寒がりが3階建てアパートに入るなら、暖かい2階がお勧めだ。その暖はしかし、上下に人が住む面倒と引き換えになる。天井の物音には、遠慮がちに苦情を言うか、我慢するか。ではこちらもと騒げば、床下から文句が来る。
部課長の心労を引くまでもなく、とかく「真ん中」は難しい。産業界なら、上から仕入れて下に売る、原料と最終製品をつなぐ素材メーカーである。板挟みの悲哀を減じるには、大きくなるのも手だ。
鉄鋼首位の新日本製鉄と3位の住友金属工業が、来年秋に合併したいと発表した。鉄鉱石や石炭を商う川上の企業は巨大化で勢いを増し、川下の客、自動車や家電業界の物言いもきつい。上に暴れられ、下からねじ込まれての「2階」の決断であろう。
新日鉄は車づくりに欠かせぬ特殊鋼板などに強く、住金は油送に使う継ぎ目なし鋼管が得意。板と管の技を持ち寄り、国内の消耗戦を脱して、世界2位クラスの規模で新市場に挑む。いわば「日本代表」の戦略らしい。
関門は、国内市場の寡占に目を光らせる公正取引委員会だ。合併話が持ち上がるたび、公取は厳しくシェアを吟味し、「オールジャパン」を排してきた。今回は国際競争や国益をにらんで、大所高所の計らいが望まれる。
産業のワールドカップを戦える日本企業は、業界ごとに1社か2社。不出場の分野も増えよう。それゆえ世界で勝ち進める「鉄の結束」は大切だが、日本での雇用や納税に資すればこその応援だ。企業に国籍があるなら、どの階の住人だろうが、その限りで意味がある。
2011年2月5日『朝日新聞』
単 語
注 釈
①天声人語
朝日新闻的早报第1版上长期连载的专栏,1904年刊登了第1期。专栏中的文章由朝日新闻的评论员执笔,就当前的新闻和话题,从不同于社论的角度加以分析。
②公正取引委員会
公正交易委员会。日本内阁府外设局之一,成立于1947年7月1日。为实现《禁止垄断法》的目的而设立的行政机构,具有准司法的功能。
思考問題
1.「真ん中」は難しいと筆者は具体的な例をあげたが、その例を書きなさい
2.「大所高所の計らいが望まれる。」とあるが、筆者は何を言いたいか。
冬来りなば春遠からじ。北の地域ではまだドカ雪との格闘が続くが、南からは梅の開花便り。これから長い列島を時間をかけて春が上りゆく。そのかすかな気配を読み取るのもまた趣がある。
そういえば桜の木々の色合いが変わりつつある。黒っぽかった寒色系の幹や枝がいつのまにか薄茶っぽい暖色系になった。近寄って見ると、かわいらしい花芽があちこちに吹き出し、日々膨らみを増している。
「休眠打破」という言葉がある。前年の夏に形成された桜の花芽がいったんは「休眠」状態となるが、冬の低温にさらされることで、眠りからさめ、開花の準備を始めることである。面白いことに、この低温期間が,半端だといい花芽ができない。きっちり一定期間寒さに耐えねば美しい開花は望めないのである。
さて、我が国の政治の春はいかばかりの気配だろうか。開花予想どころか、早々と「3月危機」「4月危機」が喧伝されている。確かに、衆参のねじれを克服する数のメドがたたず、マニフェストの修正という党派としての自己否定を迫られ、しかも、消費税増税という重い課題を背負った菅政権はまだいてつくばかりの厳冬にある。
ただ、桜の例でいえば、大事なのはこの厳しい寒さから逃げずにひたすら耐え抜くことである。むしろ、もろ肌を脱いで寒さに全身をさらしてもいい。そうでもしなければ、これだけの借金に平然としているこの国の休眠状態は打破できないかもしれない。
今年はやや早めに桜が咲く、という。平年より厳しい寒さに覚醒した芽が見事な花をつけるだろう。それに負けず劣らずの開花を政治の世界にも求めたい。
2011年2月6日『毎日新聞』
単 語
注 釈
①余録(よろく)
每日新闻的早报第1版上长期连载的专栏,类似于朝日新闻的《天声人语》。
②衆参のねじれ
“衆参のねじれ”是“衆参ねじれ国会”的略语。2010年7月,民主党在参议院选举中失败后,造成了在众议院拥有过半数席位、而在参议院拥有不到半数席位的局面,即执政党和在野党各占据众参两院的“扭曲国会”现状。
思考問題
1.菅政権にとっての「厳冬」とは、どんなものなのか。
