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日本語で形容動詞か名詞·形容動詞である言葉

时间:2023-04-02 理论教育 版权反馈
【摘要】:第十一章 中日同形語の誤用——中国語で形容詞である中日同形語を中心に——1. はじめに中日同形語の中で、中国語で形容詞の品詞性を持つ言葉はかなりの数に上っている。筆者は、中国語母語話者の上級日本語学習者の、中国語で形容詞である中日同形語の使用実態を把握するために、本調査を計画し、実施した。

第十一章 中日同形語の誤用

——中国語で形容詞である中日同形語を中心に——

1. はじめに

中日同形語の中で、中国語で形容詞の品詞性を持つ言葉はかなりの数に上っている。しかし、それらの形容詞は必ずしも日本語の形容動詞と対応しているわけではない。したがって、中国語話者が日本語を習得するとき、中国語の形容詞である品詞性が大きく影響することが予想される。中国語を母語とする日本語科学生の修士論文で、「特殊」「顕著」「緊密」などの言葉はほとんど誤用が確認されていないが、「一致」「洗練」のような、中国語では形容詞で、日本語では「名·サ変」の言葉に誤用が集中している。次のような誤用例を挙げることができる。

(1)*同じ「髪」という身体部位を用いる表現方式も一致 である。

(2)*簡潔で洗練 であり、先人のさまざまな知恵の結晶である。

なぜこのような誤用が生まれたのか、中国語の形容詞がなぜ日本語で名詞やサ変動詞であるのか、中国人日本語学習者に、中国語の形容詞である中日同形語の、どんな言葉に品詞性の誤用が起こりやすいか、それらの実態に関する調査を実施し、中日同形語の品詞性の違いを引き起こす要因について考察する。

2. 先行研究

中日同形語の意味用法の習得研究として、陳毓敏(2003)、加藤稔人(2005)などが挙げられる。

「日中同形語」の品詞の違いに関する研究は、石堅·王建康(1983)、侯仁鋒(1997)、中川正之(2005)がある。石堅·王建康(1983)は日本語での品詞性を判断してもらうという形で調査を実施し、母国語の干渉が強いという結論を出した。しかし、実際の応用の時、中国人の日本語学習者たちがどのように使用しているのか、どんな問題点があるのか、わからない。また、その調査から30年近く経った現在、日本語学習の環境も大きく変わった。

侯仁鋒(1997)は新聞や雑誌からいろいろな用例を集め、日中の同形語の品詞の違いを分析し、8タイプに分類した。分類の基準は明確に示されなかったし、用例の出典もはっきり示されていない。

中川正之(2005)は中国語の形容詞が日本語で動詞になる原因を「一時的か恒常的か」「一点凝視か多点参照か」「中国語の並列と日本語の修飾」の三点に求め、次のように帰結した。

中国語の形容詞が日本語でサ変動詞に変わる要因は、中国語の並列構造を日本語が修飾構造に変えてしまうという言語類型的特徴とともに日本人が何かをみるとき、他の何かをも視野に入れてしまう傾向が強いことである。(1)

確かに中国語の二字複合語に並列構造が目立っているが、並列構造は形容詞に限らず、名詞や動詞にも多く見られる。中川正之(2005)の挙げた例の中で、“弯曲”“优秀”は形容詞で、並列構造であるが、“紧张”は形容詞であっても、並列構造ではない。“筋肉”は名詞で、“落下”“下沈”は動詞で、並列構造ではない。“低下”は熟語としては、並列構造で形容詞であるが、連語として使われる場合、「動詞+方向動詞」の構造で、日本語の「垂れる」「低下させる」などの他動詞に当たる。“低落”と“落後”は並列構造ではなく、両方とも動詞から形容詞化し、今動詞と形容詞の二つの品詞性を持っている。

3. 調査の概要

3.1 調査の目的と予想

中国語で形容詞である中日同形語の、日本語での品詞性との対応関係は非常に複雑である。筆者は、中国語母語話者の上級日本語学習者の、中国語で形容詞である中日同形語の使用実態を把握するために、本調査を計画し、実施した。

筆者の長年の日本語教育経験と日本語科の修士論文に見られる誤用から、中国語母語話者の上級日本語学習者の、中国語で形容詞である中日同形語の使用実態について、次の予想が立てられる。中国語で形容詞である同形同義語は、日本語で形容動詞である場合、あまり問題が起こらないが、日本語でサ変動詞である場合、誤用が起こる可能性がある。同形異義の場合、品詞性以前に語義が違うので、中日同形語の語義の相違が分からなければ、誤用が起こってしまう可能性がある。

