本語でも「政治の透明度」のように比喩的に使われている。
透明度 tòu míng dù [名]
日本語の「透明度」と同じ意味を表すが、ただ中国語の自然環境の影響で、具体的な意味の「湖や海の水の透明さ」があまり使われない。その代わり、翡翠などの鉱物ガラスなどの材料によく使われる。もっともよく使われるのは比喩的な意味である。
提高上市公司的管理水平和财务透明度/上場会社の管理水準と財務の透明度を高める。
增强了司法活动透明度/司法活動の透明度を増した。
增加税费征收透明度/税金徴収の透明度を高める。 (例と訳文は筆者)透析 とうせき (dialysis)
①硫酸紙·セロファン膜·コロジオン膜などの半透膜がコロイド粒子を通さず、通常の分子およびイオンを通過させる性質を利用して、コロイド溶液を精製する方法。
②人工透析の略。
透析 tòu xī[動] (1)「透析する」 (2)徹底的に分析する。
講談社『中日辞典』
(1)の意味は日本語と同じであるが、(2)が最近新しく誕生した意味である。(1)と(2)の語構成が違う。(1)は「V+V」の連合構造で、(2)は「A+V」の修飾構造である。消化 しょうか
①[周書蘇綽伝]物が消えうせて変化すること。原形をなくして変化させること。
②〔生〕(digestion)栄養物質を、細胞によって利用し得る単純な形態に変化させる過
程。脊椎動物では消化管内で消化液の分泌により行われる。細胞外消化。
③転じて、読みまたは聴いた説などを十分に理解して自分の真の知識とすること。
④処理すべき事物を残らず始末すること。「日程を―する」「売物を―する」
消化 xiāo huà
日本語の②③と同じであるが、①の意味が使わなくなった。④の意味がない。最近「あまった労働力を配置する」「不安材料を克服する」「滞った商品を販売する」などの意味が増えた。
新生代 しんせいだい
(Cenozoic Era)地質年代の一つ。最も新しい時代で、約6500万年前から現在に至る。
哺乳類·顕花植物が最も著しい発達を遂げ、アルプス·ヒマラヤ·アンデスなどの大山脈が形成された。→地質年代(表)新生代 xīn shēng dài
日本語の意味に、「ニュージェネレーション。新しい世代。」の意味が増えた。
眼球 がんきゅう
脊椎動物の視覚器。球形で、眼窩がんか内にあり、外には強膜·角膜、中間に脈絡膜·毛様体および虹彩こうさい、内に網膜の3層から成り、その内部に水晶体および硝子体などを含む。眼球の周囲に付着している眼筋によって運動する。光線は透明な角膜を通り、虹彩のかこむ瞳孔を経て内部に入る。水晶体はレンズの働きをし、網膜に像が映り、視神経を経て大脳に伝えられる。めだま。→水晶体→虹彩→瞳孔。
眼球 yǎnqiú
基本義は日本語と同じであるが、最近「注意力」という新しい意味が生まれた。例えば、“五一特价”之类的促销手段,自然吸引了很多市民的眼球/「メーデー特価」のようなセール手段は、当然多くの市民の視線を引きつけた。“眼球经济”は新しい言葉で、“注意力经济”とも呼ばれ、「人々の注意力を利用する経済活動」の意味である。
演繹 えんえき
①[朱熹、中庸章句序]意義を推し拡げて説明すること。
②(deduction)推論の一種。一定の前提から論理規則に基づいて必然的に結論を導き出すこと。通常は普遍的命題(公理)から個別的命題(定理)を導く形をとる。数学の証明はその典型。演繹法。
演绎 yǎnyì
日本語の意味の他に、「演出する」「繰り広げる」「発揮する」「表現する」「描き出す」などの意味が増やされた。
陽光 ようこう
①太陽の光。「―を浴びる」
②真空放電の際、二つの電極の中央付近にあらわれる美しい光芒。
阳光 yángguāng
(1)[名]日光。陽光。
阳光充足的房间/日当たりのよい部屋。
(2)[形]陽気である。明朗快活である。青春の活力に満ちた。
我们很阳光/われわれは青春の活力に満ちている。 (例と訳文は筆者)
(3)公開されている。透明である。明朗である。
阳光工程/腐敗のない工事 (例と訳文は筆者)
阳光交易/不正のない交易 (例と訳文は筆者)
阳光工资/明細が記録された公務員の給料 (例と訳文は筆者)
講談社『中日辞典』
増幅 ぞうふく
①振幅を増加させること。
②振動電流または電圧の振幅を増加させて大きいエネルギーの振動とすること。
③比喩的に、物事の程度を強め大きくすること。「うわさが不安を―する」
增幅 zēngfú [名]増加幅。
“增幅”は最近頻繁に使わるようになった新語である。中国語では名詞だけで、日本語では名詞とサ変他動詞なので、双方の意味用法の違いに注意する必要がある。
整合 せいごう (consistence)
①ととのい一致すること。きちんと合わせること。
②理論の内容に矛盾がないこと。〈哲学字彙初版〉