2.文中の「休眠状態」について考えなさい。
あまりにもあけっぴろげなメールのやりとり。八百長の動かぬ証拠だ。少なくとも、この限りでは日常化していたこともうかがえる。
これではかつての米大リーグの八百長·ブラックソックス事件のように「うそだと言ってよ、ジョー」と叫びたいファンも叫びようがない。事実関係を認めた力士も出て、事態はいよいよ深刻だ。
日本の伝統文化である大相撲の担い手という自覚のかけらもない。そんな力士の存在が情けない。即刻解雇の声が上がったのも当然。解雇以上の除名、永久追放に値する。
早々にNHKの福祉大相撲、フジTVの大相撲トーナメントの中止が決まった。春場所の中継、いや開催そのものも危惧される。公益法人の資格も危うい事態だ。
八百長は質的にこれまでの不祥事の比ではない。大相撲存亡の危機だ。すべては日本相撲協会の対応にかかっている。実態の徹底解明と厳正な処分、加えて再生のための抜本的組織改革が必要。
断じて伝統の灯を消さぬため、重大な危機感を持ち全力を傾注すべし。
2011年2月4日『読売新聞』
単 語
注 釈
①よみうり寸評
读卖短评。读卖新闻第1版上长期连载的专栏,早报的专栏是《編集手帳》,晚报的专栏是《よみうり寸評》,类似于朝日新闻的《天声人語》。
②ブラックソックス事件
黑球事件。1919年美国职业棒球甲级联赛时发生的丑闻。
③春場所
日本的相扑每年分别在1月、3月、5月、7月、9月、11月要举行6场循环赛,每场比赛的正式名称、俗称和场地如下所示:
思考問題
1.「そんな力士の存在が情けない。」と筆者は批判しているが、その理由を考えなさい。
2.八百長について、筆者の主張をまとめてみなさい。
「東京で冬を過ごし始めたころは、毎日青空が見られてうれしかったけれど、そのうち腹が立ってきた。なんで東京の人だけこんなに恵まれているんだって」。新潟県の豪雪地帯出身の知人から、打ち明けられたことがある。
気象庁はきのうも東京都心などに、35日連続となる乾燥注意報を出した。史上2位の記録という。一方、北陸や東北地方の大雪は続き、雪下ろし中のお年寄りが屋根から転落死するなどの事故が相次いでいる。
この極端なまでの冬の気候の違いを、政治の世界で最大限に利用したのが田中角栄元首相だった。新潟県中部の小さな村で生まれた角栄少年は、雪のために死にかけた経験をもつ。自宅の屋根から落ちてきた雪の下敷きになったのだ。祖母が必死にふるった鍬が額に当たり、雪が真っ赤に染まってようやく見つけだされた。
元首相は若いころ、「越後山脈に風穴を開ければ、雪は東京に降って、新潟から出稼ぎに行く必要もなくなる」と地元でぶち上げた。壮大過ぎるプロジェクトは実現しなかったものの、新幹線や高速道路の建設など、元首相のいう「太平洋側と日本海側の格差の解消」に努めた。
今では、角栄型の利益誘導政治は否定されている。かといって、雪害にあえぐお年寄りを、見殺しにしていいはずがない。きのうの主張欄では、困った人たちをみんなで助ける「共助」の仕組み作りを急ぐよう、提言していた。泉下の元首相はどう考えるだろうか。
屋根といえば、JR浦佐駅前に立つ元首相の銅像に、長女の真紀子衆院議員サイドの意向で、平成17年に屋根が取り付けられ話題になった。雪をかぶって地元の人たちを見守る姿の方が、元首相にふさわしい。
2011年2月4日『産経新聞』
単 語
注 釈
①産経抄(さんけいしょう)
产经新闻第1版上长期连载的专栏,早报的专栏是《産経抄》,晚报的专栏是《笛》,类似于朝日新闻的《天声人語》。
②越後山脈(えちごさんみゃく)
位于日本山形、福岛、新泻三县境内的山脉。
③利益誘導政治(りえきゆうどうせいじ)
某政党或政治家为了维护政权,选举时拉选票、拉赞助,采用政治手段,为支持自己的地区或利益团体提供政策上的便利。这是政治腐败的一种形式,违反日本的公职选举法,一旦查明可以定“利益诱导罪”。
思考問題
1.「極端なまでの冬の気候の違い」とあるが、その違いをまとめてみなさい。
2.このコラムを通して、筆者の主張したいことを考えなさい。
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