3.2 調査対象と方法

筆者は、2010年10月に、中国10の大学(2)の日本語科の3年生以上の学部生と院生合計330人を対象に、中国語から日本語へ翻訳させる記述方式で、調査を実施した。

3.3 調査語と調査文

筆者は中国語で形容詞である同形語と日本語での品詞性との対応関係によって12類(3)に分類して、それぞれの代表的な言葉を合計60選出し、調査語にした。そして、講談社『日中辞典』と講談社『中日辞典』及び北京大学漢語言語学研究センターのコーパス(4)から調査語の入っている文を50選出し、一部分の文を適当に短縮して、調査文(5)とした。

調査語は中国語で品詞を兼類する言葉もあるが、調査文での文法的な働きとして述語であったり、名詞を修飾したり、動詞を修飾したり、結果補語だったりして、全部形容詞として使われている。また、“漆黑”“清楚”“镇静”“和睦”などの同形語は日本語で使用頻度が低いが、中国語で多用されているので、調査語に選出した。

調査語は次のとおりである。

安静 虚伪 文明 鲜明 系统 繁荣 严重 痛快 清楚

浓厚 重大 过度 圆滑 冷静 大胆 正确 迅速 严正

感伤 完备 规则 矛盾 新鲜 兴奋 唯一 充实 快乐

潜在 壮观 镇静 美观 性感 漆黑 干燥 柔软 混乱

紧迫 洗练 过热 明确 乐观 合法 最大 流畅 精彩

一致 悲观 遗憾 合理 切实 旺盛 良性 和睦 优越

重要 流畅 深刻 大量 安全 卫生

4. 調査の結果

本調査を実施するに当たり、学生たちに日本語の辞書を引かせないようにした。中日同形語の意味用法が必ずしも同じではないので、調査文に含まれた中日同形語を使って翻訳しなければならないとは指定しなかった。それは回答者に回答の自由度を与えたが、さまざまな訳文が現れて、データの統計分析の難しさを増した。しかし、それこそ学生たちの日本語学習の実態を反映したと言えるだろう。

調査のデータ統計の結果を12類の分類に従い、並べていく。また中日の品詞性の違いによって、統計の項目を設けた。本調査は中国語で形容詞である中日同形語の応用実態を主目的にしているため、調査語を含む訳文を中心に考察した。「~」は調査語に対応する日本語の漢語を表す。訳文には調査語を含まない例も見られるが、それを未訳と一緒に、「対象外訳」として、基本的に考察の対象から外した。中国語の簡体字を使った訳等を「他」に分類した。

表の中で網かけをしてある数字は中日同形語を使ったあるいは含んだ言葉の正用を表す。また調査語の前の数字は調査文の番号である。

(1)中国語では形容詞である、日本語では名詞·形容動詞である

言葉

(2)中国語では形容詞である、日本語では形容動詞である言葉

(3)中国語では名詞と形容詞である、日本語では名詞と形容動詞である言葉

(4)中国語では形容詞である、日本語では名詞である言葉

(5)中国語では名詞と形容詞である、日本語では名詞である言葉

(6)中国語では形容詞と他動詞である、日本語では名詞とサ変自動詞である言葉

(7)中国語では形容詞と他動詞である、日本語では名詞と形容動詞である言葉

(8)中国語では形容詞である、日本語では名詞とサ変自動詞である言葉

(9)中国語では名詞と形容詞である、日本語では名詞とサ変自動詞である言葉

(10)中国語では形容詞と他動詞と名詞である、日本語では名詞とサ変自動詞である言葉

(11)中国語では形容詞である、日本語では名詞とサ変他動詞である言葉(

12)中国語では形容詞である、日本語では名詞とサ変自他動詞である言葉

5. 考察

以下「品詞性に違いがある同形同義語」と「同形異義語」に分けて見ていく。( )の中の数字は、一つだけの場合、誤用を表し(5.3.1だけが正用の数を表す)、二つの場合は、それぞれ正用と誤用の数を表す。

5.1 品詞性に違いがある同形同義語

これはさらに日本語で「名詞·形容動詞である言葉」「名詞·サ変動詞である言葉」「名詞である言葉」に分けられる。

5.1.1 中国語で形容詞であるが、日本語で名詞·形容動詞である言葉

大胆(229/66) 安全(223/40) 合法(184/31) 新鮮(171/20)

重要(167/0) 冷静(164/6) 大量(162/4) 重大(141/4)

流暢(141/17) 壮観(89/5) 明快(74/27) 濃厚(66/0)

柔軟(65/10) 旺盛(52/32) 過度(25/3) 鮮明(24/1)

遺憾(5/2)

