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依頼談話の構造

时间:2023-04-07 理论教育 版权反馈
【摘要】:依頼談話における「話段」について、第四章において既に話題·話者の目的という2つの指標からそれぞれの定義を述べたが、本節では、「話段」を特徴付けるものとして認められる発話機能·イニシアティブ·談話標識という3つの指標から、日本語による依頼談話から認定した「話段」の特徴を説明する。

依頼談話における「話段」について、第四章において既に話題·話者の目的という2つの指標からそれぞれの定義を述べたが、本節では、「話段」を特徴付けるものとして認められる発話機能·イニシアティブ·談話標識という3つの指標から、日本語による依頼談話から認定した「話段」の特徴を説明する。その上で、「話段」という単位を用いて、依頼談話の談話構造を分析した結果を述べる。

41例の依頼談話を分析した結果、日本人同士による依頼談話から【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】【依頼放棄】【追加】という6つの話段が認定できた。そのうち、【依頼放棄】話段を除く5つの話段は、依頼者と被依頼者の人間関係に関わらず、すべての依頼談話に共通して現れた。また、依頼談話において、上述した話段の出現回数は1回に限らず、特に【依頼】と【依頼応答】の2つの話段が2回以上現れるケースが多くある。その際、話段の出現順序にしたがって、それぞれ【依頼①】【依頼②】【依頼③】···のように番号をつけて示す。他の話段が繰り返して現れる場合も同様の表記を用いる。

それでは、具体的な例を挙げながら、それぞれの話段の特徴を述べる。

5.1.1.1 【依頼】

依頼談話の核心部分である【依頼】の話段は、依頼者が被依頼者に依頼の行為要求を行う部分である。本研究では、【依頼】の話段は談話の「開始部」の後のみではなく、【依頼応答】の後に繰り返して現れるケースも見られた。そのため、41例の依頼談話において、【依頼】話段が合わせて65回現れた。その出現順序によって見ると、【依頼①】【依頼②】【依頼③】という3つのバリエーションがある。すなわち、一つの依頼談話において、【依頼】が最大3回まで現れている。出現順序によって、65例の【依頼】話段を分けると、その内訳の詳細は表5-1に示すとおりである。

表5-1 出現順序による【依頼】の内訳

【依頼①】は依頼談話が成立する前提条件として、41例の依頼談話のはじめに現れ、依頼談話の核心の中の核心の存在と言える。【依頼①】は依頼者の「依頼」目的に応じて、依頼者の自主的な意識によって行われる行動展開である。

ここでは、【依頼】が3回現れる談話例を取り上げ、その談話例を参照しながら、日本語による【依頼】話段の特徴について述べる。(1)はその談話例である。

(1)【依頼】例(日No.16 JXF16—JY16p)

1)【依頼】における発話機能

表5-2 【依頼】におけるJX/JY[1]による発話機能の詳細

表5-2は、各【依頼】話段に見られる発話機能を依頼者と被依頼にわけてまとめたものである。まず、依頼者による発話機能を見ると、【依頼】話段において、依頼者は被依頼者に依頼の行為要求を行うため、発話機能の利用にバリエーションが多く、〈言い直し要求〉を除き、他の12種のものがすべて見られた。そのうち、〈意見要求〉〈情報提供〉〈談話表示〉という3種の発話機能が【依頼】話段の出現順序とは関係なく、【依頼①】【依頼②】【依頼③】にすべて見られた。すなわち、この話段において、依頼者は主に〈情報提供〉を用いて被依頼者に依頼に関する情報を伝えたり((1)のno2X)、〈意見要求〉を用いて依頼の意図を明示し、被依頼者の応答を求めたりする((1)のno12X)。また、〈談話表示〉を用いて、話段を開始したり((1)のno1X)、発話と発話を繋げたりする((1)のno6X)。

その一方で、この話段において、被依頼者は依頼に関する情報を収集するため、話段の出現位置に関係せず、主に〈注目表示〉という機能を用いた((1)のno1Y、no4Yなど)。

そこで、発話機能のカテゴリーから、【依頼】における依頼者JXと被依頼者JYの「かかわりあい」[2]をまとめてみれば、要求(談話表示)·提供(談話表示)-受容となっている。