③〔地〕(conformity)二つ以上の地層が平行に連続的に堆積しており、その間に時間間隙がないと考えられる状態。
④〔電〕(matching)二つの異なる電気回路を接続して電力を送る場合、回路を適当な条件にすると最大の電力を送ることができる。このとき二つの回路が互いに整合しているという。また、接続点で反射波の発生しない条件を満たすことをいう場合もある。
整合 zhěnghé ばらばらの物事を整理し統合する。整理再編する。
整合产业链/産業リンケージを整理再編する。
整合内部机构,提高工作效率/内部の機関を再編し、仕事の能率を高める。
加快整合流通网络/流通ネットの統合再編を加速する。
(例と訳文は筆者)
志願者 しがんしゃ
あるものになることを望み、進んで申し出る人。特に上級の学校への進学を志望する生徒や学生を指す。(筆者のまとめ)
志愿者 zhìyuànzhě ボランティア。
日本語では進学する時希望する進学先は「第一志望」「第二志望」と言うが、中国語では“第一志愿”“第二志愿”などと言う。の意味はむしろ、中国語の“志愿”と一致している。“志愿”と「志願する」は同じ意味なのに、「志願者」と“志愿者”の意味が異なるのはユニークな現象である。
最愛 さいあい
①最も深く愛すること。「―の品」
②特に男女が親しみむつぶこと。「―の妻」
最爱 zuìài [名]最愛の人や物。一番のお気に入り。講談社『中日辞典』日本語の「最愛」と中国語の“最爱”はともに名詞であるが、日本語では「愛すること」を意味し、中国語では「愛する対象」を表す。中国語での「動詞からの名詞化」である。
(10)潘钧(1995)の原文は次のとおりである。
一般而言,当某个词作为外来词进入到另一国(种)语言当中时,其词义会由于种种因素而受到一定程度的限定乃至特定。 p21
(11)“修”が“兴建;建造”を意味する用例として、次のものが挙げられる。
钟鼓不修。——《吕氏春秋·先已》
乃重修岳阳楼。——宋·范仲淹《岳阳楼记》
修堤梁,通沟浍。——《荀子·王制》
http://tool.httpcN.com/Html/Zi/21/PWAZILTBPWILFEE.shtml
(12)“汤”の「スープ」の意味について、第六章「中日同根語」.(p260)を参照されたい。
(13)王力(2004)の原文は次のとおりである。
由於中蘇文化的交流,漢語也吸收了一些俄語所特有的詞語。例如我們常說的“基本上”是由俄語的BOCHOBOM來的。我們又說“嚴重的任務”,這“嚴重”也是從俄語的Серъзный來的①。 《漢語史稿》p611注の原文は次の通りである。
①俄語Серъзный一詞,有時應譯爲“嚴重”,有時應譯爲“重大”或“重要”。“嚴重的任務”本來只是“重大的任務”的意思,由于“嚴重”和“重大”在俄語裏同用一個詞,所以譯者把它們混同了。假使不受俄語的影響,這種混同就不會産生。譯文對漢語的影響是大的。不論在好的方面和壞的方面都是如此。 《漢語史稿》p611
(14)李大钊(1889—1927)は中国共産党の初期の指導者で、日本の早稲田大学に留学したことがあるが、ロシアのプロレタリア革命の影響を強く受けていた。
(15)『日本国語大辞典』は「婚期」について次のように説明している。婚期【こん-き】〔名〕結婚をするのにふさわしい年ごろ。結婚適齢期。*改訂増補哲学字彙〔1884〕「Puberty婚期」
(16)仏教の典籍に「破門」という言葉が確認されなかった。『日本国語大辞典』は次のように説明している。
①師が弟子に対して、その弟子であるという関係を断ち、門人の列から除くこと。門人を除名すること。*歌舞伎·幼稚子敵討〔1753〕六「向後はもん致て其元の弟子に成ませう」
*雑俳·滑稽発句類題集〔1817~31〕上「三味の弟子破門の分は師をくどき」
*ヰタ·セクスアリス〔1909〕〈森鴎外〉「これが若し琴を以て身を立てようとする人であったら、師匠に破門せられて、別に一流を起すといふ質(たち)かも知れない」
②信徒を宗門から除名すること。
*奉教人の死〔1918〕〈芥川龍之介〉一「『ろおれんぞ』が破門されると間もなく」
*袖珍新聞語辞典〔1919〕〈竹内猷郎〉「破門Excommunication教会より除名すること」
③こわれた門。
*羅-送張逸人詩「牀頭残薬鼠偸尽、渓上破門風擺斜」
④植物「からだいおう(唐大黄)」の異名。
*重訂本草綱目啓蒙〔1847〕一三·毒草「大黄〈略〉破門〔和方書〕」
(17)中国古籍全录で検索した結果、明より前の用例が確認されなかったし、明の時代の用例は全部「ひそかにわなをしかけて、人を殺害したり陥れたりしようとする」意味で用いられている。
(18)“新闻”について、唐より前の時代の用例が確認されなかった。
《汉语大词典》は次のように説明している。
(1)新近听来的事。社会上新近发生的事情。
