第八章 時空を表す中日同形語
1. はじめに
中国語と日本語には、時空を表したり、時空と関係したりしている「中日同形語」の数が少なくない。それらの言葉は中国語で使われる場合と日本語で使われる場合、意味や用法に微妙な違いがあるので、中国の日本語学習者にとっては習得上の難点の一つである。またその違いによって中日両国の人々の交流も妨げられてしまうおそれがある。そこで、少しでも中国語話者の日本語習得と中日両国の人々のスムーズな交流に役立つように、時空に関する中日同形語を比較研究したのである。
2. 先行研究
時間を表す「日中同形語」(1)に関する研究論文は王蜀豫(1997)がある。王蜀豫(1997)では時間を表す「日中同形語」の意味用法の異同の比較が不十分であるし、現在すでに使われていない言葉や意味も挙げられている。また、時空を結び付けて考察する中日同形語の研究論文がまだ確認されていない。
3. 時空に関する中日同形語の分類
時空に関する中日同形語を、時空の意味、時空との関係、品詞性などにより「時間を表す言葉」「空間を表す言葉」「時空を表す言葉」「中国語では時間、日本語では空間を表す言葉」「中国語では空間、日本語では時間を表す言葉」「一方だけが時間だけと関係のある言葉」「一方だけが空間だけと関係のある言葉」「時間的なずれがある言葉」「空間的なずれがある言葉」「時空に関する中日同形語の品詞性」の10種類に分類してみた。
次にそれぞれ語例をあげながら考察していく。
3.1 時間を表す中日同形語
中日とも時間を表し、意味に微妙な違いがある言葉(2)は次の例が挙げられる。
後天 後年 後日 婚期 時候 従前 従来 前日 前年
即日 晩期 末日 末代
(1)後天
日本語(3):生まれてから後に身につくこと。
中国語(4):①日本語と同じである。②あさって。
(2)後年
日本語:話者が話している時点より後の年。
中国語:再来年。
(3)後日
日本語:その日よりあとの日。ある出来事よりもあとの日。
中国語:あさって。「現在よりもあとの日。これから先。今後。」の意味があったが、今は使われなくなった。
(4)婚期
日本語:結婚するのに適した年頃。結婚をするのにふさわしい年ごろ。結婚適齢期。
中国語:婚礼の期日。
中国語では古くから使われてきた言葉であるが、日本語では『日本国語大辞典』によると、「Puberty」から翻訳された言葉であるらしい。
(5)時候
日本語:四季それぞれの気候·天候。
中国語:①(長さとしての)時間。②(ある特定の)時.時刻。
日本語の意味は中国語の古代の最初の意味で、今は使われなくなった。
(6)従前
日本語では「従来」と同じく「これまで」という意味を表し、現在は昔と変わることなく同じ状態が続いているが、中国語では「昔」という意味を表し、「今は昔とずいぶん変わった」という意味を含んでいる。
(7)従来
中日とも「以前から今まで」「これまで」の意味を表すが、中国語では副詞で、否定文に多用される。肯定文にも用いられるが、修飾できる後の文は動詞文や形容詞文や主述文でなければならない。単独の動詞や形容詞を修飾できない。日本語では名詞で、副詞的に用いられる時もあり、肯定文に多用されている。
(8)前日
日本語:話者が話している時点より前の日。
中国語:おととい。
(9)前年
日本語:話者が話している時点より前の年。
中国語:おととし。
(10)即日
日本語では話者にとって、過去のことについても未来のことについても一般的なことでも使えるので、時間的な制約がないが、中国語では話者がある事を話している日にちは事の起こる日と同じでなければならない。
(11)晩期
日本語:①終わりに近い時期。末期。②晩年の時期。
中国語:ある時代、あるプロセス、ある人の人生の最後の段階。末期。後期。
今特に「ある病気の末期」を指す。日本語では「病気の最後の段階」を表す場合、「晩期」より「末期」が多用されている。
(12)末日
日本語:最後の日。物事の終わる日。特に、月の最後の日。