「遺憾」を除いた言葉は、正用が誤用よりずっと多いので、この類の中日同形語の品詞性は中国人の日本語学習者にとって、あまり問題にならない。

「大量」は名詞を修飾する時、「大量な」と「大量の」がどちらも使えるので、「大量」を使った166訳中の162訳が正用に当たる。「合法」は日本語で名詞·形容動詞であるが、同時に「合法的」という形容動詞も存在しているので、「合法」の13と「合法的」の171を合わせると、正用の数は184になり、誤用の31よりずっと多い。「安全」の訳として、「安全で」だ「「安全な」「安全の」は正用、「安全に」は形容動詞の使い方としては正しいが、原文の訳として正しくないので、誤用に数えた。「過度」は「~な」「~の」の両方が使えるので、「過度な」「過度に」「過度の」の正用を合わせると、25になる。「遺憾」を使った訳が非常に少なかったが、対象外訳で「残念」が使われたのは310にも上った。「遺憾」という言葉が日本語では改まった場合にしか使われないからだろう。「残念」という言葉の意味が日本語学習者にほぼ定着したと言える。

5.1.2 中国語では形容詞で、日本語では名詞·サ変動詞である言葉

楽観(149/98) 悲観(148/129) 繁栄(140/100) 興奮(139/101)

潜在(129/29) 一致(99/126) 矛盾(87/117) 混乱(83/150)

充実(64/246) 完備(51/35) 過熱(43/67) 緊迫(24/59)

乾燥(16/118) 優越(14/45) 和睦(1/23)

「楽観」と「悲観」以外の言葉は日本語で全部サ変自動詞として使われ、ほとんど「~した」か「~している」の形で中国語の形容詞と対応している。サ変動詞として使われた訳を全部正用に数えた。「乾燥」は日本語でサ変他動詞としても使われるが、基本的には自動詞よりである。「楽観」と「悲観」はサ変他動詞でありながら、中国語の“乐观”“悲观”とほぼ同義とみなしてもよい。「楽観」のサ変他動詞の訳は19で、少なかったが、「楽観的」の訳は130に上った。それも正用に数えた。「悲観」のサ変他動詞の訳は33で、「悲観的」の訳は115である。両者を合計して、正用が148になる。“潜在”のサ変動詞訳27と「潜在的」102を合わせると、正用が129になる。「楽観的」「悲観的」「潜在的」はそれぞれのサ変動詞よりずっと多用されているので、中国人の日本語学習者には「楽観」「悲観」「潜在」を形容詞として意識している傾向が見られる。「優越」は普通サ変動詞として使われるが、『広辞苑』で「優越的」(6)の使い方も確認できたので、「優越的」も正用に数えた。

中日同形語を使った訳の正用と誤用の数を比較すれば、“充实、紧迫、优越、和睦”などの形容動詞訳がサ変動詞訳よりずっと多いこと、「一致」「矛盾」「過熱」などの形容動詞訳がサ変動詞より少し多いことがわかる。“繁荣、兴奋、完备”の形容動詞訳がサ変動詞より少し少なく、“混乱”の形容動詞訳がサ変動詞よりずっと少ないが、かなりの数に達している。したがって、この類の中日同形語において、中国語の品詞性の影響が大きいと言えるだろう。

5.1.3 中国語で形容詞か名詞·形容詞で、日本語で名詞である言葉

唯一(218/52) 最大(141/85) 感傷(39/26) 良性(24/127)

漆黒(0/0)

漢語は日本語では基本的に名詞として意識されている。「良性」について、「良性循環」をそのまま使った100人の訳を計算に入れると、誤用が127に上った。「最大」と「唯一」の誤用は正用よりずっと少ないが、かなりの数に達している。「漆黒」を使った訳はゼロだった。“漆黑”は中国語で「真っ黒だ」と「真っ暗だ」の二つの意味を表す。その訳語として、「真っ黒」を使った学生は195人であるのに対して、「真っ暗」を使った学生は52人にとどまっている。中国語の影響は言うまでもないが、多くの大学で採用されている日本語の教材の影響も無視できないだろう。たとえば、《新編日语》に「まっくろ(第3 冊11課)」しか出ていないし、中国語の訳として、“漆黑”が使われている。

5.2 同形異義語

同形異義語なので、「虚偽」「美観」「快楽」「性感」「精彩」「安静」「鎮静」「清楚」などの訳が少ないのは当然であるが、日本語での使用頻度が低い一面も反映された。以下の四類に分けられる。

5.2.1 日本語で名詞である言葉

合理(238/44) 系統(158/44) 規則(126/71) 衛生(67/151)

文明(91)  虚偽(29)  美観(22)  快楽(3)