旧业久抛耕钓侣,新闻多说战争功。唐·李咸用《春日喜逢乡人刘松》诗(2)新知识。新闻妙无多,旧学闲可束。
宋·苏轼《次韵高要令刘湜峡山寺见寄》
(3)宋时指有别于正式朝报的 小报。
朝报,日出事宜也。每日门下后省编定,请给事叛报,方行下都进奏院报
行天下。其有所谓内探、省探、衙探之类,皆衷私小报,率有漏泄之禁,故
隐而号之曰新闻。 宋·赵昇《朝野类要·文书》
(19)『日本国語大辞典』の《漢書》の用例は次のとおりである。
*漢書-循吏伝序「二千石有治理效、輙以璽書、勉厲、増秩賜金」
「輙以璽書、勉厲」の「、」を取り、「輙以璽書勉厲」と読まなければならない。 清百一居士《壶天录》卷下
(20)「競走」「快走」の中日の違いは次のとおりである。
竞走 jìngzǒu [名]競歩。 講談社『中日辞典』
競走 きょうそう 一定距離を走って速さを競うこと。陸上競技の一つ。はしりくらべ。また、車についてもいう。「障害物―」「自転車―」
快走 kuàizǒu 話し言葉で、相手に早く歩くように催促したり、早く逃げるように勧めたりする場合、使われる。(筆者のまとめ)
快走 かいそう 気持よいほど速く走ること。「ヨットが沖を―する」
(21)「蟻走感」とは「皮膚の表面に蟻ありが這っているように感じる異常感覚。
知覚神経刺激症状で、神経疾患の際に見られる。」
(22)“瓦解”について、《汉语大词典》は次のように説明している。
(1)瓦片碎裂。比喻崩溃或分裂、分离。(2)谓使对方的力量崩溃。
(2)の用例として筆者は次の例を挙げたい。
运用分化瓦解、各个击破之策。 『ccl语料库』分裂瓦解させ、各個撃破する策を用いる。(笔者译)(23)『明治のことば辞典』p272
(24)“出纳”“会计”“经理”“同道”“同调”の中日の違いを以下に紹介する。
出纳 chūnà [名] (1)出納。(2)出納係。(3)広く、物品の出し入れをする仕事。 講談社『中日辞典』
出納 すいとう
①出すことと入れること。だしいれ。すいのう。しゅつのう。
②金銭または物品の収入と支出。「―係」
③蔵人所に属し、財物·文書の出納などをつかさどった職。
会计 kuàijì 会計業務。会計
kuàiji 会計係。 講談社『中日辞典』
会計 かいけい (「会」は総勘定、「計」はかぞえる意)
①金銭·物品の出納の記録·計算·管理。また、その担当者。
②企業の財政状態と経営成績を取引記録に基づいて明らかにし、その結果を報告する一連の手続。また、その技術や制度。企業会計。
③官庁組織の単年度の収支を予算との対比で把握する予算決算。また、その技術·制度·単位。官庁会計。
④飲食店などで代金を勘定して支払うこと。「お—」经理 jīnglǐ [動]経営する。[名]企業の経営者·管理責任者。
講談社『中日辞典』
経理 けいり
①おさめととのえること。
②会計に関する事務。また、その処理。「―に明るい」「―部」
同道 tóngdào [動]同行する。
[名](1)志を同じくする人。(2)同一の職業の人。同業者。
講談社『中日辞典』
同道 どうどう
一緒に行くこと。同行。同伴。「部下を―する」「母に―する」
中国語の“同道”は自動詞で、日本語の「同道する」はサ変自他動詞なので、注意が必要である。
同调 tóngdiào [名][喩]志向や主張が同じ人。 講談社『中日辞典』
同調 どうちょう 名詞とサ変自動詞
①調子が同じであること。
②他と調子を合わせること。他人の主張に自分の意見を一致させること。
③機械的振動体または電気的振動回路などが、外部から与えられる振
動に共振するように、その固有振動数を調節すること。
(25)「芳心」「芳名」「紅顔」の中日での違いは次のとおりである。
芳心 fāngxīn [名]若い女性の心。女心。 講談社『中日辞典』
芳心 ほうしん 親切な心。また、親切をつくすこと。
芳名 fāngmíng (1)(女性に対して用いる)お名前。(2)よい評判。名声。 講談社『中日辞典』
芳名 ほうめい ①誉れのある名。よい評判。②他人の名の尊敬語。お名前。御氏名。
红颜 hóngyán 美人。 講談社『中日辞典』
紅顔 こうがん 女性の麗しい容貌。また、年若い頃の血色のつやつやした顔。
「―の美少年」
(26)『岩波国語辞典』は、「現役」について「ある社会で現に活動中のもの。」「「浪
人」(2)イに対し、在校中の者、または浪人せずに進学した者。」と解釈している。
『明鏡国語辞典』は、「現役」について「現在、ある地位や職に就いて活躍していること。また、その人。」「高校在学中に大学の入学試験を受ける者。◇受験浪人に対していう。」と説明している。
(27)《汉语大词典》の“女流”に関する説明は次のとおりである。
妇女;妇道人家。
今杭城有女流熊保保及后辈女童皆效此,说唱亦精。
宋·吴自牧《梦粱录·妓乐》
知县看他容貌不差,问道‘既是女流,为甚么不守闺范?’