中国語:キリスト教でいう「最後の1日」から「世界の最期の日」「人が死亡する日」「物事が滅亡する日」へ意味が拡張された。日本語の「月の最後の日」という意味がない。
(13)末代
日本語:①死んだ後の世。後世。②すえの世。末世。末法。
中国語:ある王朝の最後の君主。日本語の①の意味もあったが、今は使われなくなった。
3.2 空間を表す中日同形語
中日とも空間を表し、意味に微妙な違いがある言葉は次の例が挙げられる。
一面 空車 境内 車庫 頭上 前面 当地 背面 幅員
満車 満床 裏面
(14)一面
日本語:①(ア)物体の一つの面。(イ)物事のある側面。事態の
一方の面。
②ある場所全体。そのあたりいったい。
③新聞の第一ページ。
④鏡·硯(すずり)·碁盤·将棋盤など平たいものひとつ。
⑤(副詞的に用いる)一方では。他方からみると。半面。
⑥初めて会うこと。一度だけの面会。
中国語:[名]①(物体の)一側面。一面。②(物事の)一方面。一部門。
講談社『中日辞典』
③同じ顔。④初めて会うこと。一度だけの面会。(笔者)[副](多く〔一面…一面…〕の形で)…する一方で。…しながら…する。
講談社『中日辞典』
中国語では、日本語の②③⑤の意味がないが、④と重なっているものがあるが、硯·碁盤などを数えるには使われない。
(15)空車(くうしゃ)
日本語:①営業用の車で、人や貨物をのせていないもの。特に、タクシーにいう。
中国語:日本語の①と同じである。
(16)境内
日本語:境界より内側。特に、神社や寺院の仕切りの内側。
中国語:国境の内側。
(17)車庫
日本語:汽車·電車·自動車などの車両を収容するための建物、または場所。
中国語:電車や自動車などの車両を入れておく建物。中国語では建物がない駐車スペースだけの場合「車位」という。
(18)頭上
日本語:頭の上。「頭上」は頭を指す場合もあるが、「髪の毛」が「頭上」の意味に含まれていないようである。
中国語:①頭の表面;②髪の毛;③頭の上;④“敲诈”“降临”“轮到”“栽赃”などの言葉と一緒に使い、よくないことが発生したり押し付けられたりする意味を表す。
「頭上」の中国語での意味は日本語よりずっと多く、「頭の上」より「頭」の意味が多用されている。
(19)前面
具体的な空間を表す場合は同じであるが、抽象的な空間を表す場合、違いがある。日本語では「福祉問題を前面に押し出す(把福利问题放在首位)」のように使われ、「他のものに優先する」意味を表すが、中国語では「序列的に前にある空間や位置」と「文章や話などのすでに述べた前の部分」を表す。
(20)当地
日本語:(自分が今いる)この土地。この地方。当所。
中国語:話題で取り上げられた場所。事件が発生した場所。土地。地元。話者が今いるとは限らない。
(21)背面
日本語:①後ろの方。後ろの側。②物事の表面にあらわれない別の面。
中国語:物事の裏側。「紙」などに多用される。日本語の②の抽象的な意味がない。
(22)幅員
日本語:道路·橋·船などの横の長さ。
中国語:国土や領土などの広さ。
(23)満車
日本語:駐車場などで、車の収容能力が限界に達したこと。
中国語:車にいっぱい人や物が入っている状態。
(24)満床
日本語:病院に空いている病床がないこと。
中国語:ベッドいっぱいに何かが散らかっている状態。
(25)裏面
日本語:①物の裏の面。裏側。
②物事の表面に現れない部分。一般には知られていない事柄。内幕。
中国語:ある物事の中。具体的なものにも抽象的なものにも使われる。
3.3 時空を表す中日同形語
中日両方かどちらか一方が時空を表す中日同形語の例として次の言葉が挙げられる。
最近 前後 前途 直前 当面 馬上 目前
(26)眼前
日本語:目の前。まのあたり。目前。
中国語:①目の前。眼前。②目下。現在。当面。
もともと空間を表す言葉は意味が拡張されて、時間の意味をも表すようになった。
(27)最近
中国語では時間を表す場合、複合語として成立するが、空間の「(距離が)いちばん近い」意味を表す場合、複合語ではなく、連語に属する。
