本節では、発話機能·イニシアティブ·談話標識という3つの指標から、中国語による依頼談話から認定できた「話段」の特徴を説明する。その上で、42例の談話における話段の構成を分析し、依頼談話の構造パターンをまとめる。
42例の依頼談話を分析した結果、中国人同士による依頼談話から【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】【依頼放棄】【追加】という6つの話段が認定できた。そのうち、【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】という4つの話段がすべての依頼談話に共通して現れたが、【依頼放棄】と【追加】という2話段は依頼者と被依頼者の間に上下関係がある種の談話にしか見られなかった。
6.1.1.1 【依頼】
42例の依頼談話において、【依頼】話段が合計77回現れた。その出現順序によってみると、【依頼①】から【依頼⑨】まで、という9つのバリエーションがある。すなわち、一つの依頼談話において、【依頼】が最大9回まで現れた。出現順序によって、77個の【依頼】話段の内訳を見ると、表6-1のようになる。
表6-1 出現順序による【依頼】の内訳
【依頼①】は依頼者の依頼という目的によって、依頼者が自ら行う依頼行動である。また、依頼談話が成立する前提として、42例の依頼談話のはじめに見られるが、その他の【依頼】は被依頼者の「依頼」に対する態度によるもの、依頼者の自主判断によるものかの2種類に分けられる。ここでは、【依頼】話段が3回現れている談話として(1)を取り上げ、【依頼】話段の特徴を説明する。
1)【依頼】における発話機能
【依頼】話段の出現順序によってその出現回数を考え、また日本語における分析と対照して見るため、77個の【依頼】話段のうち、【依頼①】から【依頼③】までの64個に見られる依頼者と被依頼者による発話機能の種類を表にまとめて、【依頼】における依頼者と被依頼者の「かかわりあい」を考察することにした。表6-2は【依頼】におけるCXとCYによる発話機能の詳細を示すものである。
(1)【依頼】(中No.13 CXF13—CY13p)
(1)日本語訳
表6-2 【依頼】におけるCX/CYによる発話機能の詳細
表6-2に示したように、【依頼】において、依頼者による発話機能のバリエーションが多く見られ、【依頼①】【依頼②】【依頼③】にはそれぞれ12種、10種、7種の発話機能が見られた。また、〈注目要求〉〈行為要求〉〈意見要求〉〈情報要求〉〈情報提供〉〈関係作り〉〈談話表示〉合計7種の発話機能は話段の出現順序に関係なく全部見られた。具体的に言うと、依頼者は〈情報提供〉の発話によって、被依頼者に依頼に関する情報を伝える((1)のno3X、no4Xなど)。〈行為要求〉((1)のno2X)〈意志表示〉((1)のno7X)〈意見要求〉((1)のno13X)などによって、被依頼者の応答を求める。また、〈関係作り〉の発話を用い、被依頼者との親密を言及する。さらに、〈談話表示〉の表現を用いて、上述した発話を繋げたり((1)のno3X)、【依頼】話段を再度開始したりする((1)のno18X)。その一方で、被依頼者は依頼の応答を表明するために、この話段において、主に〈注目表示〉の発話によって、依頼用件に関する情報を集めている((1)のno1Y、no2Yなど)。
従って、発話機能のカテゴリーによって、【依頼】における依頼者CXと被依頼者CYの「かかわりあい」をまとめれば、要求(談話表示)·提供(談話表示)·受容-受容となる。
2)イニシアティブ
表6-2から分かるように、日本語の場合と同じく、【依頼】話段において、依頼者のほうは原則的にイニシアティブを握る。話段の途中で一時的に被依頼者の〈情報要求〉や〈言い直し要求〉によってイニシアティブが移る場合もあるが、〈情報提供〉などによって再び依頼者の方に戻り、【依頼】話段の終わりまで依頼者に保持され続ける。しかし、【依頼①】以降の【依頼】話段においては、ほとんど(1)の【依頼②】【依頼③】のように、依頼者の一方的な発話からなる。なお、【依頼①】において、依頼者の一方的な発話で成立された話段も見られた。(2)はその談話例である。
(2)依頼者の発話のみからなる【依頼①】(中No.3 CXF3—CY3p)
(2)日本語訳
3)談話標識
