「夏草や兵どもが夢の跡」と松尾芭蕉が奥州·平泉で詠んだとされる句を思い起こしたと言ったら失礼だろうか。
今年8月末、大手予備校の代々木ゼミナールは全国27校舎のうち20校舎を来春閉鎖すると発表した。これを受けて不動産会社が校舎や敷地の再利用·再開発に食指を動かしているとのニュースに接した感想だ。
とりわけ仙台駅東口から徒歩5分の一等地に建つ仙台校は垂涎の的になっており、9月18日付の読売新聞によれば、地元の不動産業者は角地に立つ仙台校の成り行きに強い関心を示しているという。
代ゼミは受験業界に君臨する予備校最大手だった。それが事業の縮小を余儀なくされ、400人規模の希望退職を募るという。いずれ古い校舎は解体され、かつて奥州藤原氏が栄華を誇った場所が夏草の茂る野原に変わり果てていたように、そこに代ゼミがあったことを思い出す人もいなくなってしまうのかもしれない。
多くの人たちに衝撃を与えた代ゼミの事業リストラ──しかし、それはとば口に過ぎない可能性が大きい。
代ゼミが規模縮小に追い込まれたのは、一つには受験生のニーズの変化に追いつけず、他の大手予備校との競争で劣勢に立たされたからだ。理系の学部を目指す受験生が増えているのにもかかわらず、私立文系コースをいわば売り物にしていた。東進ハイスクールなど他の大手予備校はネット配信授業を取り入れ、受講生が時間に縛られずに勉強できるようにしたのに代ゼミは大教室での授業が中心だった。
しかしそれ以上に大きいのは浪人生の激減である。少子化と大学数の増加で現役合格者が増えたため、ピークの1992年に29万4,000人いた浪人生は今や約8万人に過ぎない。この極端な市場の縮小が代ゼミの存立基盤を直撃したのだ。
実は市場の縮小は他の予備校の経営も揺るがしている。100年以上の歴史を持つ研数学館は2000年に廃校、関西の大手、大阪予備校も2006年に廃校に追い込まれた。
加えて2018年には18歳人口が一気に減少する「2018年問題」が待ち受けている。予備校のみならず学習塾や大学までもが顧客の減少に直面するのだ。
今後、教育産業はどのような変化を遂げるのだろうか。生き残るにはどうしたらいいのか。教育産業の変容は僕たちにどんな影響をもたらすのだろうか…。
浪人生の減少にさらされた他の大手予備校は学習塾と提携し、現役の高校生や小中学生を囲い込もうとしていた。東進ハイスクールを運営するナガセは2006年に四谷大塚を買収、2008年には河合塾が日能研と業務提携して中学受験向けの学習塾を共同で設立した。小中学生の時は学習塾で、大学受験は予備校でと、系列による一貫した教育サービスを提供しようと考えたのだ。
しかし、この戦略にも2018年問題が待ち構えている。
日本の人口は2008年の1億2,800万人をピークに減り始めているが、18歳人口は2009年以降も安定的に推移していた。2011年が120万人、2013年が122万8,000人で、2015年も120万人と予想されている。
ところが2018年から様相は一変する。同年は117万4,000人と2013年から5万人も減り、2024年には106万1,000人と110万人を割ってしまう。2013年からの約10年で16万人以上も減る計算だ。
18歳つまり高校3年生の人口減少は現役の大学受験市場の縮小を意味する。それだけではない。2018年以降の18歳人口の減少は子供たちの減少にほかならない。学習塾の存立基盤さえ危うくなってしまうのだ。
今後──2018年までの数年間で予備校、学習塾の再編はさらに進むだろう。その過程で経営体力や知名度に劣る中小規模の企業·事業者は撤退を余儀なくされるに違いない。もしかしたらナガセ、河合塾など大手の系列による寡占化が進むかもしれない。
通信教育の分野でもベネッセホールディングスなど大手が市場占有率を高めていくだろう。数多くの学習塾や予備校が提供する多様な教育サービスの中から自分に合った方法を選ぶ選択肢はずっと狭まってしまいそうだ。
2018年問題の影響が及ぶのは予備校·学習塾だけではない。大学もまた厳しい状況にさらされている。18歳人口は2018年には2013年から5万人減り、2024年には2013年から16万人減ると先に書いた。
これが大学の経営にどんな影響を与えるのかというと、大学進学率は5割前後なので2018年は2013年に比べて2万5,000人、2024年は2013年に比べて8万人も進学者が減ってしまう。つまり1,000人規模の大学がそれぞれ25校、80校も消滅してしまう数字なのだ。
日本の大学数は778校(短大を除く。文部科学省学校基本調査·2010年)なので80校とは実に10分の1の割合である。大学にとっては戦後で最も深刻な経営問題にほかならない。