性感(5)   精彩(3)

「合理」は名詞といっても、単独ではほとんど使われず、「合理的」「不合理」などの接辞を付けて用いられる場合が多い。正用の238は全部「合理的」である。中国語の形容詞の“系统”“规则”“卫生”はそれぞれ日本語の「系統的」「規則的」「衛生的」に当たるので、名詞として使われた「~の」を誤用にした。「感傷」は「~の」も「~的」も原文の意味を表すことができるので、両方とも正用にした。「虚偽の」「文明の」は文法的に正しく使われているが、意味が原文と合わないので、正用とは言えない。“快乐”の訳として、対象外の「楽しい」を使ったのは284にも上っている。“精彩”の対象外訳として「すばらしい」を使ったのは292に上っている。

5.2.2 日本語で形容動詞か名詞·形容動詞である言葉

深刻a(180) 円滑(146) 厳正(129) 正確(106) 切実(68)

深刻b(49) 迅速(37) 痛快(10) 安静(5)  厳重(4)

「痛快」は中日で意味が重なる部分があるが、原文での意味が日本語にないので、「痛快」を使った訳を誤用に数えた。「厳正」は中日で意味が大きく違う。中国語では“严肃正当”の意味を表すが、日本語では「厳格で公正なこと」を指す。講談社『中日辞典』でも「厳正」を使って“严正”を訳しているので、要注意である。

60の調査語中、「深刻」だけ二回出された。「深刻a」は調査文48番の“深刻”に対する訳である。「深刻b」調査文49番の“深刻”に対する訳である。しかし、同じ「深刻」でも48番が49番よりずっと多く使われているのは注目すべき現象である。つまり“深刻教训”が“深刻印象”より誤用が多発している。その原因は以下の二つにあると考えられる。一つは、授業やテキストに「深い印象」が「深い教訓」より現れる可能性も頻度も高いこと、もう一つは日本語の教師が中国語の“深刻”と日本語の「深刻」の違いを説明する時、“深刻印象”が多く挙げられることである。

“严重”の訳語として、「厳重」を使った学生は4人しかいないが、対象外訳の「深刻」を使ったのは145に上っている。正用は143である。つまり「厳重」と「深刻」の使い分けが比較的浸透していると言えるだろう。“安静”の訳語として「静かに」を使った学生は310人にも上ったので、「静かだ」という形容動詞がよくマスターされていると言える。

5.2.3 日本語で名詞·サ変他動詞である言葉

洗練(79/174) 鎮静(4)

“洗练”を「洗練して」「洗練した」と訳した意味は原文に合わないので、誤用に数えた。「洗練された」のような受身形で初めて中国語の意味に対応する。

5.2.4 中国語で形容詞·他動詞である言葉

明確(72/14) 清楚(0/0)

中国語には“清楚”“明确”のように形容詞と他動詞を兼ねる言葉が少なくない。調査では形容詞用法だけに絞ったので、「明確」の正用が誤用よりずっと多い。ただ誤用にサ変動詞訳が4例入っているのは中国語の他動詞の影響の現れであろう。“清楚”の訳として「清楚」(7)を使ったのはゼロで、その対象外訳の「はっきり」という正用は169である。

5.3 「~的」をつけた言葉

中国語の形容詞は助詞の“的”をつけて使われる場合が多い。それも日本語訳に反映されている。

5.3.1 日本語に中国語の形容詞に対応する「~的」がある言葉

正しく習得できたかもしれないが、中国語の影響で「的」をつけた可能性も否定できない。

合理的(238) 合法的(171) 系統的(158) 楽観的(130)

規則的(126) 悲観的(115) 潜在的(102) 衛生的(67)

感傷的(27)

5.3.2 日本語に中国語の形容詞に対応する「~的」がない言葉(8)

これは「的」の過剰使用とも言える。

大胆的(51)  文明的(37)  正確的(23)  良性的(18)

深刻的(15)  流暢的(14)  厳正的(10)  安全的(10)

迅速的(9)  明確的(9)  切実的(9)  充実的(9)

混乱的(8)  矛盾的(7)  唯一的(6)  緊迫的(5)

冷静的(5)  和睦的(5)  大量的(4)  柔軟的(2)

洗練的(2)  繁栄的(1)  重大的(1)  過度的(1)

興奮的(1)  鮮明的(1)  一致的(1)  旺盛的(1)

優越的(1)  明快的(1)