《儒林外史》第四一回
家里只有我一个女流,你表弟年纪又小。 巴金《家》三二
(28)日本語の「火種」と中国語の“火种”の意味に違いがあるので、この三つの文は日本語に訳しにくい。しかし「火種?以外にふさわしい言葉もないので、敢えて「火種」を使うことにした。
节日的礼花点燃起我心中的火种/祝日の花火が私の希望の灯に火を付けてくれた。
奥运会圣火火种/オリンピック聖火の火種
革命的火种/革命の火種 (例と訳文は筆者)
(29)『岩波国語辞典』の解釈を引用した。
(30)李昉等.太平廣記.卷第六十八.江苏广陵古籍刻印社,1995,p138.徐視其衣並無縫。翰問之。謂翰曰。天衣本非針綫爲也。
(31)「北大」は「北海道大学」を意味するが、中国語では「北京大学」の略称である。「東大」は日本語では「東京大学」を意味するが中国語では南京にある「東南大学」か瀋陽にある「東北大学」の略称である。
(32)日本語では略語の意味以外に他の意味もあるが、ここでは問題にしないことにする。
(33)日本語だけでの略語ともとの言葉を次に並べておく。
(34)講談社『中日辞典』の説明は次のとおりである。
高扬 gāoyáng [動]
(1)高揚する。士气~/士気が高揚する。歌声~/歌声が響きわたる。
(2)高く評価する。称賛する。
昂扬 ángyáng [形](気持ちが)高揚するさま。(意気が)揚がるさま。
情绪~/気分が高揚する。
(35)“外面”“地下”“妻子”の読み方と意味は次のとおりである。
外面 wàimiàn [名]表面。見た目。見かけ。外見。
wàimian [名]外。外側。表。 講談社『中日辞典』
外面 がいめん 外部に向いた面。そと側。うわべ。うわつら。「―を飾る」
そとづら ①外側の面。がいめん。
②他人との応対·交際の時に見せる顔つきや態度。「―のよい人」
「wàimiàn」と読む場合、日本語の「外面(がいめん)」と同じ意味を表す。日本語の「外面(そとづら)」は「他人との応対?交際の時に見せる顔つきや態度。」という別の意味を持っているので、注意が必要である。
地下 dìxià [名]地下。[形]非合法の。地下の。
dìxia [名]地面。床(ゆか)。 講談社『中日辞典』
地下 ちか
①大地の下。「―街」「―に眠る」
②社会運動·政治運動などにおける非合法面。「―活動」「―出版物」
妻子 qīzǐ [名]妻と子供。妻子。
qīzi [名]妻。女房。 講談社『中日辞典』
妻子 さいし
①妻と子。つまこ。「―を養う」
②妻。源氏物語帚木「なつかしき―とうち頼まむに…恥かしくなん見え侍りし」
(36)『日本国語大辞典』は「妻子」について、「妻と子。妻児。つまこ。また、単に妻をいう。」と説明している。
(37)「急用」や「公用」などの同形語の意味の違いは次のとおりである。
急用 jíyòng 急に必要になる。急な物入りになる。講談社『中日辞典』
急用 きゅうよう 急ぎの用事。「―ができる」
公用 gōngyòng 共同で使用する。共用する。 講談社『中日辞典』
公用 こうよう
①国家や幕府·役所など公共の用務。また、勤務先などの、個人のものでない用事。浄瑠璃、丹波与作待夜の小室節「―勤める馬方が」。「―で出張する」
②国家や公共団体などが使用すること。「―の施設」私用 sīyòng もともとは「自分で使う」意味であったが、今は「横領する」「無断で使う」意味になった。 (笔者)私用 しよう ①個人的な用事。「―で出掛ける」 ②私事に使用すること。「―禁止」
商用 shāngyòng 商務に用いる。 講談社『中日辞典』
商用 しょうよう 商売上の用事。商売上に使うこと。「―で出掛ける」
所用 suǒyòng 熟語ではない。“所用的时间”“所用的方法”のように、後
の名詞を修飾し、「用いた」「用いられた」の意味を表す。 (笔者)
所用 しょよう
①用いること。用いるもの。②用向き。用事。「―があって欠席する」③入用。「―品」
俗用 súyòng 日本語の②と同じ意味である。 (笔者)
俗用 ぞくよう
①俗世間のわずらわしい雑事。俗事。
②本来の用法ではないが世間一般に慣用として許容されていること。
多用 duōyòng 複合語ではない。多く用いる。 (笔者)
多用 たよう
①用事の多いこと。いそがしいこと。多事。多端。「御―中恐縮ですが」
②多く用いること。「カタカナ語を―した文章」
他用 tāyòng 本来の目的以外のことに使用されること。 (笔者)
他用 たよう
①ほかの用事。「―で出かける」
②ほかのことに使用すること。他人に使用させること。「―に供する」
无用 wúyòng [形]役に立たない。 講談社『中日辞典』
無用 むよう
①役に立たないこと。必要でないこと。「―な食器」「心配―」
②してはならないこと。「天地―」「口外―」
③用事がないこと。「―の者入るべからず」