【依頼】話段において、依頼者による実質的な発話が圧倒的に多いため、依頼者による〈談話表示〉がすべての話段に見られた。具体的な表現形式として、次のようなものが挙げられる。
【依頼①】
〈話題表示〉有个事儿/问你个事儿/我想起来个事儿/找你商量个事儿/这事儿是这样
(ちょっと用がある/ちょっと聞きたいことがある/一つ思い出したことがある/一つ相談したいことがある/こういうことだよ)
我有事想求你帮忙
(一つ助けてほしいことがある)
〈談話表示〉接続表現:那,然后,完了,所以/所以说
(じゃあ/それで、そして/それで、だから/だからといって)
フィラー:那个/那什么,就是/就/就是说
(なんか/あの、つまり)
接続表現+フィラー:然后那个,完了那个,然后就,完了就
(そしてなんか、そしてなんか、それでなんか、それでなんか)
メタ言語的発話:我跟你讲
(あなたに言うよ)
【依頼②】接続表現:那,然后,所以/所以说
(じゃあ/それで、そして/それで、だから/だからといって)
フィラー:就是
(なんか/あの、つまり)
接続表現+フィラー:然后那个
(そしてなんか)
【依頼③】接続表現:那
(じゃあ/それで)
以上のように、【依頼①】において、談話標識となる〈話題表示〉と〈談話表示〉の両方が依頼者の発話に見られるが、【依頼②】以降は〈談話表示〉のみとなる。表6-2には【依頼③】まで示したが、実は【依頼①】【依頼②】【依頼③】に示された例のように、その後の【依頼④】【依頼⑤】…においては、依頼者による〈情報提供〉がほとんどなくなったため、〈談話表示〉も見られなくなる。また、この話段において、被依頼者は〈情報要求〉などの実質的発話を発しているが、〈談話表示〉の表現を用いていない。
6.1.1.2 【依頼応答】
中国語による42例の依頼談話において、【依頼応答】の話段は全部で81例見られた。そのうち、【依頼応答①】が42例の談話に、【依頼応答②】が15例の談話、【依頼応答③】が8例の談話、【依頼応答④】が3例の談話、【依頼応答⑤】が2例の談話、【依頼応答⑥】が2例の談話、残りの【依頼応答⑦】【依頼応答⑧】【依頼応答⑨】【依頼応答⑩】がすべて1例の談話に見られた。この回数から分かるように、【依頼応答】という話段はすべて(1)のように【依頼】と対応しているわけではなく、ほかの話段と対応関係を持っているものもある。今回の調査では、日本語の談話例のように、【依頼放棄】に応じる【依頼応答】が1例の談話に見られたほかに、もう1種のものが見られた。それは、被依頼者は依頼者の次々強硬な【依頼】によって、依頼に承諾した後、【収束】の話段で依頼者がまだほかの協力者を探しに行くと聞いて、自分はやはり無理ということで、再度【依頼応答】を行い((3)の【依頼応答⑧】)、依頼の応答を変更しようとしたものである。
(3)【依頼応答】(中No.9 CXM9—CY9p)
(3)日本語訳
1)【依頼応答】における発話機能
【依頼応答】の発話機能について、【依頼】と同じように、【依頼応答③】までの65個の話段を取り上げてまとめる。表6-3はその詳細を示したものである。
【依頼応答】の定義通りに、この話段においては、被依頼者は依頼に対する応答を表明するため、依頼用件に関する情報を再確認したり、自分の態度を表明したりする。そのため、【依頼】と比べると、この話段における被依頼者による発話機能のバリエーションが多く見られる。その一方で、依頼者による発話機能は【依頼】と比べると、要求類が少なくなっているが、被依頼者とほぼ同数の種類が見られる。それは、【依頼応答】において、依頼者は被依頼者の〈情報要求〉に回答するのみではなく((1)のno14X)、被依頼者の発話に依頼の成功に不利なメッセージについて、直ちに〈意見表示〉で自分の主張を表明したり((1)のno10X、14X)、〈関係作り〉で被依頼者をほめたりすることによって((4)のno19X)、相手を説得するような行動を数多く行っているからである。
表6-3 【依頼応答】におけるCX/CYによる発話機能の詳細
以上より、【依頼応答】における依頼者CXと被依頼者CYの「かかわりあい」は提供(談話表示)·受容-要求(談話表示)·提供(談話表示)·受容となる。
(4)【依頼応答】(中No.22 CXF3—CY3s)
(4)日本語訳
2)イニシアティブ