6. 中国語の形容詞が日本語と品詞性が違う要因

6.1 中国語と日本語の形容詞の定義

中国語の形容詞について、《实用汉语语法大辞典》は次のように定義している。

【形容词】通常指表示人或事物的形状,性质或者动作,行为,发展变化的状态的词。

訳:普通人間あるいは事物の形状·性質あるいは動作·行為·発展変化の状態を表す言葉を指す。

日本語の形容詞と形容動詞の定義について、『国語学研究事典』の説明を参照したい。

【形容詞】用言の一品詞名。(1)客観的な事物·事柄の性質(色彩を含む)·状態を表すとともに、(2)主観的な心に感じる感覚や感情を表す品詞。ただし、両者を明確に分けられない場合もある。

【形容動詞】用言の一品詞名。事物·事柄の性質·状態を表す品詞。意味上、形容詞と似通っているが、語尾活用が異なり、当然語源も異なっている。

上の中日形容詞の定義からわかるように、中国語の形容詞は事物の性質·形状を表す点では、日本語の形容詞·形容動詞と一致しているが、「動作·行為·発展変化の状態を表す」点は日本語と違っている。例えば、“充实、一致、完备、洗练、兴奋、紧迫”などの言葉は中国語で動作の結果の状態などを表す形容詞として扱われているのに対して、日本語ではそれらは全部「する」といっしょにサ変動詞として使われている。また“干燥、混乱、繁荣、和睦、过热”などの言葉は、中国語では動作性を持たない状態·性質を表す形容詞であるのに対して、日本語では状態の変化を表すサ変動詞として使われている。

6.2 中国語での動詞や名詞の形容詞化

中国語の形容詞はもともと動詞や名詞であった言葉が少なくない。张国宪(2006)は中国語での名詞と動詞の形容詞化について論じている。名詞の形容詞化の例として、“热门”“正宗”“正统”“阳光”などを、動詞の形容詞化の例として“凝固”“腐朽”などを取り上げているが、数が限られているし、言葉の歴史的な変遷を通時的に考察していない。楊華(2009)は名詞から形容詞に転化した例として“标准,道德,典型,规范,规矩,科学,……”などを挙げている。

日本語の名詞の形容詞化について、村木新次郎(2009)は「名詞に固有な(広義の)実体の意味を失い、その代償として、事物の性質·様子の意味を獲得し、形容詞化している」と指摘している。中国語の名詞の形容詞化はもっと複雑であると思われる。調査語の“规则、系统、重要、性感、精彩、壮观、大胆、美观、文明、矛盾、良性”などは名詞から形容詞化した例である。その中の「壮観」「大胆」「重要」は日本語でも形容動詞の語幹として用いられている。

日本語では漢語は基本的には名詞として扱われている。「する」をつけてはじめて動詞として成り立つ。一部の中国語で動詞から形容詞化した中日同形語は日本語でまだもとの動作性が保たれて、「する」といっしょにサ変動詞として使われているので、両者の品詞性の違いを形成してしまったのである。例えば、調査語の“洗练”について見てみよう。《汉语大词典》に次の三つの意味が書いてある。

(1)清洗磨练。谓修身养性。(2)提炼。(3)简练。多形容语言,文字,技法,动作,艺术风格等。

(1)と (2)は動詞で、(3)は動作の結果の状態を表している。(1)(2)(3)の意味の変遷と用例の時代性から“洗练”という言葉の品詞性の転化がわかる。“洗练”はもともと他動詞で、日本に伝わって、「洗練する」の形で他動詞の意味を表し、「洗練された」という受身の形で現代中国語の“洗练”と同じ意味を表す。「乾燥する」「完備する」などのサ変自動詞は「乾燥した」「完備した」の形で中国語の“干燥”“完备”と対応しているので、「洗練する」と大きく異なっている。調査語の“遗憾、一致、卫生、过度、完备、兴奋、合法、合理、充实、深刻、洗练、悲观、乐观、潜在”などは動詞から形容詞化した言葉である。

7. おわりに

本研究は記述方式の調査データに対する分析を通して、中国語で形容詞である同形同義語が日本語で形容動詞である場合、品詞性の誤用が少ないこと、日本語で名詞だけである場合とサ変動詞である場合、品詞性の誤用が起こりやすいこと、中国語で形容詞である同形異義語の誤用の実態が複雑であることが分かった。また中国語の形容詞が日本語と品詞性が違う要因は中国語と日本語の形容詞の定義の違いと中国語の動詞·名詞の形容詞化が挙げられるがわかった。

中国語の影響を克服するために、まず同形語であっても、意味用法が同じであるとは限らないという意識を持たせなければならない。日本語学習者に中日同形語の違いに気付いてもらえれば、誤用が大幅に減ると考えられる。