要用 yàoyòng 複合語ではない。用いようとする。使わなければならない。 (笔者)
要用 ようよう ①必要なこと。肝要。須要。②大切な用事。「右―のみ」
(38)「火気」「上火」「消火」「出火」「発火」の中日の違いは次のとおりである。
火气 huǒqì
(1)漢方理論では、人体の陰陽のバランスが崩れ、「陽」が「陰」より強い状態で血脈に伴う気(の流れ)。「のぼせ」とは違う。
(2)怒気。怒り。(笔者)
火気 かき ①火があること。火のけ。「―厳禁」 ②火の勢い。「―にあおられる」
上火 shànghuǒ
(1)人体の陰陽のバランスが崩れ、「陽」が「陰」より強い状態になる。
(2)怒る。かっとなる。 (笔者)
上火 うわび 料理あるいは菓子をオーブンなどで焼くとき、上方から当てる熱。
消火 xiāohuǒ “消火”は辞書に収録されていないが、日常的に使われている。「人体の陰陽のバランスがとれるようにする」。ただ、“消火栓”は「消火栓」と同じ意味である。 (笔者)
消火 しょうか 火を消すこと。特に、火災を消すこと。「―にあたる」
出火 chūhuǒ 「火起こし」「性欲を発散する」意味があったが、今「怒りだす」意味が残っている。 (笔者)
出火 しゅっか 火事を出すこと。火災をおこすこと。「2階から―する」「―原因」
发火 fāhuǒ
(1)怒りだす。かっとなる。かんしゃくを起こす。
(2)(弾丸が点火されて)爆発する。発射する。
(3)〈方〉火事になる 講談社『中日辞典』
発火 はっか
①火を発すること。燃え出すこと。
②銃砲に実弾を用いず、火薬だけをこめて発射すること。「―演習」
(39)着火 zháohuǒ 火事になる。 講談社『中日辞典』
着火 ちゃっか 火をつけること。火がつくこと。点火。
(40)「案件」などの中日同形語の意味を次に並べておく。
案件 ànjiàn 事件。訴訟事件。 講談社『中日辞典』
案件 あんけん 処理されるべき事柄。議題とされる事案。「重要―を処理する」
一案 yíàn (話題に取り上げられている)この事件。 (笔者)
一案 いちあん
いくつかある中で考慮の対象とする価値のある一つの案。一つの考え方。
「確かにそれも―だ」
勘案 kānàn 辞書に収録されていない。事件現場に行って調べたり、審理したりする。 (笔者)
勘案 かんあん あれこれを考え合わせること。「諸事情を―して立案する」
原案 yuánàn まだ裁判所の法律上の手続きを経ていない最初の訴状。
(笔者)
原案 げんあん もとの案。多く、修正案に対していう。「―通り可決する」
公案 gōngàn
昔「役所で官吏が裁判事件を審理するときに使われた大机」、「公文書」、日本語の②の意味もあったが、今は「難しい裁判事件」の使い方がまだ残っていいる。 (笔者)
公案 こうあん
①公文書の下書。官府の調書。訴訟の目安めやす。
②禅宗で、参禅者に対して言葉で与える課題。先人の言行などを内容とする難問を与え、それを思考させることを通じて、とらわれの心から脱却させ悟りの世界に入らせることを目的とする。
③(転じて)工夫。思案。風姿花伝「―して思ふべし」
新案 xīnàn 新しく起こった事件。 (笔者)
新案 しんあん あたらしい思いつき·考案。また、それによって作られたもの。
断案 duànàn
(1)[動] 事件を審理して裁決する。
(2)[名] 〈哲〉(三段論法の)結論。 講談社『中日辞典』
断案 だんあん
①案を断定すること。また断定した案。「―を下す」
②〔論〕結論。
铁案 tiěàn 確固たる証拠があり、覆すことができないある事件に対する結論や判決。 (笔者)
鉄案 てつあん 動かすことのできない断案。しっかりとした意見。
名案 míngàn 有名な事件。 (笔者)
名案 めいあん よい思いつき。「それは―だ」「―が浮かぶ」
(41)(42)『明鏡国語辞典』の解釈を引用した。
(43)“公认”と「公認」の意味用法は微妙に違っている。
(1)中日の辞書の説明
中国語での意味:
《现代汉语词典》:“大家一致认为。”
《汉语大词典》:“公众所承认,大家所承认。”
日本語での意味:
『大辞泉』:「おおやけに認めること。国家·団体·政党などが正式に認めること。」
『大辞林』:「おおやけに認めること。国·官庁や政党などが正式に認めること。」
『日本国語大辞典』の説明:「おおやけの認定。国家、社会、政党などが正式に認めること。また、一般に、親、世間などが認めること。」
『広辞苑』:国家·社会·政党などが正式に認めること。「―候補」
『明鏡国語辞典』:名·他サ変。国·団体·政党などが正式に認めること。
また、多くの人が公然と認めること。「―記録」「―の仲」
『岩波国語辞典』:名·ス他。おおやけにみとめること。国家·政党などが正式に認めること。「文部省―洋裁学校」「共産党―候補」