(28)前後
日本語:①(空間や位置的に)物のまえとうしろ。
②(時間的に)ある事柄のさきとあと。
③物事や出来事のあとさきの状況·事情。
④年代·時間·年齢や、数量を表す語などに付いて、そ
れにごく近いことを表す。ぐらい。ごろ。内外。
⑤順序が逆になること。
⑥間を置かず物事が行われること。また、起こること。相前後すること。
中国語:①(ある時間の)前後。ころ。
②(時間としての始めから終わりまでをさす)前後。
③(あるものの)前と後ろ。
中国語の“前后”には日本語の④⑤⑥の意味用法がない。
(29)前途
日本語:①目的地までの道のり。ゆくさき。②これからさき。将来。
中国語:前途。将来の見込み。
中国語でもともと「目的地までの道のり。ゆくさき。」を表したが、今は時間的な意味だけを表すようになった。
(30)直前
日本語:①(時間的に)事の起こるすぐまえ。②(空間的に)ある
もののすぐまえ。
中国語:空間と関係があり、「前に突き進む」意味を表が、“勇往直前”“一往直前”“奋勇直前”“勇猛直前”など四字熟語の一部として使われている。
(31)当面
日本語:①(名)スル目の前に存在すること。今、直面していること。②(副)今のところ。さしあたり。
中国語:副詞。面と向かって。じかに。
(32)馬上
日本語:馬の上。
中国語:①馬の上。②すぐに。さっそく。
中国語では「馬の上」の意味を表す場合、熟語として成立していない。
(33)目前
日本語では時空を表すが、中国語では時間だけを表す。
3.4 中国語では時間、日本語では空間を表す言葉
(34)眼下
日本語:見おろした所。
中国語:目下。当面。
日本語ではまだ空間的な意味を保っているが、中国語では時間的な意味に変わった。
3.5 中国語では空間、日本語では時間を表す言葉
(35)言下
日本語:相手が言い終わったすぐあと。言い終わるか終わらないうち。
中国語:《汉语大词典》に収録されている例のように、かつては日本語と同じ意味を表したが、今は使われなくなった。単独ではなく、“言下之意”のように熟語の一部として使われる。“言下之意”は「その言葉に含まれている意味」という意味を表す。
3.6 一方だけが時間と関係のある言葉
快報 仮設 命中 首班 老婆 老廃物 望見 看過 漂着
(36)快報
日本語:喜ばしい知らせ。よい知らせ。うれしい知らせ。朗報。
中国語:速報。
(37)仮設
日本語:①ある期間だけ臨時に設置すること。
②想像によって物·場面などを作り出してみること。
③〔専門〕数「仮定(かてい)[3]」に同じ。[哲学字彙]
中国語:①仮定する。仮に…とする。
②(文学作品などで)フィクションとして描く。③(科学上の)仮定。仮説。
(38)看過
日本語:「気にとめないでしてしまう」と言う意味を表す。
中国語:「動詞+过(経験を表す助詞)」で「したことがある」という意味を表す。
(39)首班
日本語:第一位の席次。特に内閣の総理大臣。
中国語:始発の(飛行機、列車、船など)。“首”は「一番初めの」、“班”は「運航する列車、飛行機、船」などを数えるときの助数詞。
(40)漂着
日本語:針路または推進手段を失い、目的地以外の土地へ流されてたどりつくこと。
中国語:漂っている。浮いている。
中国語では“着”は助詞で、動作の結果·状態の持続を表し、「ている」「てある」にあたる。日本語では「着」は複合動詞の後項として用いられ、「行きつくこと」か「衣服などを身につけること」の意味である。
(41)望見
中国語:見ることが出来た。見えた。“见”は知覚動詞の結果補語として用いられる。
日本語:遠くから眺め見ること。遠くをながめること。
(42)命中
日本語:ねらったものにあたること。的中。
中国語:①日本語と同じである。
②運命の中。単独で使われず、「命中注定(運命づけられている)」を構成する一部分として使われる。
(43)老婆
日本語:年をとった女性。老女。
中国語:[口](自分や他者の)妻.女房.家内.