表6-3から分かるように、【依頼応答】話段では、話段のはじめのイニシアティブは被依頼者の方にあるが、被依頼者の〈情報要求〉〈意見表示〉などの発話に積極的に反応している依頼者の発話によって、イニシアティブは依頼者と被依頼者の間で交替されることが多い((1)の【依頼応答②】、(4)の【依頼応答】)。
3)談話標識
【依頼応答】において、話段の出現順序に関係なく、談話標識となる〈談話表示〉は依頼者と被依頼者の発話にはともに見られた。これはこの話段において、依頼者と被依頼者はともに実質的な発話を多く発していることと関係があると思われる。
具体的に言うと、依頼者は〈情報提供〉〈意見表示〉などの発話に〈談話表示〉の表現を用いて、被依頼者に新しい情報や意見を提供する((5)のno16X)。一方、被依頼者は〈情報要求〉〈意見要求〉などの発話に〈談話表示〉の表現を用いて、依頼の応答を表明する発話とつなげて、話段のイニシアティブを保持し続ける((5)のno13Y、no15Y)。
(5)【依頼応答】における談話標識(中No.23 CXF4—CY4s)
(5)日本語訳
具体的な表現形式として、以下のようなものが挙げられる。
〈談話表示〉接続表現:但是,那,不过,然后
(しかし/でも、じゃあ、しかし/でも、そして)
フィラー:就是/就
(なんか)
メタ言語的発話:就这样
(こういうことなんだよ)
6.1.1.3 【交渉】
42例の中国語による依頼談話において、【交渉】という話段は33例しか現れなかった。そのうち、1例の未完成の【交渉】を除くと、一つの依頼談話に【交渉】が見られるのは1回のみである。また、【交渉】話段がすべての依頼談話に見られなかったのは、【依頼応答】で既に被依頼者の時間付きの承諾を得ている例のほかに、依頼者の意志で【交渉】を行わず、そのまま【収束】に入るケースも見られた。全体的に見ると、中国人による【交渉】において、時間や場所、特に時間についてあまり詳しく決めない傾向がある。(6)は【交渉】の談話例である。
(6)【交渉】(中No.12 CXF12—CY12p)
(6)日本語訳
1)【交渉】における発話機能
表6-4は【交渉】話段に見られた発話機能の詳細を示している。
表6-4 【交渉】におけるCX/CYによる発話機能の詳細
【交渉】においては、依頼者と被依頼者の目的が「録音の時間と場所を決めること」で一致しているので、その目的を達成するために、依頼者と被依頼者はお互いに情報を交換したり、意見を交わしたりするようなやりとりを行う。よって、表6-4に示したように、両者による発話機能のバリエーションには、共通のものが多く見られる。そのため、【交渉】における依頼者CXと被依頼者CYの「かかわりあい」は、要求(談話表示)·提供(談話表示)·受容—要求(談話表示)·提供(談話表示)·受容となる。
2)イニシアティブ
この話段においては、依頼者と被依頼者はともに実質的な発話を多く発しているため、話段のイニシアティブは基本的に両者の間で交替されている。
3)談話標識
【交渉】において、依頼者と被依頼者の実質的な発話に伴い、〈談話表示〉が多く見られた。詳しく述べると、依頼者は〈情報提供〉〈情報要求〉〈意見要求〉の発話に〈談話表示〉の表現を用いて、【交渉】を始めたり((6)のno7X)、依頼者か被依頼者は〈情報提供〉〈意見表示〉などの発話に〈談話表示〉の表現を用いて、「録音する時間と場所」についての決定を述べたりする((6)のno9X)。
【交渉】に見られる談話標識の表現形式は以下のとおりである。〈談話表示〉接続表現:那/那就,然后,所以
(じゃあ、そして、だから/それで)
フィラー:对了
(あ、そうだ)
接続表現+フィラー:然后那个
(そしてなんか)
メタ言語的発話:这样吧
(こうしようか)
6.1.1.4 【収束】
【収束】は依頼談話の結びとして、基本的に談話の終わりに現れるが、録音の条件や会話の状況などによって、【収束】という話段が見られない談話例もある。今回の調査において、中国語に依頼談話において、【収束】は合計40個見られた。また、【収束②】が見られた談話例は4例ある。そのうちの3例の談話においては、【収束①】に続き、【追加】という話段が現れたため、【追加】の後、再び【収束】で談話を終える。もう1例の依頼談話においては、【収束①】の後、依頼者は「録音する時間と場所」をまだ決めていないことに気づき、そこで、談話をいったん【交渉】に導き、その後、再び【収束②】で談話を終えた(7)。