(2)中国語と日本語の語構成の違い
中国語では“公认”は「公が認める」という主述構成(主谓结构)で、「公」が熟語の主語になり、「公衆」·「大衆」·「みんな」を意味する。それに対して、日本語の「公認」の「公」は「政府。官庁。また、国家。」と「個人の立場を離れて全体にかかわること。社会。公共。世間。」の二つに解釈できる。それによって、語構成も二つに分かれる。「おおやけに認める(向社会表示认可)」の場合、語構成は「対象+動詞」(动补结构)であり、「国家、社会、政党などが正式に認めること。」の場合、主述構成(主谓结构)になる。
(3)用例
中国語
①这是公认的事实/これはみんなが認めている事実です。
②他是群众公认的好医生/彼は大衆がこぞって認める立派な医者です。
③其史料价值为人们公认/その史料価値はみんなに認められている。
④他的敬业精神是大家公认的/彼のまじめな仕事ぶりはみんなに認められている。
日本語
日本語に対応する訳語は主語によって違う。大きく次の4種類に分けられる。
(ア)「国、政府、官庁」などの場合は“认定”、“批准”、“注册”などに訳せる。
①公認会計士/注册会计师。
②公認監理技師/注册监理工程师。
③公認ネットカフェ/注册网吧。
④アメリカで医薬品として公認されている発毛剤/在美国被批准为药品的生发剂。(イ)「政党」の場合は“拥立”などの訳語が使える。
⑤党が公認した候補者/政党拥立的候选人。
(ウ)後の名詞を修飾して熟語を構成する場合、“正规”“正式”などに訳せる。
⑥公認試合/正式比赛
⑦公認記録/(经权威机构认定的)正式记录。
⑧公認ボール/(经某权威组织构认可的)正规比赛用球。
(エ)その他は“认可”などの訳語が使える。
⑨Jリーグ公認のファンサイト/日本足球联盟认可的球迷网站。
⑩本学の公認サークルは、50団体あります/本大学认可的俱乐部有50个。
全国ラジオ体操連盟公認指導者/全国广播操联盟认可的指导人员。
家族公認の恋人同士/家里人认可的恋爱关系。
両家の両親公認のお付き合い中/双方父母同意的交往。
2人はすでに両親公認の仲だ/两个人的交往已经得到了父母的许可。
両親公認のボーイフレンド/得到父母认可的男朋友。
両親公認の合鍵生活/经父母认可的同居生活。
お互いの両親公認で結婚を前提に同棲させてもらっていた/得到双方
父母认可,以结婚为前提而同居。
(4)注意
中国語の“公认”は「みんなが認める」意味で、「みんな」が主語である。日本語の「公認」は「みんなに認める」か「国?官庁や政党などが正式に認める」意味である。日本語の「公認」を中国語に訳すとき、決して“公认”を使ってはならない。主語によって、“认可”、“认定”、“批准”などから中国語の言語習慣に合っている訳語を選ぶ必要がある。
(44)「仮装」などの中日同形語の意味を次に並べておく。
假装 jiǎzhuāng [動]…を装う。…のふりをする。講談社『中日辞典』仮装 かそう
①仮の扮装。②相手をあざむくため、いつわりよそおうこと。「―空母」
男装 nánzhuāng [名](1)紳士服。(2)男装。男のなり。
講談社『中日辞典』
(2)の意味は“女扮男装”の場合に限る。“男装”だけでは(2)の意味を表
せないので、厳密に言えば、(2)の意味を取るべきである。
男装 だんそう 女性が男性の姿に装うこと。「—の麗人」
日本語では「男装」はサ変自動詞として使えるので、要注意である。
女装 nǚzhuāng [名](1)婦人服 (2)女装。 講談社『中日辞典』
(2)の意味は“男扮女装”の場合に限る。
女装 じょそう 男が女のよそおいをすること。
服装 fúzhuāng [名]衣服。服装。身なり。 講談社『中日辞典』
中国語では、多くの場合、具体的な「衣服」を指す。
服装 ふくそう 衣服および装身具の総称。みなり。衣服のよそおい。服飾。
盛装 shèngzhuāng [名]盛装。晴れ着。華やかな装い。講談社『中日辞典』
盛装 せいそう はなやかに着飾ること。また、そのよそおい。「―して出かける」
中国語の“盛装”は名詞だけで、日本語の「盛装」は名詞とサ変自動詞である。また、“盛装”は人の華やかな姿に限らず、町や都市の華やかに飾られた姿を形容できる。「盛装」は人にしか使われない。
正装 zhèngzhuāng 名詞だけで、「正式の衣服」を意味する。
正装 せいそう 儀式などに着る正式の服装。また、それを着ること。
日本語では名詞だけでなく、「正装して列席する」のようにサ変自動詞として使えるので、注意が必要である。
武装 wǔzhuāng
[動] 武装する。武装させる。(比喩的にも用いる)
[名] (1)武装。軍事装備。(2)武装した軍隊 講談社『中日辞典』
武装 ぶそう 戦闘のための装備をすること。また、その装備。
“武装”は「武装」より意味用法が多い。
①他動詞としての使い方が日本語にない。