(44)老廃物
日本語:生体内で生成された代謝産物で生体にとって不必要となったもの。二酸化炭素·尿素·尿酸·クレアチニンなどの含窒素有機物、種々の有機酸·無機塩などで、呼気·尿· 汗·糞便などに混じって排出される。
中国語:年をとった、役に立たない人を皮肉った言い方。
3.7 一方だけが空間と関係のある言葉
一片 外傷 隔壁 向上 身上 手心 冒頭
(45)一片
日本語:①たった一枚。ひとひら。②大きなものから切り取られた一部分。ひとかけら。③わずかばかり。ほんの少し。
中国語:①一枚。ひとひら。②一面(の)。見渡す限り(の)。
③満場の。その場にいる人全員に行き渡る。④満腔(の)。胸いっぱい(の)。
日本語の③の意味が中国語の④と正反対なので、「一片の誠意」は間違えられやすいだろう。「一片の誠意」は日本語では「わずかの誠意」の意味で、打ち消しと一緒に使われるが、中国語では「満腔の誠意」の意味なので、要注意である。
(46)外傷
日本語:外力によってうけた傷(きず)。切り傷·打撲傷·火傷(やけど)など。骨折や内臓破裂も含む。けが。
中国語:体の外側に受けた怪我。内部の怪我は“内伤”という。
(47)隔壁
日本語:間をへだてる壁。しきり。
中国語:壁一つ隔てた隣。隣家。隣人。
(48)向上
日本語:よりよい方向、すぐれた状態に向かうこと。
中国語:①動詞。よりよい方向、すぐれた状態に向かう。
②連語。上に向かって。上を向いて。
(49)身上
中国語では「身」の意味で、「上」は接尾字で、具体的な意味がない。まだ空間と関係しているが、日本語では「しんしょう」と「しんじょう」の二通りの読み方があり、意味は空間と関係がなくなった。
(50)手心
日本語:相手や事情に応じて適当に扱うこと。事情を考慮して普通よりゆるやかな扱いをすること。手加減。
中国語:①手のひら。たなごころ。②支配下。手中。
(51)冒頭(5)
日本語:文章·談話のはじめ。また、一般に物事のはじめ。
中国語:①表面に出てくる。②(端数のあることを表す)超える。上回る。
日本語の意味が古代の中国で使われたが、今使われなくなった。
3.8 時間的なずれがある言葉
好球 再会 再見 用量 予防戦争
(52)好球
日本語:野球で、打者が打つのにいいたま。
中国語:(球技で)ナイスボール。(野球で)ストライク。
中国語では「打った後のボール」を指しているのに対して、日本語では「打つ前のボール」を指している。日本語では野球にしか使われないが、中国語ではすべての球技について使われる。
(53)再会
日本語:長く別れ別れになっていた人どうしが、再びめぐりあうこと。
中国語:[挨拶]さようなら。また会いましょう。
日本語では「すでに会った」ことにも「将来会う」ことにも使えるが、中国語では別れるときのあいさつで、将来の動作しか表すことができません。
(54)再見
日本語:同じものをもう一度見ること。また、もう一度見いだすこと。
中国語:[挨拶]さようなら。また会いましょう。
日本語では「再見した」のように過去のことにも使えるが、中国語では分かれるときのあいさつで、将来の動作しか表すことができません。
(55)用量
日本語:用いるべき量。特に、薬を投与する場合用いる量。通例、一回量·一日量などで表す。
中国語:辞書に収録されていないが、用いた量にも使われる。
(56)予防戦争
日本語:仮想敵国が自国を攻撃する前に、あるいは自国よりも強力になって有利な開戦条件を整える前に、これを予防するために先制して起こす戦争。
中国語:戦争を予防する。
3.9 空間的な違いがある言葉
遠投 環視 出頭 上場 進出 出口 念頭
(57)遠投
日本語:遠くへ投げること。野球用語。
中国語:遠いところから投げる。バスケットボールの用語。ロングシュート。
(58)環視
日本語:多くの者が取り囲んで見ること。単独で使われないで「衆人環視」を構成する一部分として使われる。
中国語:周りを見回す。日本語の意味用法もあったが、現在使われなくなた。(59)出頭
日本語:官庁などの呼び出しを受けて出かけること。
中国語:①日の目を見る。(苦境から)脱する。②表に立つ。顔を出す。③(ある数量に)余る。端数が出る。
(60)上場
日本語:①物件が証券取引所または商品取引所における売買取引の対象とされること。②劇などを上演すること。
「上」は他動詞で、「上げる」「出す」の意味である。「場」は「取引場」か「劇場」の意味である。
中国語:(役者や選手が)登場する。出場する。入場する。
“上”は自動詞で、「上がる」「出る」の意味である。“场”は「ステージ」「舞台」「試合などを行う運動場」の意味である。
(61)進出
日本語:①新しい分野に発展して出ること。②進み出ること。前進すること。
中国語:①出入りする。②金銭が出入りする。
日本語の「進」と「出」は類義を表すが、中国語では“进”と“出”は反対の意味を表す。
(62)出口
日本語:外へ出る口。