(7)【収束①】【収束②】(中No.29 CXF12—CY12s
(7)日本語訳
1)【収束】における発話機能
表6-5は【収束】に見られた発話機能を示したものである。
【収束】において、依頼談話の結びとして、依頼者は主に〈意志表示〉の発話に、〈話題表示〉または〈談話表示〉の表現を用いて、【交渉】話段で決定された時間や場所などの情報を繰り返すことによって、「依頼」の念押しをしたり((7)のno10X)、〈関係作り〉によって被依頼者に感謝を申し出たりする((7)のno13X)。それに対して、被依頼者は〈注目表示〉で依頼者の〈意志表示〉の発話に同意を示したり、〈関係作り〉で依頼者の〈関係作り〉の発話に応じたりする。また、被依頼者によって開始された【収束】は2例の談話に見られた((8))。
以上より、発話機能のカテゴリーによって、【収束】話段における依頼者CXと被依頼者のCYの「かかわりあい」をまとめれば、提供(話題表示)(談話表示)·受容-提供(談話表示)·受容となる。
表6-5 【収束】におけるCX/CYによる発話機能の詳細
(8)【収束】(中No.30 CXF13—CY13s)
(8)日本語訳
2)イニシアティブ
先に述べたように、【収束】はほとんど依頼者によって開始されるため、この話段のイニシアティブは基本的に依頼者のほうにある。なお、【収束】において、被依頼者が自ら自分の都合を繰りかえす発話も見られたため、その際イニシアティブが一時的に被依頼者に取られるケースもある。
3)談話標識
【収束】という話段において、談話標識となる〈話題表示〉と〈談話表示〉は主に依頼者の発話に見られた。
具体的な表現形式としては、以下のように挙げられる。
〈話題表示〉メタ言語的な発話:那就这样/没事了吧
(じゃあ、こんな感じ/もう用がないよね)
〈談話表示〉接続表現:那/那就
(じゃあ/それじゃ)
6.1.1.5 【依頼放棄】
42例の依頼談話において、【依頼放棄】が現れたのはわずか1例である。依頼者は被依頼者の【依頼応答①】から被依頼者の不都合を了解し、直ちに【依頼放棄】を行い、自ら被依頼者に断りのチャンスを3回も提供したが、被依頼者は依頼者との人間関係を考慮しているようで、「忙しいけど、協力する」と積極的な意志を示し、最終的に「依頼」を成功させた。(9)はその談話例である。また、この談話例は依頼者が親しい先輩に依頼する談話である。
(9)【依頼放棄】(中No.32 CXF15—CY15s)
(9)日本語訳
6.1.1.6 【追加】
【追加】という話段は中国語による依頼談話において、4例の依頼談話に見られた。4例の依頼談話において、被依頼者による【追加】は2例で、依頼者による【追加】は2例である。被依頼者による【追加】の場合、日本語と同じように、被依頼者が依頼用件に関する情報をさらに求めて【追加】を行った。一方、依頼者による【追加】の場合、2例の談話例はそれぞれ異なる。1例の依頼者は「特に準備する必要がない」という情報を補充して、被依頼者の負担を軽減する使用とする((10))。もう1例の依頼者は被依頼者に頼む理由を述べて、さらに被依頼者の理解を求めている((11))。また、この2例はともに依頼者が親しい後輩に「依頼」する談話である。
(10)情報を補充する【追加】(中No.39 CXF4—CY4j)
(10)日本語訳
(11)理由を補充する【追加】(中No.37 CXF2—CY2j)
(11)日本語訳
6.1.1.7 まとめ
以上、中国語による依頼談話における【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】【依頼放棄】【追加】という6つの話段について、それぞれ談話例を挙げながら説明してきた。また、【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】について、発話機能·イニシアティブ·談話標識という3つの指標からそれぞれの特徴を明確にした。表6-6はその4つの話段の特徴をまとめたものである。
表6-6 中国語による依頼談話における話段の特徴