②比喩的な使い方が日本語より多用される。
③「武装した軍隊」の意味がある。
(45)“贾母道:‘什么福,不过是个老废物罢咧!’” 《红楼梦》第三九回
(46)これらの同形語の日本語での読み方は次のとおりである。
熱湯 あつゆ ねっとう 新手 あらて しんて
菖蒲 あやめ しょうぶ 一度 いちど ひとたび
市場 いちば しじょう 一方 いっぽう ひとかた
黄金 おうごん こがね 大勢 おおぜい たいせい
大手 おおて おおで 音色 おんしょく ねいろ
風車 かざぐるま ふうしゃ 寒気 かんき さむけ
顔色 かおいろ がんしょく 気質 かたぎ きしつ
気色 きしょく けしき 国境 くにざかい こっきょう
好事 こうじ こうず 工場 こうじょう こうば
降伏 こうふく ごうぶく 戸口 ここう とぐち
小屋 こや しょうおく 声色 こわいろ せいしょく
声音 こわね せいおん 作物 さくぶつ さくもつ
十分 じゅうぶん じゅっぷん 祝詞 しゅくし のりと
白馬 しろうま はくば 人事 じんじ ひとごと
心中 しんじゅう しんちゅう 人体 じんたい にんてい
生魚 せいぎょ なまざかな 成敗 せいはい せいばい
生物 せいぶつ なまもの 旋風 せんぷうつむじかぜ
宝物 たからもの ほうもつ 中日 ちゅうにち なかび
帳面 ちょうづら ちょうめん 梅雨 つゆ ばいう
天火 てんか てんぴ 特種 とくしゅ とくだね
床 とこ ゆか 床板 とこいた ゆかいた
熱気 ねっき ねつけ 分別 ふんべつ ぶんべつ
牧場 ぼくじょう まきば 末期 まっき まつご
目下 もっか めした 大家 おおや たいか たいけ
男女 おとこおんな だんじょ なんにょ
小人 こびと しょうじん しょうにん
下手 したて しもて へた
真面目 しんめんぼく しんめんもく まじめ
一時 いちじ いちどき いっとき ひととき
上下 うえした かみしも しょうか じょうげ
人気 じんき にんき ひとけ ひとげ
(47)これらの同形語の日本語での読み方は次のとおりである。
海辺 うみべ かいへん
塩水 えんすい しおみず
下半期 かはんき しもはんき
黒土 くろつち こくど
頭蓋骨 ずがいこつ とうがいこつ
乳房 ちぶさ にゅうぼう
馬糞 ばふん まぐそ
(48)これらの同形語の中国語での読み方は次のとおりである。
大方 dàfāng [名][書]専門家。識者。 講談社『中日辞典』d
àfang [形]
(1)物惜しみしない。気前がよい。
(2)ゆったりと大らかである。おうようである。
(3)(デザインや色合いが)洗練されている。上品だ。しゃれている。
講談社『中日辞典』
大方 おおかた
名
①物事のほぼ全体。大体。大部分。あらまし。「参加者の―は女性だ」
②世間一般。「―の評判」「―の御教示を請う」
副
①(数量的に)ほとんど。だいたい。「―出来上がった」
②(下に打消の語を伴って)いっこうに。全然。
③おそらく。多分。「―そんなことだろう」
大人 dàrén [名][書]目上の人に対する尊称。 講談社『中日辞典』
大人 dàren [名]
1おとな。2[旧]地位の高い官吏などに対する尊称。大人(たいじん)。
講談社『中日辞典』
大人 おとな
①十分に成長した人。(元服または裳着もぎが済み)一人前になった人。成人。
②考え方·態度が老成しているさま。分別のあるさま。
③子供がだだをこねたりせず、おとなしいさま。「いい子だから―になさい」
大人 だいにん
おとな。成人。年齢によって料金を変える場合などにいう。
大意 dàyì [名]大意。大筋。 講談社『中日辞典』
dàyi [形]油断する。注意が足りない。 講談社『中日辞典』
大意 たいい
①大体の意義。あらましの意味。おおよそのわけ。「―を理解する」
②大きな意思。大志。
地道 dìdào [名]地下道。(多く軍事上のものをさす)。
講談社『中日辞典』
dìdao [形](1)本場の。(2)純粋の。正真正銘の。(3)手堅い。しっかりしている。 講談社『中日辞典』
地道 じみち
①普通の速度で歩むこと。馬を普通の速度で進ませること。
②手堅く着実な態度。まじめなこと。じみ。「―な努力」「―に稼ぐ」
地道 ちどう
①大地にそなわる道理。②地下に造った道。地下道。トンネル。
地方 dìfāng (1)地方。 (2)地元。その地。 講談社『中日辞典』
地方 dìfang (1)所。場所。 (2)箇所。点。 講談社『中日辞典』
地方 ちほう
①国内の一部分の土地。「関東―」
②首府以外の土地。いなか。「―へ転勤する」
东西 dōngxī [名](1)東西。東と西。(2)東西間の距離。
講談社『中日辞典』
dōngxi [名](1)(具体的な)物。品物。(抽象的な)知識。作品。
(2)人をののしったり軽蔑したり子どもや動物をかわいがったり