大学は今、あの手この手で生き残りを模索している。慶應大学や早稲田大学は社会人を対象にした大学院を充実させているし、就職に有利なIT(情報技術)関連学科を導入した大学も枚挙に暇がない。著名人を客員教授などに招へいする大学も増えている。
さらに千葉工業大学が東京スカイツリータウン内にある商業施設、東京ソラマチに「東京スカイツリータウンキャンパス」を開設し、ロボットを展示するなどして行き交う人に存在感をアピールするなど、話題のスポットに拠点を設け、知名度と関心を高めようとする動きも活発になっている。
さらに今、多くの大学で開催されているオープンキャンパスでは、小·中学生に好印象を与え、将来、受験してもらおうといういわば青田買いの動きも目立っている。
大阪府にある近畿大学医学部が7月下旬に開いたオープンキャンパスでは、将来医師を目指す小中学生を対象に特別授業を開催し、100人を超える小中学生を集めた。「病理組織の観察」の授業ではがん細胞を観察、小·中学生たちは医療用の手袋をはめてがんに侵された肺などの感触も確かめたりしたという。東邦大学医学部·看護学部(東京都大田区)でもこの7月末、小学5、6年生を対象に「小学生夏の医学校」を開講し、カエルの心臓や血液を観察したりした。(8月28日のMSN産経west)
さらに慶應大学も大学院生が企画した「子どもサマースクール」を開講、参加した小中学生約150人が「アナウンサーに挑戦」「めざせ翻訳家」などの授業を受けたという。(8月22日のテレ朝news)
小中学生へのアピールが将来、受験生や入学者数の増加になって返ってくるのかどうかはもちろん未知数だ。大学側もそれはわかっているだろう。そうでもしなければという危機意識の強さの表れにほかならない。
教育産業を襲う淘汰の波は少なからぬ負け組を生んでいくだろう。教育事業から撤退する予備校や学習塾、キャンパスを閉鎖する大学のニュースが今後、新聞紙面を賑わせるかもしれない。
その一方で、厳しい競争は新たな教育を生む煉獄の役割をも果たすはずだ。国際化、国際情勢の混迷、人口減少、格差の拡大、技術進歩のスピードアップ、低成長…日本が抱える様々な難問に挑戦する、そんな人材を育む教育を実践できたら──2018年問題も乗り越えられるのではないだろうか。
(2014年10月24日『幻冬舎plus』)
単語
注釈
① 奥州·平泉
今日本岩手县平原町。奥州市为日本东北地方中部、岩手县西南部、胆泽平原的城市。为岩手县内人口第二多的主要都市。平泉在岩手县的南部、是西磐井郡唯一的町。
② 代々木ゼミナール
代代木讲座,本部设在东京涉谷区,在全国范围内有28家校区(其中3家为美术专科学校)。曾经和河合塾、骏台预备学校并称为日本三大预备学校。
③ 奥州藤原氏
奥州藤原氏是从前九年之役·后三年之役结束后宽治元年(1087年)至被源赖朝灭亡的文治5年(1189年)期间,以陆奥(后陆中国)平泉为中心,势力扩张至东北地区的豪族。据称为镇压天庆之乱藤原秀乡的子孙。
④ 東進ハイスクール
东进高校为永濑株式会社经营的高考预备学校,本部设在东京武藏野市吉祥寺。以关东地区为中心,拥有92家校区。算上连锁的东进卫星预备学校,在日本全国约有800家校区。
⑤ 研数学館
研数学馆,支持理科研究和教育的一般财团法人,本部设在东京千代田区。经营主体为财团法人研数学馆。在2000年3月前曾在东京、千叶县和埼玉县经营高考预备学校,后废校。
⑥ ナガセ
永濑株式会社,成立于1976年5月,经营东进高校、东进卫星预备学校等,提供各类教育信息及培训服务。
⑦ ベネッセホールディングス
倍乐生控股公司,成立于1955年1月,本部设在冈山市。其旗下集团公司主要经营通信教育、模拟考试、学生个别指导教育等与教育服务业相关的各个领域。
⑧ 東京スカイツリータウン
东京天空树城区,以高达634米的东京天空树为中心的大型综合商区,2012年5月开始营业。包括拥有300多家以上的商店、餐饮店的商业设施“东京天空城”、水族馆、星象馆、博物馆等各类娱乐场所。
⑨ 東京ソラマチ
东京天空城,东武城市天空城株式会社在东京墨田区运营的商业设施,2012年5月正式开业。拥有300多家商店、餐饮店,是东京天空树周边的主要商区之一。
⑩ 青田買い
企业为确保优秀人才,在招聘新职员前,提前与应届生签订内定合同。
思考問題
1. 数多くの予備校の閉校する原因をまとめて述べなさい。
2. 「大学は今、あの手この手で生き残りを模索している」とあるが、具体的に言えば何をしているのか。例を挙げて説明しなさい。
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