表6-6から分かるように、【依頼】【依頼応答】【交渉】【収束】という4つの話段における依頼者の発話には、受容というカテゴリーの発話機能、細かく言うと、受容における〈関係作り〉の発話機能がすべて見られた。また話段の目的に関係なく、依頼者は話段のイニシアティブを握ることが多い。一方、被依頼者の方は話段の定義どおり、【交渉】と【収束】の2話段において、依頼者との「かかわりあい」が均衡関係にあるように見えるが、【依頼】において依頼者の行動に協力する「かかわりあい」、【依頼応答】において自ら行動を行う「かかわりあい」があるように見える。最後に、談話標識となる〈談話表示〉がすべての話段に見られた。
上述した話段に基づき、中国語による依頼談話の構造を分析し、構造の類型化を行う。
42例の依頼談話における話段の種類および構成を調べた。表6-7はその結果を示したものである。
第五章と同じく、【依頼】→【依頼応答】→【交渉】→【収束】という構造パターンをベースにし、【依頼】と【依頼応答】という2話段を軸に、その出現位置と回数によって、42例の中国語による依頼談話の話段構成から、4つの構造パターンを抽出した。すなわち、日本語による依頼談話に見られた基本型、反復型、放棄型のほかに、回帰型という異例の構造パターンも見出された。
1)基本型
「典型的構成」
【依頼】→【依頼応答】→【交渉】→【収束】
「非典型的構成」
【依頼】→【依頼応答】
【依頼】→【依頼応答】→【交渉】
【依頼】→【依頼応答】→【交渉】→【収束】→【追加】→【収束】
【依頼】→【依頼応答】→【収束】→【交渉】→【収束】
【依頼】→【依頼応答】→【収束】→【追加】→【収束】
2)反復型
「典型的構成」
{【依頼】→【依頼応答】}→【交渉】→【収束】
「非典型的構成」
{【依頼】→【依頼応答】}
{【依頼】→【依頼応答】}→【収束】
{【依頼】→【依頼応答】}→【交渉】
表6-7 中国語による依頼談話の「話段」構成
3)放棄型
【依頼】→【依頼応答】→{【依頼放棄】→【依頼応答】}→【収束】
4)回帰型
回帰型の談話は、中国語による依頼談話に2例しか見られないが(表6-7のNo.9とNo.17)、自然談話のバリエーションの多様性を反映しているため、ここでは単独に構造パターンの一種として認識することにする。回帰型と呼ぶのは【交渉】の段階に入った後、または談話の終わりと見られる【収束】の後に、被依頼者による【依頼応答】が再び現れたことで、依頼談話の結果が変わる傾向が生じ、依頼者はそれを止めるため、また【依頼】を行い、依頼談話が最初に戻るような構造に変わったからである。今回の2例の談話の構造パターンは以下のとおりである。
ア、【依頼①】→【依頼応答①】→【交渉①】→【依頼応答②】→【依頼②】→【依頼応答③】→【交渉②】→【収束】
イ、{【依頼】→【依頼応答】}→【収束】→【依頼応答】→{【依頼】→【依頼応答】}
具体的に言うと、アの談話例において、【依頼応答①】で被依頼者の「依頼の承諾に肯定的」な態度を示されたため、依頼者は談話を【交渉】に導入しようとしたところ、被依頼者は前の応答を変えようとする【依頼応答②】を行い、そこで、依頼者は未完成の【交渉】を中止し、再度【依頼】を行い、被依頼者の承諾を求めている。同じく、イの談話例において、依頼者はまず7回も【依頼】を行い、やっと【依頼応答⑦】で被依頼者の承諾をもらったが、【収束】で依頼談話を終了しようとしたところ、被依頼者は【依頼応答⑧】で断りの意志を示し、承諾を撤回しようとした。そこで、依頼者はまた【依頼】を2回行い、再び被依頼者の承諾を得ている。
この4つの構造パターンによって、42例の依頼談話を分けると、基本型は24例、反復型は15例、放棄型は1例、回帰型は2例の内訳となる。さらに、依頼者と被依頼者の上下関係の有無により、この構造パターンの分布を見た。表6-8はその結果を示したものである。
表6-8 上下関係の有無による依頼談話の構造パターン
表6-8から分かるように、依頼者と被依頼者の間の上下関係の有無によって見ると、上下関係がある場合、すなわち被依頼者が依頼者の親しい先輩、親しい後輩である場合、基本型が反復型より多く現れる傾向があり、上下関係が無い場合、すなわち被依頼者が依頼者の親しい同輩である場合、基本型と反復型が同じ程度見られる傾向がある。なお、全体的には、基本型は反復型よりやや多く見られる。
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