する言葉。 講談社『中日辞典』
東西 とうざい
①東と西。「―を見失う」(方角がわからなくなる)。
②東と西にのびる方向。「―に長い」
③東の地方と西の地方。東洋と西洋。「―文化」『岩波国語辞典』
多少 duōshǎo
[名] 数。多少。多寡。
[副] (1)多かれ少なかれ。いくらか。(2)多少。少し。若干。
duōshao [代]
(1)いくつ。どのくらい。
(2)(不定の数量を表す)どれだけか。いくらか。いくらでも。
多少 たしょう
[名]
①多いことと少ないこと。また、多いか少ないかの程度。「―にかかわらず」
②ちょっとした分量。少しであること。「―の誤りは仕方ない」
[副]
いくらか。幾分か。すこしは。「―心得がある」
干事 gànshì 連語である。仕事をする。 講談社『中日辞典』
gànshi [名] 幹事。 講談社『中日辞典』
幹事 かんじ
①主となって事務を担当すること。また、その人。「―長」
②世話人。まとめ役。「同窓会の―」
告诉 gàosù 〈法〉[動]告訴する。 講談社『中日辞典』
gàosu [動]告げる。知らせる。伝える。教える。
講談社『中日辞典』
告訴 こくそ
①告げ訴えること。
②〔法〕犯罪の被害者、その法定代理人などが、捜査機関に対して、口頭
または書面で、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求めること。→告発。好事 hǎoshì
(1)よいこと。世の中に役立つこと。慈善事業
(2)めでたい事。慶事。
(3)特に男女の密会や婚約?結婚を指す。
(4)道教で道士が福を祈り厄払いをすること。仏教で死者の冥福を祈ったり死者の霊を済度したりする法事。
(5)反語として「とんでもないこと」を指す。 (笔者)
好事 hàoshì
[形]もの好きである。余計なおせっかいをしたがる。要らぬ世話を焼きたがる。 講談社『中日辞典』
好事 こうじ よいこと。めでたいこと。
好事 こうず かわった物事を好むこと。風流を好むこと。ものずき。
教授 jiàoshòu [名]教授。 講談社『中日辞典』
jiāoshòu [動](学術·技芸などを)教授する。教える。講談社『中日辞典』
教授 きょうじゅ
①学術·技芸などを教えること。養護·訓練とならぶ教育上の基本的な活動·作用。
②大学·高等専門学校などの高等教育機関で、専門の学術·技芸を研究し教える人。その官名または職名。
精神 jīngshén [名](1)精神。心。(2)主旨。真意。講談社『中日辞典』
jīngshen (1)[形]はつらつとしている。生き生きしている。元気である。
(2)[名]元気。活力。 講談社『中日辞典』
精神 せいしん
①(物質·肉体に対して)心。意識。たましい。
②知性的·理性的な、能動的?目的意識的な心の働き。根気。気力。
「向学の—」
③物事の根本的な意義。理念。「建学の—」
④個人を超えた集団的な一般的傾向。時代精神?民族精神など。
⑤多くの観念論的形而上学では、世界の根本原理とされているもの。
例えばヘーゲルの絶対精神の類。
倾倒 qīngdǎo [動] (1)傾き倒れる。(2)感服する。傾倒する。
講談社『中日辞典』
q
īngdào [動](1)中身をすべて出す。(2)全部吐き出す。
講談社『中日辞典』
傾倒 けいとう 名詞とサ変自動詞
①傾き倒れること。傾け倒すこと。
②さかさにして、中にある物を出しつくすこと。酒を酌みつくすこと。
③ある人や物事に心を傾けて熱中すること。「万葉集に―する」
人家 rénjiā [名](1)人家。(2)家庭。家柄。(3)嫁入り先。
rénjia [代](1)他人。よその人。人様。(2)あの人。あの人たち。
(3)(親しい間柄で,またふざけて用いる)私。 講談社『中日辞典』
人家 じんか 人の住む家屋。「―も稀な山中」
下水 xiàshuǐ (1)水に入る。(2)(布を縮ませるために)水につける。
水に浸す。(3)[喩]悪事をはたらく。 講談社『中日辞典』
xiàshui (食用家畜の)臓物。内臓。はらわた。(地方によってはヒツジやブタの胃や腸のみを意味する) 講談社『中日辞典』
下水 げすい よごれた雨水または家庭や工場などから流れる使用済みのよごれた水。また、その汚水を流す溝。
丈夫 zhàngfū [名]立派な男子。成年男子。ますらお。
講談社『中日辞典』
zhàngfu [名]夫。 講談社『中日辞典』
丈夫 じょうふ
①(周尺の1丈を男子の身長としたところからいう)一人前の男子。ますらお。
②[正字通]才能が人よりすぐれた立派な男。大丈夫。じょうぶ
①達者。健康。「―な体」「―に育つ」
②こわれにくいこと。しっかりしていること。「―な造り」
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