(1)中川正之.漢語から見える世界と世間.2005,p162

(2)10の大学は華東理工大学、東南大学、広州大学、広州商学院、南京師範大学、徐州師範大学、南京工業大学、南京信息工程大学、揚州大学、南通大学である。3年生は57人で、4年生は255人で、5年生は8人で、院生は10人である。

(3)中国語で形容詞である同形語は日本語での品詞性との対応関係によって次の12類に分類できる。

①中国語では形容詞で、日本語では名詞·形容動詞である言葉

重大 冷静 正確 新鮮 流暢 旺盛 重要 明快 安全 安静 厳重痛快 円滑 迅速 深刻 過度 合法 遺憾 大胆 大量 多様 幸運正式 均質 純情 多情 多病 低調 適度 著名 同様 異様 一様盲目 敏感 細心

②中国語では形容詞で、日本語では形容動詞である言葉

濃厚 柔軟 切実 鮮明 陰鬱 典雅 唐突 頑強

③中国語では名詞·形容詞で、日本語では名詞·形容動詞である言葉。

壮観 困難 艱難 必要 秘密 健康 雄弁 低調 中庸 廉価

④中国語では形容詞である、日本語では名詞である言葉

虚偽 唯一 快楽 感傷 美観 性感 漆黒 最大 合理 良性 衛生

哀愁 安寧 偽善 驚異 恒久 慈善 難聴 忠誠 長久 狂熱 危急

⑤中国語では名詞·形容詞である、日本語では名詞である言葉

文明 系統 規則 精彩 威風 下流 機械 規範 機密 教条 経典

虚栄 現代 光輝 光明 紳士 人道 正統 全面 痴情 体面 典型

美貌 標準 風光 文明 芳香 煩悩 模範 陽光 空洞 虚栄 遜色

⑥中国語では形容詞·他動詞である、日本語では名詞·サ変自動詞であ

る言葉

繁栄 充実 激動

⑦中国語では形容詞·他動詞である、日本語では名詞·形容動詞である

言葉

清楚 明確 温暖 可憐 奇怪 強固 強壮 堅固 健全 潤滑 純潔

清潔 疎遠 怠慢 端正 淡泊 放縦 明白

⑧中国語では形容詞である、日本語では名詞·サ変自動詞である言葉

完備 潜在 混乱 緊迫 過熱 一致 優越 和睦 苦悶 傑出 謙遜

困苦 混濁 充足 焦燥 卓越 繁茂 煩悶 肥大 疲労 飽満 練達

歓喜 急進 驚愕 狂喜 驚喜 恐懼 恐怖 緊張 勤労 苦悩 激憤

結実 倦怠 合格 左傾 持久 執着 消沈 衰弱 専制 善戦 造作

相似 頽廃 達観 低迷 透徹 腐敗 憤慨 憤怒 偏執 勇躍 類似

⑨中国語では名詞·形容詞である、日本語では名詞·サ変自動詞である

言葉

矛盾 衝動 分岐

矛盾 国語大辞典では形容動詞としても扱われている。

形容動詞の使い方が定着しなかった。今消えたと言ってもいい。

⑩中国語では形容詞·他動詞·名詞である、日本語では名詞·サ変自動詞である言葉

興奮

中国語では形容詞である、日本語では名詞·サ変他動詞である言葉

鎮静 洗練 楽観 悲観 適用

瑏瑢中国語では形容詞である、日本語では名詞·サ変自他動詞である言葉乾燥

品詞認定は辞書によって異なる場合もあるが、多数の辞書の一致しているものに従った。例えば、「乾燥」の品詞性について、次のいくつかの辞書の扱いを並べておく。

『岩波国語辞典』:名·ス自他

『明鏡国語辞典』:名·自他サ変

『大辞林』:(名)スル

『大辞泉』:[名](スル);[名·形動]

『日本国語大辞典』:[名][形動]

『ベネッセ表現読解国語辞典』:名詞·動詞(サ変·自他)

「乾燥」を形容動詞として扱うのは『大辞泉』と『日本国語大辞典』だけで、しかも「無味乾燥」という四字熟語の場合に限るので、「乾燥」だけは形容動詞と認めないことにした。