2)イニシアティブ

杉戸他(1977)によれば、実質的な発話を多く発する参与者のほうがイニシアティブを握る。表5-2に示した発話機能の使用詳細から分かるように、【依頼】話段において、原則的に依頼者のほうがイニシアティブを握る((1)の【依頼①】と【依頼②】)。【依頼①】話段の途中で一時的に被依頼者の〈情報要求〉などによってイニシアティブが移る場合もあるが((2)のno1Y)、再び〈情報提供〉などによって依頼者のほうに戻り((2)のno3X))、依頼の意図を明示するまで依頼者に握られ続ける。【依頼②】と【依頼③】の場合、被依頼者の参与が少ない場合、依頼者による一方的な発話になる可能性もある。

(2)イニシアティブが一時的に被依頼者に移る談話例(日No.7 JXM8—JY8p)

3)談話標識

表5-2に示したように、【依頼】話段において、談話標識は依頼者の発話にも被依頼者の発話にも見られるが、主に依頼者によるものである。それは談話標識が基本的に実質的な発話に付随しているからである。具体的な表現形式として、以下のようなものが挙げられる。

【依頼①】

〈話題表示〉ちょっと相談があるんですけど/ちょっとお願いがあるんですがいきなり突然なんですけど/全然関係ないんだけど

〈談話表示〉接続表現:で、それで、だから、あと、なんですけど

フィラー:なんか、あの、えーと、えっ/え、なんかあのう/あのなんか

接続表現+フィラー:でなんか、であのう、それでなんか、でそれでなんか

【依頼②】

〈談話表示〉接続表現:で、それで

フィラー:え/えっ、なんか

接続表現+フィラー:でもなんか、でなんか、なんかそれで、でそれでなんか

【依頼③】

〈談話表示〉接続表現:で

フィラー:なんか

【依頼】の話段では、〈話題表示〉と〈談話表示〉の機能を持つ表現がともに見られた。そのうち、〈話題表示〉という発話機能は談話全体のテーマ展開に関わるものとして、依頼談話のはじめとなる【依頼①】にしか見られない。また、談話の展開に関わる〈談話表示〉という発話機能は、【依頼①】に見られる表現形式が【依頼②】【依頼③】より多い。それは、【依頼①】は【依頼②】と【依頼③】より、実質的な発話が多く発されているからである。

この話段における談話標識の具体像を述べると、次のとおりである。【依頼①】のはじめにおいて、依頼者は、〈話題表示〉という発話機能を持つ表現を用いて、依頼の意図を予告したり、話題を変えることを提示したりしている((2)のno1X)。その後、〈情報提供〉の発話に〈談話表示〉という発話機能を持つ表現を用いて((1)のno1X、(2)のno2X)、依頼用件に関する情報をテンポよく被依頼者に伝える。最後に、依頼者は〈行為要求〉〈意見要求〉〈情報要求〉〈意志表示〉という依頼の意図を明言する発話に〈談話表示〉を持つ表現を用い((2)のno6X)、1回目の依頼行動の締めくくりを行う。次に、【依頼②】と【依頼③】において、依頼者は談話のイニシアティブを自分側に戻すため、話段のはじめに〈談話表示〉という発話機能を持つ表現を用いる((1)のno16X)。また、新しい情報を補充するため、〈情報提供〉の発話に〈談話表示〉の機能を持つ表現を用いる((1)のno6X、no8X)。

その一方で、【依頼】話段において、被依頼者による実質的な発話が非常に少ないが、被依頼者は積極的に情報を獲得しようとするケースも見られ、その場合、被依頼者は発話権を得るため、〈情報要求〉の発話に〈談話表示〉という発話機能を持つ表現を先行する。

5.1.1.2 【依頼応答】

依頼談話のもう一つの基本構成要素となる【依頼応答】という話段は、被依頼者の依頼に対する応答を表明する発話の集合体である。41例の依頼談話において、【依頼応答】話段は合計68回見られた。それぞれ【依頼応答①】が41例の談話に、【依頼応答②】が21例の談話に、【依頼応答③】は6例の談話に見られた。

【依頼応答】は基本的に【依頼】話段の後に現れ、(1)のように、それぞれ【依頼①】→【依頼応答①】、【依頼②】→【依頼応答②】、【依頼③】→【依頼応答③】のように対応しているが、本研究では、依頼者の意志によって、依頼の達成を談話の途中、または最終段階で諦める場合もあるため、【依頼応答】は【依頼放棄】の後にも見られる。(3)はその談話例である。