中国語:①言葉が口を出る。②(船が)港を出る。③輸出する
④出口
中国語では“口”は「くち」の意味が基本である。“港”は「港口」と呼ばれるので、「船が港を出る」ことを“出口”と表現するのである。また対外貿易は明の時代海路を通して、盛んに行われてきたので、“出口”に「輸出」の意味が生まれたのであろう。
(63)念頭
日本語:心のうち。頭の中。
中国語:考え。思い。意図。心づもり。
日本語は「念のある場所」である「頭」か「心」に重きがあるが、中国語は“头”が接尾字で、“念”に重きがある。
3.10 時空に関する中日同形語の品詞性
中国語では漢字語は様々な品詞になれるが、日本語では基本的には名詞である。時空に関する中日同形語の品詞性の対応関係は非常に複雑であるが、次のように細かく分類してみた。
①中日とも名詞である。
沿線 屋外 屋内 基地 軌道 空中 室外 室内 東西南北②日本語では名詞とサ変動詞であるが、中国語では名詞である。
高下 前後 首尾 終始(中国語で使わなくなった) 指南始末 北面
③中国語で名詞と動詞で、日本語では名詞とサ変動詞である。
左右 上下(じょうげ)
④中国語では動詞で、日本語では名詞とサ変動詞である。
遠征
⑤中国語では名詞と動詞であるが、日本語では名詞だけである。
千古 百年
⑥中国語では自他動詞であるが、日本語では自動詞である。
隔絶
⑦中国語では他動詞であるが、日本語では名詞·サ変自動詞である。
遠隔
日本語では「遠隔」が名詞として多用されているが、他の漢語と一緒に4字複合語を構成する場合が多い。
⑧中国語では形容詞であるが、日本語では名詞·形容動詞である。
永久 遠大 巨大
⑨中国語では形容詞であるが、日本語では名詞である。
遠視 近視 空前 久遠 恒久 適時
⑩中国語では名詞·形容詞であるが、日本語では名詞である。
片面 空洞 現代
瑏瑡中国語では形容詞であるが、日本語では名詞·サ変自動詞である。
一貫
瑏瑢中国語では名詞·介詞であるが、日本語では名詞でる。
距離
瑏瑣中国語では副詞であるが、日本語では名詞·形容動詞である。永遠
瑏瑤中国語では副詞であるが、日本語では名詞である。従来
瑏瑥中国語では熟語ではないが、日本語では熟語である。僅差 僅少 最高 最短 最長 最低 浮上
4. おわりに
以上の考察を通して、時間·空間·時空を表す中日同形語の意味用法が大きく違っていること、それらの品詞性の対応関係が複雑であることが分かった。日本語では熟語として成立しても中国語では独立できなかったり4字複合語を構成する一部であったり、連語であったりする言葉も少なくない。
時空を表す中日同形語の意味用法と品詞性の違いをもたらした要因として次のことが考えられる。
(1)漢字の意味の多様性と造語力の違い。
一つの漢字に多くの意味が含まれているので、漢字と漢字が結合したら、さまざまに理解できるのである。例えば「一」は「ひとつ」も「いっぱいだ」「満ちている状態」も表すことができるので、「一面」「一片」の意味が違ってきたのである。
(2)日本語で中国語の古代の意味が保たれているが、中国語で意味用法が消えたり変わったりしてしまったからである。
(3)日本語では漢字に新しい意味が加えられた。
“里(裏)”は中国語では「内」「中」の意味を表すが、日本語では「うら」の意味が加えられた。それによって、中日では「裏面」の意味が違ってしまったのである。
(4)言語環境が違う。
言葉が必要によって生まれるのである。言葉が人々の生活文化そのものである。漢字語の構成もその意味用法も人びとの生活環境によって異なってくる。
「向上」「隔壁」「老廃物」「予防戦争」「遠投」「上場」「進出」「念頭」「好球」など構成も意味も大きく違っている言葉は中日の言語環境の違いをよく物語っている。
注
(1)中日両言語間にある同形語に対する呼び方はいろいろあるが、筆者は中日同形語を使うことにしている。
(2)「昨日」「去年」「海外」のような同義同形語について意味用法の比較では取り上げていないが、品詞性の比較で一部分の例を取り上げた。
(3)日本語の意味は基本的に『大辞林』に従っているが、一部分の言葉に関する解釈は自分の理解で書き直した。
(4)中国語での意味は基本的に《汉语大词典》、《现代汉语词典》、講談社『中日辞典』などを参考にしてまとめたのである。一部分の言葉は辞書に収録されていないので、自分の理解で解釈したのである。
(5)《汉语大词典》の“冒头(冒頭)”の(1)の意味から、日本語の「冒頭」の意味が中国語から伝来したことがわかる。
①指文章或讲话的开头部分。
柴作亦佳,特未免唐人所谓冒黎《淮西碑》
予谓词曲中开场一折,即古文之冒头,时文之破题,务使开门见山。
清·李渔《闲情偶寄·词曲下·格局》
②冒尖,露出苗头。
一方面,横加干涉的现象尚未绝迹;另一方面,任其自流的情况也在冒头。
《人民日报》1981.1.21
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