(4)コーパスのアドレスはhttp://ccl.pku.edu.cn:8080/ccl_corpus/search?dir =xiandaiである。

(5)調査文と参考訳文は次の通りである。訳文は一つとは限らない。下線で示された調査語は調査のとき、下線が付いていなかった。

1.就寝时要保持安静。

就寝の時、静かにしてください。

就寝時に静かにしてください。

2.这个人很虚伪。

この人はとても不誠実だ。

「不誠実」という言葉は講談社『中日辞典』の訳語ですが、意味の幅が広いので、中国語の「虚偽」に対応しているとは限らない。

3.说话要文明。

礼儀正しく話しなさい(話すべきだ)。

きれいな言葉遣いをすること。

4.他的态度十分鲜明。

彼の態度ははっきりとしている。

5.系统学习中医理论。

系統的に漢方理論を習う(学ぶ)。

6.物价稳定,市场繁荣。

物価も安定し(ていて)、市場も繁栄している。

7.温室效应的后果十分严重。

温室効果の結果が非常に深刻である。

8.没想到他答应得特别痛快。

思いがけないことに、彼は即座に承諾(応諾·承知)してくれた(くださった)。

9.必须把事故原因调查清楚。

事故の原因を明らかにさせなければならない。

10.这里的人文氛围特别浓厚。

ここは文化的な雰囲気に満ちている。

ここの文化的な雰囲気が(きわめて)濃厚である。

11.经贸合作面临着重大机遇。

経済貿易の協力が重大なチャンスを迎えている。

12.过度忧虑确实会严重地损害健康。

過度に憂慮するの(過度な憂慮)は確かにひどく健康を害する。

13.他说话圆滑而机敏,举止沉着而冷静。

彼は話がうまくて賢いし、行動も落ち着いて冷静だ。

彼は利口で機転がきくし、振る舞いも落ち着いて冷静だ。

14.大胆的决策,来自对信息透彻正确的分析。

大胆な決定は透徹した正しい情報分析に基づいている。

大胆な政策決定は徹底した正しい情報分析から来ている。

15.宽带的普及推动了网上购物的迅速发展。

ブロードバンドの普及はネットショッピングの急速な発展を促進した(推し進めた)。

日本語では「迅速」は人にしか使われない。

16.中国外交部已就这个问题发表了严正声明。

中国外交部はこの問題に関して厳正な声明を発表した。

「厳正」の意味は中国語と日本語で微妙に違う。

中国語では「厳粛で正当だ」であるが、日本語では「厳格で公正だ」という意味である。

17.心里充满了感伤的情绪。

胸は感傷的な(感傷の)気持ちでいっぱいだ。

感傷的な気分に浸っている。

18.体育馆里各种器械很完备。

体育館にはいろいろな運動器具が完備している(充実している)。

体育館には様々な運動器具が揃っている。

19.整个城市布局非常规则。

町並み全体が整然としている(規則正しく並んでいる)。

20.其实我现在的心情很矛盾。

実は、今の私の気持ちが矛盾している。

21.这里空气新鲜,光线充足。

ここは空気が新鮮で、光もたっぷりだ。

ここは空気がおいしく(うまくて)、日光が充足している。

22.当晚我兴奋得根本无法入睡。

その晩、私は興奮して全然眠りにつくことができなかった。

23.这里的唯一交通工具是骆驼。

ここの唯一の交通手段は駱駝だ。

24.度过一个既充实又快乐的暑假。

充実した楽しい夏休みを過ごした。

楽しく充実した夏休みを過ごした。

25.目前的教育有许多潜在的问题。

今日の教育に多くの問題が潜在している。

今の教育には潜在的な問題がたくさんある。

26.比赛场面壮观激烈,惊心动魄。

試合の場面は壮観激烈で、はらはらさせられた。

試合は激しくて、はらはらさせられた。

両チームの熾烈な戦いに、はらはらさせられた。

27.在这危急关头,他显得十分镇静。

この危急の瀬戸際で、彼は実に沈着冷静であった。

ピンチな時に(緊急時に)、彼は冷静に見えている。

28.创造美观优雅的生活环境。

きれいで優雅な(優美な)生活環境をつくる(創造する)