(3)【依頼放棄】に応じる【依頼応答】(日No.26 JXF11—JY11s)

1)【依頼応答】における発話機能

【依頼応答】話段において出現した発話機能の詳細を表5-3に示す。

表5-3 【依頼応答】におけるJX/JYによる発話機能の詳細

表5-3に示したように、【依頼応答】において、被依頼者は依頼に対する応答を表明するため、発話機能のバリエーションが【依頼】話段により多く見られる。また、【依頼応答】の出現順序に関係なく、〈情報要求〉〈意見表示〉〈意志表示〉〈注目表示〉〈談話表示〉という5種の発話機能が見られる。具体的に言うと、被依頼者は〈情報要求〉の発話を用いて、依頼に関する情報を自分から質問したり、確認したりする((1)のno15Y)。そして、〈意見表示〉や〈意志表示〉の発話を用いて依頼に対する態度を表明する((1)のno14Y)。

その一方で、この話段において、依頼者は〈情報提供〉で被依頼者の要求に答えたり((1)のno15X)、〈注目表示〉と〈関係作り〉で被依頼者の応答に応じたり((1)のno13X)、感謝の意などを述べたりする。

また、発話機能のカテゴリーによって、【依頼応答】における依頼者JXと被依頼者JYの「かかわりあい」をまとめてみると、提供·受容-要求(談話表示)·提供(談話表示)·受容となる。

2)イニシアティブ

【依頼応答】話段では、話段のイニシアティブは基本的に被依頼者の方にあるが、依頼者は被依頼者の〈情報要求〉発話に応じたり、被依頼者の承諾に感謝を申し出たりするため、一時的に話段のイニシアティブを握るか((1)の【依頼応答②】)、話段の後半のイニシアティブを握る場合も見られる((3)の【依頼応答②】)。

3)談話標識

表5-3に示したように、【依頼応答】において、話段の出現順序に関係なく、談話標識となる〈談話表示〉という発話機能が被依頼者の発話に見られた。

具体的に言うと、被依頼者は〈情報要求〉〈意見要求〉〈言い直し要求〉など依頼者に情報や意見を要求する発話に((3)のno9Y、no10Y)、または〈情報提供〉〈意見表示〉〈意志表示〉など、依頼の応答を表明する発話に((4)のno11Y)、〈談話表示〉という発話機能をもつ表現を加え、異なる意図の発話をうまくつなげて、話段のイニシアティブの維持を実現する。

(4)【依頼応答】における談話標識(日No.5 JXF6—JY6p)

そこで、【依頼応答】に見られた談話標識の表現形式を以下のようにまとめる。

〈談話表示〉接続表現:で、じゃあ、でも、それで

フィラー:えっ、なんか、あの、あれ

5.1.1.3 【交渉】

【交渉】は依頼者と被依頼者が既に依頼に対して、「実現させる」という共同認識ができた上で行われる発話の集合体である。両者が共通の目的、すなわち「録音を実行する時間と場所を決める」という共通の目的でやりとりを行う。なお、【依頼応答】で被依頼者の時間付きの承諾をもらったり、依頼者の意志で【交渉】を行わなかったりするケースも見られ、【交渉】の話段がすべての談話に見られるわけではない。今回の調査で、41例の談話に35例の談話において、【交渉】話段が見られたが、そのうち、2例の【交渉①】【交渉②】が観察された。すなわち、【交渉】の話段は総計37例ということになる。(5)は【交渉】が2回現れる談話例である。

(5)【交渉①】【交渉②】が見られる談話例(日No.1 JXF1—JY1p)

1)【交渉】における発話機能

まず、この話段に出現した発話機能の詳細を表5-4に示す。

表5-4 【交渉】におけるJX/JYによる発話機能の詳細

表5-4から分かるように、【交渉】話段において、依頼者の発話と被依頼者の発話に見られた発話機能の種類に共通なものが多い。これは、この話段における依頼者と被依頼者の談話の目的が一致しているからだと考えられる。両者によるやりとりの過程として、〈意見表示〉〈情報提供〉の発話と〈意見要求〉〈情報要求〉の発話が交替に発され、両者の間で情報や意見の交換が行われ、最後に、〈注目表示〉の発話で、「録音する時間や場所」の決定結果に合意する((5)の【交渉①】【交渉②】)。なお、【交渉】話段において、被依頼者の発話における発話機能は依頼者より2種多く見られた。それは〈注目要求〉と〈情報提供〉という2つの発話機能である。主に依頼者が「録音する時間や場所」の決定権を被依頼者に委ねる場合、被依頼者は〈情報提供〉の発話で自分の都合を述べたり((5)のno32Y)、しばらく都合などを考慮して、〈注目要求〉の発話で自分の都合や意見を言い始めたりするためである((5)のno22Y)。

発話機能のカテゴリーによって、【交渉】における依頼者JXと被依頼者JYの「かかわりあい」をまとめると、要求(談話表示)·提供(談話表示)·受容要求(談話表示)·提供(談話表示)·受容となる。

2)イニシアティブ

両者による発話機能の使用種類からも分かるように、【交渉】において、両者はともに実質的な発話を多く発し、話段のイニシアティブは基本的に依頼者と被依頼者の間で交替されているが((5)の【交渉①】)、依頼者が「録音をする時間と場所」の決定権を完全に被依頼者に委ねる場合、イニシアティブは被依頼者のほうに長くある((5)の【交渉②】)。一方、依頼者が自ら提示した時間や場所で両者が合意した場合、イニシアティブが依頼者のほうに長くあるケースも見られる。

3)談話標識

【交渉】において、依頼者と被依頼者はともに実質的な発話を多く発するため、この話段において、話段の出現順序に関係なく、談話標識は両者の発話に見られた。依頼者は〈情報要求〉〈意見要求〉〈情報提供〉などの発話に〈談話表示〉の表現を先行し、依頼談話を【交渉】の話段に導入する((6)のno10X)。また、〈意見表示〉や〈意見要求〉の発話に、〈談話表示〉の表現を用い、交渉の結果としてまとめ、【交渉】の話段を終了させる((6)のno19X)。同じく、被依頼者は〈意見表示〉〈意見要求〉〈情報要求〉などの発話に〈談話表示〉の表現を用い、「録音をする時間と場所」についての意見を述べ、話段を前に進めたり((5)のno32Y)、依頼者に情報を要求したりする((5)のno23Y)。

(6)【交渉】における談話標識(日No.39 JXF6—JY6j)

最後に、【交渉】における談話標識の表現形式は以下のようにまとめられる。

〈談話表示〉接続表現:じゃ/じゃあ、でも、それで、で

フィラー:なんか、えっ、えーとね

接続表現+フィラー:それでなんか、えっじゃあ

5.1.1.4 【収束】

依頼談話の結びとして、【収束】という話段が現れる。ただし、録音の条件や会話の状況などによって、【収束】という話段が見られない談話例も少なくない。同時に、【収束】の後に、また他の話段が現れる場合、【収束②】【収束③】が見られる談話例もいくつかある。数字で言うと、41例の依頼談話に合計48個の【収束】話段が現れた。そのうち、【収束①】は40例の談話に見られ、【収束②】は8例の談話に見られ、【収束③】は1例の談話に見られた。(7)は【収束】が3回見られる談話例である。

談話例(7)に見られるように、【収束】の話段は依頼談話の結びとして、【交渉】のあとか、依頼談話の終わりに現れるが、(7)の【収束①】のように、【応答】の後、依頼談話の節目として、いったん【収束①】が現れるケースも見られた。

(7)【収束①】【収束②】【収束③】が見られる談話例(日No.4JXF5—JY5p)

1)【収束】における発話機能

【収束】において出現した発話機能の詳細を表5-5に示す。

表5-5 【収束】におけるJX/JYによる発話機能の詳細

【収束】という話段は依頼談話の終わりとして、依頼者は〈関係作り〉の発話で依頼の念押しとして挨拶したり((7)のnoX15、noX24)、感謝や詫びの意を述べたりする。一方、被依頼者は〈注目表示〉の発話で依頼者の気持ちを受け止め、談話の終了に同意する((7)noY29)。なお、今回の調査で【収束③】は1つの談話例にしか現れなかったため、それを除き、【収束①】【収束②】のみで考察すれば、被依頼者の発話にも〈話題表示〉〈談話表示〉〈関係作り〉の発話機能が見られる。