優雅で美しい生活環境を作る。

29.她,依旧显得年轻漂亮,性感迷人。

彼女は、相変わらず若くて美しく、魅力的である(魅力に満ちている)。

彼女は依然として若くてきれいで、セクシーに見える。

30.田野里一片漆黑,只有几点荧火偶尔闪过。

田畑は真っ暗で、数匹の蛍が点滅しながら通り過ぎただけである。

31.空气平常比较干燥,容易发生森林火灾。

空気がふだん(わりに)乾燥しているので、森林火災が起こりやすい。

32.我踏着柔软的草地,尽情地领略着大自然的美景。

柔らかい草地を踏みながら、思う存分に自然の美しい風景を味わっている。

美しい自然の景色を存分に楽しんでいる(満喫している)。

33.律师收费管理混乱的确是目前比较突出的问题。

弁護料の杜撰な管理は今確かに突出している問題である。

弁護料の管理が混乱しているのは今確かに際立っている(目立った)問題である。

34.保护大自然,维持生态平衡是当今最紧迫的问题。

自然を守り、生態系のバランスを維持するのは当今の最も緊迫している問題である。

35.造型洗练优美。

造形(デザイン)が洗練されて、優美である。

「洗練する」は他動詞で、受身の形で使われる場合が多い。

36.近几年房地产开发过热。

ここ数年不動産の開発が(は)過熱している。

37.在这个问题上你应该明确表示态度。

この問題に関しては、あなたははっきりと態度を示すべきだ。

このことについて、明確な態度を示すべきだ。

38.人们对亚洲经济增长前景更加乐观。

人々はアジア経済の先行きをもっと楽観している(楽観視している)。

人たちはアジアの経済成長をもっと楽観的に見ている。

39.企业应该运用合法手段获取最大利润。

企業は合法的な手段を用いて最大の利益(利潤)を得る(獲得す)べきである。

40.教授用流畅的英语,作了十分精彩的报告。

教授は流暢な英語で、すばらしい講演をした。

41.经过长时间的辩论,大家的意见归于一致。

長時間の議論を経て、みんなの意見が一致した。

42.许多年轻人对将来能否拿到养老金十分悲观。

多くの若者たちは将来年金がもらえるかどうかとても悲観的である。

多くの若者たちは将来年金がもらえるかどうかを悲観している。

43.令人遗憾的是,这项技术至今没有得到推广。

残念(遺憾)なことに、この技術はまだ普及されていない(広く利用されていない)。

「遺憾なことに」「遺憾ながら」は改まった場合に使われる。政治家の言葉である。

44.合理开发利用海洋资源,切实保护海洋生态环境。

合理的に海洋資源を開発利用し、しっかりと海洋の生態環境を守る(保護する)。

合理的に海洋資源を利用し、本腰を入れて(着実に)海洋生態環境を守る。

45.消费和投资需求旺盛,有利于经济实现良性循环。

消費と投資の需要が旺盛で、経済の良(よい·良性的な)循環に有利である。

46.对孩子来说,和睦的家庭比优越的经济条件更重要。

子供にとって、むつまじい家庭は優越した経済条件よりもっと大事だ(重要·大切だ)。

47.随着明快流畅的旋律,我的思绪飘向了那遥远的地方。

明快で流暢なメロディーにつれられて(従って)、私の思いははるかな彼方へ馳せた。

明るく流暢なメロディーを聞きながら、私の思いは遙か彼方に漂っていった。

48.盲目开发给中国在世界遗产保护方面留下了深刻教训。

盲目的な開発は世界遺産の保護において、中国に深い教訓を与えた。

無謀(無計画)な開発は中国の世界遺産保護に深い教訓を与えた。

49.大量事实证明,越是简洁的商标越容易在人的脑海中留下深刻印象。

簡潔な商標ほど人々の脳中に残りやすいことは数多くの事実によって証明された。

50.据世界卫生组织的调查,世界上有70%的人口喝不到安全卫生的饮用水。

世界保健機関の調査によると、安全で衛生的な飲用水が飲めない人は世界人口の70%をも占めているそうだ。

(6)「優越的」は日本語でもあまり使われないが、『広辞苑』で「優越的」の使い方が次の5例が確認できたが、日本語学習者に「優越的」の使用を奨励しない。下線は筆者。

①上手に出る:優越的な態度をとる。

②【特権】特定の身分や階級に属する人に特別に与えられる 優越的な権利。

③【不公正取引】公正な競争を阻害するおそれのある取引行為。他の業者に対する不当な差別的取扱い、拘束条件付き取引、取引における 優越的地位の濫用など。

④【優位】すぐれた地位。優越的地位。上位。

⑤【我妻栄】民法学者。山形県生れ。民法を、判例を中心とした社会的現実との関連で体系化し、代表的な民法体系を構築。著「民法講義」「近代法における債権の優越的地位」など。文化勲章。(1897~1973)

(7)「清楚」という同形語は日本語でもめったに使われないし、意味も現在の中国語と違う。

日本語のテキストに日本語の語彙として現れる可能性がゼロに近いが、中国語でよく使われているので、それを正しく訳せるかどうか、「清楚」をそのまま使ってはならないことを知っているかどうか、調べたかった。

また、現代日本語の「清楚」の意味は古代中国語の“清楚”の意味の一つであったが、中国語でその意味用法が消滅してしまった。

(8)これらの言葉について筆者は『広辞苑』『岩波国語辞典』『明鏡国語辞典』を全文検索したが、用例が見つからなかったので、日本語に「~的」という言葉がないと判定したのである。たとえ個別的に使われている場合があっても、一般的な日本語の用法とは認められないので、日本語学習者にはその使用を奨励しない。

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