以上、【収束】話段における依頼者JXと被依頼者JYの「かかわりあい」をまとめると、受容(話題表示)(談話表示)受容(話題表示)(談話表示)となる。

なお、今回の調査で、41例の依頼談話において、「依頼」が成功したのは40例であるが、失敗した談話も1例ある。すなわち、被依頼者が「依頼」を断った談話例である。その際に、【収束】の話段が上述したような簡単な挨拶で終わるのではなく、被依頼者からより多くの発話が見られた。これは、被依頼者は自分の断りで生じた気まずさを吹き払うため、自分の断りを正当化し、依頼者の理解を求めたりしている。(8)はその談話例である。

(8)「依頼」が失敗した談話における【収束】(日No.26 JXF11—JY11s)

2)イニシアティブ

【収束】は依頼談話の終わりとして、全体的に発話数が少なく、イニシアティブは主に話段を開始させる話者のほうにある。また、依頼者か被依頼者かどちらからも依頼談話をこの段階に導入する可能性がある。日本語による依頼談話においては、依頼者と被依頼者の両方からの導入が見られたが、依頼者によるケースが圧倒的に多く見られた。

3)談話標識

表5-5に示したように、談話標識となる〈話題表示〉と〈談話表示〉の表現はともに依頼者と被依頼者に用いられた。また、両者による使い分けも同じように見える。すなわち、依頼者または被依頼者は〈話題表示〉の表現を単独に発したり、〈関係作り〉の発話に〈談話表示〉の表現を用いたりして、依頼談話を終了の段階に導入する。それぞれに分けて述べると、依頼者により話段が導入される際に、依頼者は〈関係作り〉の発話に〈話題表示〉〈談話表示〉の表現を用い、被依頼者に感謝などを述べ、談話を終了したい意思を被依頼者に浸透する。被依頼者はそれに応じて、〈関係作り〉や〈注目表示〉の発話で終了に同意する((7)の【収束①】)。逆に、被依頼者により話段が導入される際に、被依頼者は〈意志表示〉〈情報要求〉などの発話に〈談話表示〉〈話題表示〉の表現を用い、依頼者に談話を終了したい意図を伝え、依頼者がそれに応じて、〈関係作り〉の発話に〈話題表示〉〈談話表示〉の表現を用い、被依頼者に感謝などを述べながら、談話を終了することに同意する。(9)は被依頼者により【収束】が開始される談話例である。

(9)【収束】における談話標識(日No.24 JXM8—JY8s)

5.1.1.5 【依頼放棄】

【依頼放棄】は41例の依頼談話において、わずか3例であり、2例の談話に見られた。第四章で話段の定義で述べたように、この話段は依頼者が依頼の達成を一時的に放棄するか結果的に放棄するかを表す部分として、話段の構成が非常にシンプルに見える。具体的に説明すると、依頼者は〈意見表示〉という発話機能を用いて、1発話で被依頼者に「依頼を諦める」という意思を伝えることで終わる。具体的に言うと、依頼者は3例の【依頼放棄】において、すべて「あ」というフィラーによって被依頼者の注意を喚起してから意図を表明する(10)。また、依頼者が依頼という目的を放棄するのは主に【依頼放棄】の前の【依頼応答】話段で、被依頼者の不都合や承諾に消極的な態度を察して、その上で、【依頼応答】話段の後、沈黙が現れた場合である。

(10)14X:あ、まあ、無理ならいいんですけど、(日No.26 JXF11—JY11s)

5.1.1.6 【追加】

【追加】という話段は定義で述べたように、その出現には随意性がある。依頼者による【追加】と被依頼者による【追加】という2種のものに分けられる。今回の調査で、41例の依頼談話において、8例の依頼談話に【追加】が見られた。そのうち、依頼者によるものと被依頼者によるものは4例ずつある。また、【追加】において、依頼者による発話には一つの共通点が見られた。すなわち、【追加】がどちらによるものかに関らず、依頼者の発話にはすべて依頼用件に関する情報を補充する内容が見られる。さらに、補充された内容はほとんど同じ、「プライバシーに関することが守られる」という1点の情報である。(11)と(12)はそれぞれ依頼者による【追加】と被依頼者による【追加】の談話例である。

(11)依頼者による【追加】(日No.39 JXF6—JY6j)

(12)被依頼者による【追加】(日No.4 JXF5—JY5p)

(11)と(12)において、最初に現れた依頼者と被依頼者の発話をみれば分かるように、【追加】が談話の終わりを示す【収束】の後で現れたため、【追加】を起こす話者は〈情報提供〉〈情報要求〉〈意見表示〉など機能を持つ実質的な発話に、〈談話表示〉の表現を用い、話段の開始を実現することが分かる((11)のno22X、(12)のno25Y)。

5.1.1.7 まとめ

以上、日本語による依頼談話に現れた【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】【依頼放棄】【追加】という6つの話段について、それぞれ例を挙げながら説明してきた。そのうち、【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】について、発話機能·イニシアティブ·談話標識という3つの指標からそれぞれの特徴を明らかにした。最後に、この4つの話段の特徴をまとめると、表5-6のようになる。

この4つの話段の特徴をそれぞれの話段の定義と関連してみれば分かるように、話段における依頼者と被依頼者の目的が異なる場合、依頼者と被依頼者の間に見られる「かかわりあい」が異なり、意図を伝達する目的を持っている方に発話機能のカテゴリーがより多く見られ、原則的にイニシアティブが保持される。例えば、【依頼】と【依頼応答】の2話段である。一方、話段における依頼者と被依頼者の目的が一致する場合、依頼者と被依頼者の間に見られる「かかわりあい」も一致するようになり、イニシアティブも両者の間で交替される。例えば、【交渉】と【収束】の2話段である。

また、すべての話段において、談話標識が見られた。具体的に言うと、テーマの展開と関わる〈話題表示〉は談話のはじめとなる【依頼】および終わりとなる【収束】にしか見られないが、〈談話表示〉はすべての話段に見られた。

表5-6 日本語による依頼談話における話段の特徴

本小節では、上述した「話段」に基づき、日本語による依頼談話の構造を分析する。また、共通して取り出せるものがあるかどうかを確認し、構造の類型化を試みる。さらに、依頼者と被依頼者の人間関係、つまり上下関係の有無により、依頼談話の構造に相違があるかどうかを考察する。

まず、41例の依頼談話にどのような話段がどのような順番で現れたかを調べた。その結果を表5-7に示す。

表5-7 日本語による依頼談話の「話段」構成

(依頼者と被依頼者の人間関係によって資料番号を網かけして区別する)

表5-7に示したように、依頼談話の話段構成には多くのバリエーションが見られる。また、依頼者と被依頼者の会話状況およびやりとりの進展によって、先に挙げた6つの話段がすべての談話に見られるわけではない。すなわち、本研究のような自然会話に近い依頼談話の場合、談話の展開には予測不可能な面が強く、膨大なデータ量がない限り、談話構造を類型化するのは容易なことではない。そこで、本研究では、41例の談話データから談話構造の特徴を見出すため、本研究で設定された依頼用件から考えられるプロトタイプ的な構成となる【依頼】→【依頼応答】→【交渉】→【収束】という構造パターンをベースにして、依頼談話の基本構成となる【依頼】と【依頼応答】という2つの話段を軸に、その出現位置と出現回数などの特徴によって、41例の日本語による依頼談話の「話段」構成から、以下の3つの構造パターンを抽出した。

1)基本型:【依頼】→【依頼応答】→(【交渉】→【収束】→【追加】→【収束】)

この種の構造パターンを「基本型」と命名したのは、本研究で設定された依頼用件によって、依頼者と被依頼者の目的を実現するには最も典型的な構成だと考えられるからである。Ⅰの()で囲まれた話段は談話例によって現れないか、繰り返して現れるかというバリエーションが見えるものを表す。そこで、【依頼】→【依頼応答】→【交渉】→【収束】という構造パターンを基本型の「典型的構成」と呼び、他のものを「非典型的構成」と呼ぶ。その詳細は以下のようである。

「典型的構成」

【依頼】→【依頼応答】→【交渉】→【収束】

「非典型的構成」

【依頼】→【依頼応答】→{【交渉】→【収束】}[3]

【依頼】→【依頼応答】→【交渉】→【収束】→【追加】→【収束】

【依頼】→【依頼応答】→【収束】→【交渉】→【収束】→【追加】→【収束】

2)反復型:{【依頼】→【依頼応答】}→(【交渉】→【収束】→【追加】→【収束】)

文字通りに、依頼談話の核心となる【依頼】→【依頼応答】という2話段のやりとりが2回以上(2回も含む)繰り返して現れる構造パターンである。このやりとりの繰り返しは、被依頼者の応答に応ずるものと依頼者の自主判断によるものという2つの契機によって起こる。Ⅱの()で囲まれる話段は談話例によって現れないか、繰り返して現れるかというバリエーションが見えるものを表す。そこで、{【依頼】→【依頼応答】}→【交渉】→【収束】という構造パターンを反復型の「典型的構成」と呼び、ほかのものを「非典型的構成」と呼ぶ。その詳細は以下のようである。

「典型的構成」

{【依頼】→【依頼応答】}→【交渉】→【収束】

「非典型的構成」

{【依頼】→【依頼応答】}→【交渉】→【収束】→【追加】→【収束】

{【依頼】→【依頼応答】}→【収束】→【追加】→【収束】

{【依頼】→【依頼応答】}→【収束】

{【依頼】→【依頼応答】}→【交渉】

3)放棄型:{【依頼】→【依頼応答】}→{【依頼放棄】→【依頼応答】}→【収束】

【依頼放棄】話段が見られる談話の構成を単独に取り出して、1種の構造パターンとして認めるのは、この話段の出現によって、談話において、依頼者による依頼の目的達成が一時的に放棄されるか、結果的に放棄されているかと見られ、その他の依頼談話と性質が異なるからである。今回のデータにおいては、【依頼放棄】という話段が2例の談話にしか見られなかった。2例の談話構成も少々異なり、それぞれ以下のようなものである。

ア、{【依頼】→【依頼応答】}→【依頼放棄】→【依頼応答】→【収束】

イ、【依頼】→【依頼応答】→{【依頼放棄】→【依頼応答】}→【収束】

ア、の場合、依頼者は2回の【依頼】話段で、被依頼者の不都合を了解し、沈黙の間も現れたため、依頼の達成を放棄すべきだと判断し、【依頼放棄】を用いたが、被依頼者は結局的に承諾の応答を出して、そこで、依頼談話が【収束】で終えている。それに対し、イ、の場合、被依頼者の【依頼応答①】において、被依頼者から依頼用件の実現についてほかの提案が出され、また【依頼応答①】の後、沈黙の間が現れたため、依頼者は【依頼放棄】を用い、被依頼者に断るチャンスを自ら提供した。なお、断りの気まずさを緩和するため、被依頼者はその後【依頼応答②】と【依頼応答③】を用い、断りの理由を述べたり、依頼者に新たな提案を示したりした。その後、依頼談話を【収束】で終えている。

この3つの構造パターンによって、41例の依頼談話を分類すると、基本型は20例、反復型は19例、放棄型は2例という内訳になる。放棄型を除き、基本型と反復型の例がほぼ同数である。さらに、依頼者と被依頼者の上下関係の有無により、依頼談話の構造パターンの出現傾向を見ると、表5-8のようになる。

表5-8 上下関係の有無による依頼談話の構造パターン

(小括弧の中の数字はそれぞれの構造パターンにおける典型的構成の談話数を表す)

表5-8から、依頼者と被依頼者の間の上下関係の有無による依頼談話の構造パターンの出現傾向が分かる。すなわち、JX-JYsの場合、反復型が基本型より多く見られるが、JX-JYpおよびJX-JYjの場合、基本型が反復型よりやや多く見られる。

注释

[1] 記述の便宜上、日本語同士の依頼者と被依頼者をそれぞれJXとJYで表記する。上下関係の有無によって、被依頼者を区別する場合、親しい先輩、親しい同輩、親しい後輩をそれぞれJYs、JYp、JYjで表記する。

[2] 複数の発話や文が対応し合って、他の参加者と協力し合うかかわりあい方として、発話機能による「かかわりあい」を見出すことができる。(ザトラウスキー1997:167,169)

[3] {}はその部分のやりとりが2回以上現れることを示す。

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